私は地方のどこにでもある耳鼻咽喉科の開業医です。コロナ禍の時にはご多分に漏れずその対応に振り回されました。
特に流行初期には受診抑制のあおりを受けて収入が激減して、一体いつまで続くのかと、出口の見えない不安でいっぱいでした。その時はコロナ対策として3密を避けるのが徹底されたおかげか、他の感染症も鳴りを潜めていました。
この時、きちんと感染対策さえしておけば、病気にはかかりにくいのを改めて知りました。
そこでふと疑問が出たのです。我々医者は病気を治すのが仕事だけれども、その肝心の病気がいなくなると途端に商売あがったりになってしまう。戦うべき敵がいないと、軍隊は用無しになってしまうではないか? 一体医者って何なのだろう?
それが今度は時が経ってオミクロン株になり病原性が低下してくると、今度は医院内にはコロナ患者があふれ返るようになったのです。私もスタッフもコロナには戦々恐々としながらも、患者さんが戻ってきたおかげで、内心ではホッとしていました。コロナには振り回されもしましたが、逆にコロナのおかげで息も吹き返しました。
そして今はインフルエンザが流行してきて、これも開業医にとっては歓迎するわけではないですが、困ったことでもありません。病気を治すけれども、病気がないとこれも困る。医者って一体何なのだろう? コロナを経験して、そんな疑問を持ちながら毎日診療しています。
(伯耆丸)