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令和4年(2022年)9月20日(火) / 南から北から / 日医ニュース

孫爆釣するも師匠釣れず―魚は忖度せず

 妻は絶対に釣りには付いてこない。時々、ご夫婦で釣りを楽しんでおられるのを見掛けるが、うらやましい限りである。
 しかし幸いにも、孫の中に釣り好きの男の子が2人いる。1人は埼玉なので、そう簡単に連れ出すわけにはいかないが、1人は近くにいる。もう1年前になるが、当時15歳の孫は3月に中学を卒業し、高校受験も終えたので、釣りに連れていくことにした。その友達も1人付いてきた。
 船に乗り釣りをするので、釣りの前日、竿の扱いや、電動リールの扱い方を教え、実習までして指導した。
 午前中は、「師匠」の力量を存分に発揮して、それなりの釣果(ちょうか)を得た。孫の友人は初めての船釣りで、船酔いしながら竿を握っている。釣れたら船酔いも治るのにと思っていたが、午前中はほとんど釣れなかった。
 状況が一変したのは、午後、釣りの対象が「大アジ釣り」になってからである。子ども達に仕掛けを用意して渡した途端に釣りだした。こちらは、最初は余裕をもっていたので、良かった良かったと思っていた。そこへ突然、隣で釣っている孫の竿が大きくしなって、「掛かった掛かった」と騒ぎだした。「慌てるな、ゆっくりと上げろ」と教え、手網を持って魚を待ち構えていたが、海面近くに上がってきた大アジを見てびっくりした。大きい。とにかく大きい。網に入れてびっくりである。45センチもあろうかという大アジであった。
 それから、2人の子ども達は次々と釣り出した。こちらはまだ1匹も釣れない。当たり(魚信(ぎょしん))もない。どうなっているんだと思っていたが、あまりにも隣はにぎやか、こちらは1匹も釣れないので、思わず「今、どの辺の棚(魚のいる海の深さ)で釣れたか」と聞く羽目になった。それを見ていた船頭曰く、「爺さん、孫に棚を聞いている。もう終わってるね」と。
 「おい魚よ、ちょっとは忖度しろよ」と言いたくなった。終わってみると、師匠の大アジはゼロ、孫は7匹、友達は5匹釣っていた。

滋賀県 滋賀県医師会報 第876号より

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