令和4年(2022年)9月20日(火) / 日医ニュース
日本医師会・韓国医師会・インド医師会・台湾医師会共催により「新しい時代における全人的医療」をテーマにCOVID-19シンポジウムを開催
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日本医師会、韓国医師会、インド医師会、台湾医師会共催による「COVID―19シンポジウム:新しい時代における全人的医療」が8月26日、WEB形式で開催され、日本医師会からは角田徹副会長、釜萢敏・今村英仁両常任理事が、それぞれ参加した。
冒頭、ビデオメッセージであいさつした松本吉郎会長は、「新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい始めてから3年近くの歳月が流れたが、今もなお、わが国では第7波の感染者拡大期の渦中にあり、全国的に医療提供体制は逼迫(ひっぱく)している」とした上で、日本医師会は、状況改善の方策を提示し、地域の医師会と共にそれらの実現に努めていると述べた。そして、この経験を踏まえ、今後も定期的に発生が予測される新興感染症における予防の徹底、治療法の確立、検査体制の充実、初期対応体制の整備、入院体制の強化や病床確保などに備えられるよう、本シンポジウムの成果に期待を寄せた。
また、ピル・ソー・リー韓国医師会長、サハジャナンド・プラサード・シン インド医師会長、タイ・ユアン・チウ台湾医師会長/CMAAO会長の開会あいさつと、イエ・ウェイ・チョンCMAAO議長の来賓あいさつに続いて行われたセッションでは、各国の状況と対応について報告がなされた。
セッション1(日本医師会)では、今村常任理事の進行の下、釜萢常任理事が「我が国におけるpost COVID-19 conditionの現状」と題して講演した。
厚生労働省が罹患後症状の診療の手引きとして、さまざまな分野の専門家によるその時点での科学的知見等をまとめた「罹患後症状のマネジメント」から、国内の患者を対象とした罹患後症状の研究結果を報告。
その中では、(1)COVID―19で入院歴のある18歳以上の患者1066例の追跡調査(2020年1月~2021年2月)においては、診断12カ月後でも罹患者全体の30%程度に一つ以上の罹患後症状が認められた、(2)中等症以上の20歳以上の患者1003名を対象にした研究(2020年9月~2021年9月)においては、12カ月後も13・6%に何らかの罹患後症状が残存していた、(3)東京都の「コロナ後遺症相談窓口」に寄せられた罹患後症状は、オミクロン株では「咳嗽(がいそう)」「倦怠感」の割合が増加したが、デルタ株以前で多かった「味覚障害」「嗅覚障害」「脱毛」の割合は大幅に低下した―ことなどを説明した。
そして、日本医師会としては、「罹患後症状のマネジメント」の取りまとめに協力するとともに、地域における罹患後症状に対する診療体制の確立やYouTubeなどを通じた啓発活動に取り組んできたとし、「この分野の専門家の養成だけでなく、それぞれの地域において中心的に相談に応じられる医療機関をきちんと決めていくことが必要である」と強調。「患者の訴えに寄り添い、解決に向けて手を携えていくことが求められている」と述べた。
セッション2(韓国医師会)では、ホーキー・ユン韓国医師会常任理事が「韓国におけるCOVID―19、新しい時代における全人的医療」として講演。変異株の出現による感染者の増大を受け、韓国では、積極的な監視・検疫から、パキロビッドやラゲブリオを用いた早期治療に舵を切り、60歳以上に対しては必ずしも明確な症状を有していなくとも早期治療を推奨しているとした。
また、ポストコロナの医療提供体制については、非接触型の遠隔診療や、救急や慢性疾患を抱えた患者への対応などに特化した病院について検討していく意向を示した。
セッション3(インド医師会)では、ヴェドプラカーシュ・ミシュラ インド医師会学術及び認定委員会委員長が「ポストコロナの世界に向けたヘルスケアシステムの向上」として講演。このパンデミックによって、医療資源やケアのキャパシティーなどの世界における格差が浮き彫りになったとし、全世界のヘルスケアシステムの抜本的な向上が必要であることを訴えた。
その上で、今後においては病院中心の医療提供体制から、より分散された医療提供体制が望まれるとし、それらが連携を取りつつ、遠隔医療やタスクシフティングも活用して格差のない医療提供を行っていくべきだとした。
セッション4(台湾医師会)では、ブライアン・チャン台湾医師会秘書長が「地域密着型の患者中心の医療システムの構築:COVIDから学んだ教訓」として講演。多くの国が対策を緩める中、共存していくためには、重症化の予防、死亡者数の制御、軽症患者の管理がポイントであるとし、病院では中等症から重症患者を、地域のクリニックでは軽症患者を管理する台北市のモデルを紹介した。
更に、学校でのパンデミックを防ぐべく、ヘルスケアネットワークの一部として学校を取り込み、スクリーニングや治療、6~10歳の小児へのワクチン接種を推進しているとした。
その後の質疑応答では、高額な治療薬の取り扱いやワクチンの副反応、罹患後症状などをめぐって、活発な意見交換が行われ、最後にチウ台湾医師会長が閉会のあいさつを述べた。