以前、興味本位でスマートスピーカーを買いました。数千円のまん丸いスピーカーに話し掛けるだけでテレビをつけたり、布団に入ってから一斉に照明を消したり、温度や時間帯に合わせてエアコンをオンオフしてくれたりして、意外に便利でした。
先日ふと思い立ち、高齢の母にも一つ買ってみました。母は脳出血で片まひがあり、自室にいることが多いです。もともと機械音痴な上に物忘れも多くなり、何台ものリモコンの使い方を覚えるのは大変、と言うか無理......。ところがスマートスピーカーでは「〇〇(スマートスピーカーの名前)、テレビつけて」と話すだけで家電製品をコントロールできます。「○○さん、美空ひばりの曲をかけてもらえませんか~」とリクエストして、お気に入りの音楽も聞くようになりました。スマートスピーカーを「"さん"付け」で呼んだり、敬語で話し掛けるあたりはご愛敬ですが、思いの外スムーズに使えるようです。
そこで今度は「〇〇、助けて!」と言えば家中のスマートスピーカーから一斉に「ババに緊急事態!」と流れるようにしてみました。私の車にもスマートスピーカーを載っけたので、ドライブしていてもSOSは流れてくるはずです。これまでは何かあったら押せるよう、母の枕元に呼び鈴を置いていましたが、時々深夜に間違って叩き起こされることもありました。かと言って押しにくい所に置くわけにもいかず困っていましたが、これで一歩前進です。高齢者とIT、なかなかなじみがたい組み合わせですが、あっさりマッチングさせてくれた「音声」というユーザーインターフェースもなかなか良いかも、と改めて実感しました。
高齢化社会、在宅のデータを活用するシステムが増え、高齢の方々もITに触れる機会が増えるかも知れません。質の高いデータを得るにはユーザビリティが最も大事だと思います。これまで医療ITに関わる仕事もしてきましたが、これからも、音声に限らずさまざまなアイデアを自分自身の頭の体操も兼ねて考えていきたいなあ、と思っています。
(一部省略)
岩手県 奥州医師会月報 NO.704より