うちのスタッフは3人兄弟姉妹の末っ子が多い。というか、ほとんどがそうだ。採用面接で「あなたは3人兄弟(姉妹)の末っ子ですか?」とチェックしているわけではない。
16年前に開業した時のオープンスタッフは5名いたのだが、その時には3人兄弟姉妹の末っ子は一人だけであった。そのうちいろいろな事情だったり、嫌になったり、パートナーの都合だったりして、徐々にスタッフは入れ替わっていったのだが、最後に一人残った開業当時のスタッフは3人姉妹の末っ子だった。そして気が付くと、その方を入れて4名の常勤スタッフ(正職員)全員が3人兄弟姉妹の末っ子になっていた。それに加えて、うちのカミさんも、時々事務受付スタッフとして加わるのだが、彼女もなんと3人兄姉妹の末っ子である。
うちでは、常勤スタッフを支えるべく、3名の非常勤スタッフがいるが、その構成は一人っ子、2人兄妹、3人姉兄妹の末っ子である。ある時、その非常勤スタッフの2人兄妹の方と「ウチは3人兄弟姉妹の末っ子が多いんだよね」という話をしていたら、「私も兄がいるんですけど、実はその上に姉がいたんです。幼くして亡くなったんですけど、そういう意味では私も3人姉兄妹の末っ子です」と言われて背筋が凍るような思いをした。つまり、スタッフ、うちのカミさんも入れて、8名中の7名が3人兄弟姉妹の末っ子なのである。
そこで、日本には3人兄弟姉妹の末っ子がどのくらいいるのだろうと調べてみた。国立社会保障・人口問題研究所(厚生労働省管轄)の資料では、2015年の出生動向基本調査に基づいた同胞の数は、一人っ子の割合は18・6パーセント、2人兄弟姉妹は54・1パーセント、3人兄弟姉妹は17・9パーセントで4人以上の兄弟姉妹は3・3パーセントとのことだ。3人同胞は意外と多いなと思ったが、3人同胞は3人いるので、その末っ子となると3分の1の5・9パーセントである。
ここで問題である、3人同胞の末っ子の人に出会う確率が5・9パーセントだとすると、同時に末っ子の人が7人集まる確率はどのくらいになるのであろうか。0・059×0・059×0・059★★=0・059の7乗で2・49×10のマイナス9乗。つまり10億分の2・49の確率。もっと分かりやすく言えば4億分の1の確率なのである。すごい。
こんなに確率の低いことが起こる背景には何らかのバイアスが掛かっている可能性がある。それは3人兄弟姉妹の末っ子の性格と院長の好みが関係しているのではないかという仮説に至り、調べてみた。
国際基督教大学の磯崎三喜年名誉教授は「きょうだいの出生順効果」(小児看護第44巻9号)という論説の中で、きょうだいを一番っ子、間っ子(上と下にきょうだいがいる)、末っ子、一人っ子の4種に分類し、末っ子の特徴を「上のきょうだいより知力・体力で劣位にあり、『負け』の経験を重ねがちなため、まねる力と教わる力で劣位を跳ね返すしたたかさ、独特の勝負感を養っている」と述べている。この環境は負けん気と強いメンタリティーを生み、スポーツの世界で生きるため、トップアスリートに末っ子が多いと述べている。ちなみに大リーグで大活躍の大谷翔平選手は3人兄姉弟の末っ子である。確かに私がスタッフに求めるのは強いメンタリティーである。
冒頭で述べた開業以来勤務して頂いていたスタッフが、私の不徳の致すところもあったが、体調を理由に退職された。その後、代わりのスタッフを探してあれこれ苦戦し、先日ようやく良い方にめぐり会え、めでたく就職となった。試用期間も終え気楽な雑談話の折、「うちは3人兄弟姉妹の末っ子が多いんだよね」と恒例の「きょうだいトーク」をしていたら、「私も兄2人の3番目です」と言われて目まいがした。先の確率論から言えば、4億分の1×0・059で何と68億分の1である。