勤務医のひろば
41年間、臨床で多忙を極めたが、後半は院内外のマネジメントにも力を注いだ。「つなげる」ことを意識しながら、いくつかの会の立ち上げに関わった。院外の例を振り返る。
2003年には広島市のこども家庭支援課と協働で聴覚発達検討会議を立ち上げた。最初に目指したのは、広島市の保健、医療、福祉、療育、行政の担当者達を「つなげる」ことだった。また、それぞれの職種や組織の垣根を取り払い、忌憚(きたん)のない意見交換がなされるよう環境を整えた。
取り組みの継続によって広島市の聴覚発達スクリーニング体制が充実し、聴覚障碍の早期発見から療育までの流れが確立された。新生児期から乳幼児期までの切れ目のない支援体制は現在も続いている。
数年前には就学後の難聴児をフォローするために、医療、療育、教育の有志による勉強会を立ち上げた。このように組織を横断してつながった会の発足と継続は全国的にまれなようで、文部科学省及び厚生労働省が関わる障害者総合福祉推進事業の担当者が会の見学に訪れたこともあった。
2014年からの4年間は、広島市医師会副会長を務めたが、多数の事業を経験させて頂いた中で、医師会が「つなげる」という大きな役割も果たしていることに気付いた。
医師会は医療だけでなく福祉、介護、教育など、多岐にわたる分野の施策に関与している。また、歯科医師会、薬剤師会、看護協会などとの連携はもちろんだが、行政の各担当部署とのつながりも深い。在任中、行政の担当者と協働し、市民のための摂食・嚥下・口腔ケア対応力向上に向けた多職種連携委員会の立ち上げにも関わった。
「つなげようとすれば、つながるものだ」と感じている。