令和5年度都道府県医師会学校保健担当理事連絡協議会が、1月17日にWEB会議により開催された。
渡辺弘司常任理事の司会で開会。あいさつを行った松本吉郎会長は、冒頭、令和6年能登半島地震による被災者に対してお見舞いの言葉を述べた上で、発災直後の日本医師会の対応を概説。参加者に対して、震災を経験した子ども達の心に寄り添い続けるよう求めた。
学校保健に関しては、「学校健診は学校医が関わる重要なものであり、健康診断における課題の確認が必要だと考え、本協議会を開催した」と開催趣旨を説明し、本協議会が今後の学校保健活動に対する知見を深める一助となるよう期待を寄せた。
議事では、松村誠学校保健委員会委員長(広島県医師会長)を座長として、学校における健康診断の(1)心臓検診、(2)腎臓検診、(3)運動器検診、(4)小児生活習慣病検診、(5)就学時健診―に関する課題についての説明がそれぞれなされた。
(1)では、西脇毅愛知県医師会理事が、まず、愛知県医師会が行ったアンケート調査から、「脱衣を伴う健康診断について、保護者への啓発活動が実施されていない」等の課題が指摘されたこと等を紹介。また、健康診断に関わる課題として「個人情報保護の観点から、精密検査の結果がフィードバックされにくいため、予後の追跡調査等の検討が困難になっている」と述べた他、児童・生徒の「健康リテラシー」の涵養(かんよう)に資する学校健診のあり方についても今後検討する必要があると強調した。
(2)では、郭義胤福岡市立こども病院腎・泌尿器センター長が、2019年度九州・沖縄学校検尿結果を基に、「一次検尿提出率」「精密検査対象者割合」「精密検査受診率」「精密検査での異常発見率」の四つのポイントを概説。学校検尿においては、①検尿提出率の改善②精密検査の質の向上③経年的調査の実施―などの課題があると指摘し、その改善策として、「学校と医療機関(医師会)との合同委員会の設置」「学校と医療との良好な連携・情報共有」等を提案した。
(3)では、新井貞男日本臨床整形外科学会理事長が、運動器検診の課題として、①保健調査票の配布・記入②学校医による検診③経過観察・運動指導④受診勧告後も未受診―を挙げた。
具体的には、②では、脱衣の問題や見逃しの不安といった問題があるとして、補助検査機器の導入を推奨した他、③では、日本学校保健会発行の『子供の運動器の健康―学校における運動器検診の手引―』の中で、要経過観察となった場合の整形外科受診の目安等が記載されていることを紹介し、参考にするよう呼び掛けた。
(4)では、藤澤卓爾香川県医師会副会長が、まず、香川県における小児生活習慣病対策事業や小児生活習慣病予防健診の概要、問題点等を説明し、課題解決に向けて新たなアプローチが行われていることを報告。一方、「未解決な課題として、二次健診受診率を向上させるための対策や、発症要因を考慮に入れた予防、治療、管理の実施が残っている」と述べ、日本医師会等に対して、ヘルスリテラシー向上のための啓発などを求めた他、将来的には全国統一の基準の下で小児生活習慣病予防健診を行えるようにするなどの展望を示した。
(5)では、松﨑美枝文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課健康教育調査官が、学校保健安全法の規則等に触れた上で、就学時の健康診断の目的、事前準備や事後措置等について詳説。「就学前の健康診断で得た結果は、就学先の学校に引き継ぎ、入学後の支援につなげるよう努めるなど、関係者で連携して、学校における保健指導等に役立てる必要がある」と述べた他、学校や家庭だけでなく、三師会や地域社会など、さまざまな組織間で連携を密にする重要性も強調した。
その後、渡辺常任理事から、事前アンケートの結果の概略について報告があり、後日改めてその詳細を報告する場を設ける意向が示された。
最後に、茂松茂人副会長が、「学校、家庭、地域など社会全体が連携して、子ども達を支えていくことが重要である。今後、日本医師会としても、本協議会のような場を設けて学校保健を充実させていくばかりでなく、各組織と連携を図って、子ども達を支えていく」と総括し、閉会となった。
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