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令和4年(2022年)9月5日(月) / 日医ニュース

「看護の処遇改善」並びに「医療DXへの対応」に関する答申まとまる

「看護の処遇改善」並びに「医療DXへの対応」に関する答申まとまる

「看護の処遇改善」並びに「医療DXへの対応」に関する答申まとまる

 中医協総会が8月10日、WEB会議により開催され、「看護の処遇改善」並びに「医療DXへの対応」に関する答申を取りまとめ、後藤茂之厚生労働大臣(当時)に提出した。
 これを受けて、中医協委員でもある長島公之常任理事は同日、記者会見を行い、日本医師会の考えを説明し、その内容を評価する考えを示した。

 「看護の処遇改善」に関しては、昨年12月21日に後藤厚労大臣と鈴木俊一財務大臣との間で「看護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%(月額1万2000円)程度引き上げる診療報酬上の対応を行う」との合意がなされたことを受け、中医協診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」でさまざまな条件の下で行った点数設定のシミュレーション結果を基に議論が行われてきた。
 その結果、本年10月から、「看護職員処遇改善評価料」を新設することで合意。本評価料は、165通りに点数が細分化され、1日当たりの点数は1点から340点となっており、どの点数に該当するかは直近3カ月の1月当たりの延べ入院患者数の平均値を用いて算出した値を基に設定することとした。
 算定が可能な施設は、救急医療管理加算に係る届出を行っている保険医療機関であって、救急搬送件数が年間200件以上であるか、救命救急センター、高度救命救急センター、小児救命救急センターを設置している保険医療機関かのいずれか。ただし、救急搬送件数は、賃金の改善を実施する期間を含む年度の前々年度1年間の実績を見られるが、前年度に連続する6カ月間で救急搬送件数が100件以上の場合は、基準を満たす扱いとなる。
 一方、「医療DXへの対応」については、令和5年度より、保険医療機関・薬局に、医療DXの基盤となるオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されることを受けて、諮問がなされ、議論が行われてきたものである。
 その結果、(1)療養担当規則に「保険医療機関・薬局は、患者資格確認の際、患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認による確認を求めた場合は、オンライン資格確認によって資格の確認を行わなければならない」旨を明記する(ただし、現在「紙レセ」請求が認められている場合は義務付けの例外)、(2)本年4月から導入されていた「電子的保健医療情報活用加算」を廃止の上、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設(①施設基準を満たす医療機関で初診を行った場合は4点② ①であり、オンライン資格確認等により情報を取得した場合は2点)―を行うこととなった。
 当日の中医協の議論の中で診療側を代表して意見を述べた長島常任理事は、「看護の処遇改善」について、「入院・外来医療等の調査・評価分科会での審議内容を総会で検討し、その結果を再度分科会で検討するという丁寧な積み重ねの結果だ」として、答申案に同意するとの考えを表明。
 「医療DXへの対応」に関しては、同意するとした上で、(1)医療DXにおけるオンライン資格確認等システムは、今後の医療のプラットフォームとなるもので、最終的には全ての医療機関、薬局で導入されるべきものである、(2)オンライン資格確認等システム未導入の機関に関してもその導入を進める必要がある、(3)紙レセプト請求を採用していない医療機関においては導入に向けた一刻も早い取り組みを促進する必要がある、(4)カードリーダーの申請状況にかかわらず、今回の診療報酬改定等の内容を説明すべきである―と指摘。診療側としても、今回の改定を契機に、オンライン資格確認等システム導入を加速させていくと強調した。
 一方、建物の構造やベンダーの開発遅れ等の理由により、2023年4月のオンライン資格確認等システム開始に間に合わない医療機関が出てくる懸念が払拭できないとして、「今後の導入状況を把握し、その結果により、必要な対応を講ずることがあり得ることについて中医協で合意することが必要」と要望。今回、新設された加算について、運用状況をしっかり見極める意向を示した。

定例会見で日本医師会の考え説明 ―長島常任理事

220905a2.jpg「看護職員処遇改善評価料」の新設は現時点での最適解
 答申が取りまとめられたことを受けて同日に記者会見を行った長島常任理事は、「看護の処遇改善」として、「看護職員処遇改善評価料」が新設されたことについて、「毎月変動する患者数などに左右される診療報酬で補塡(ほてん)することや、既に施行されている補助金制度からスムーズに移行させることの両方の難しさについて、中医協として認識を共有した上で、これまで検討した結果であり、現時点で考え得る最適解ではないか」との認識を示した。
 その一方で、現在、新型コロナウイルス感染症の爆発的な感染状況が継続している中で入院患者数の急激な変化が起きることも当然想定されるとし、中医協で行ったシミュレーションでは想定できなかったような事態が生じた場合には、「緊急的な対応を検討する余地も残してもらいたい」と中医協の議論の中で主張したことを説明。
 また、看護師以外の医療関係職種を広く対象とすることも含め、処遇改善の取り扱いを今後どうしていくかという点については、診療報酬とは別枠でその財源を確保していく必要があるとの考えを示した。
 「医療DXへの対応」に関しては、まず、オンライン資格確認等システムについて、将来的に医療全体にわたるプラットフォーム、医療DXの基盤になるものであり、義務化のいかんにかかわらず、最終的には全ての医療機関に導入されるべきとの日本医師会の考えを説明。その考えの下に、日本歯科医師会や日本薬剤師会と共に「オンライン資格確認推進協議会」を立ち上げ、取り組みを進めてきたとした。
 中医協において、療養担当規則が改正されるとともに、令和4年度診療報酬改定で新設した「電子的保健医療情報活用加算」を廃止し、新たに「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」を新設すること等が了承されたことについては、「いずれも骨太方針に基づく対応であり、賛成した。今回、義務化を契機として、10月から点数が見直されることは当然であり、中医協としてもマイナ保険証の利用を進めていくことの必要性が議論されたものと受け止めている」と述べるとともに、今回、医療情報化支援基金による補助の見直しが行われ、財政的支援が拡充されたことについて評価する考えを示した。
 その上で、今後については、「日本医師会として、各医療機関の導入に向けた環境整備に全力で取り組んでいくばかりでなく、紙レセプトで請求している医療機関以外の医療機関に一刻も早く導入してもらえるよう、働き掛けていく」とした。

療担規則での義務化を重く受け止める
 一方、療養担当規則で義務化されることになったことに関しては、「医療機関では非常に重く受け止めている」とした上で、離島やへき地、都心でも建物の構造によっては光回線が普及していない、あるいはベンダーと契約したにもかかわらず、結果的にベンダーの対応が遅れてしまった場合など、医療機関の責任とは言えないやむを得ない事情により、2023年4月に間に合わない事態が生じてしまう場合もあると指摘。「今後の導入状況を把握した上で、その結果によっては必要な措置を講ずることもあり得る」と述べるとともに、「日本医師会としても、このような医療機関が出ることのないよう、推進協議会の活動などを通じて、厚労省や業界団体と協力し、でき得る限りの努力をしていきたい」とした。

 なお、今回の改定に関する告示の内容やQ&Aに関しては、日本医師会から発出する事務連絡や厚労省のホームページを参照願います。

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