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令和6年(2024年)6月5日(水) / 日医ニュース

「超高齢社会に向けての男女共同参画 ~人生100年時代における多様な医師の働き方~」をテーマに開催

「超高齢社会に向けての男女共同参画 ~人生100年時代における多様な医師の働き方~」をテーマに開催

「超高齢社会に向けての男女共同参画 ~人生100年時代における多様な医師の働き方~」をテーマに開催

 第18回男女共同参画フォーラムが、「超高齢社会に向けての男女共同参画~人生100年時代における多様な医師の働き方~」をテーマに、4月27日、高松市内で開催され、日本医師会からは松本吉郎会長を始め、角田徹副会長、神村裕子・渡辺弘司・細川秀一各常任理事が出席した。
 当日は基調講演(2題)、報告(2題)、シンポジウム、総合討論などが行われ、医師の働き方改革への取り組みや男女共同参画のための職場における支援の具体例等が紹介された。
 フォーラムは、若林久男香川県医師会副会長による開会宣言で幕を開け、松本会長と久米川啓香川県医師会長、来賓の池田豊人香川県知事があいさつした。

240605h2.jpg  松本会長はまず、フォーラムの開催に先立ち、小泉ひろみ日本医師会男女共同参画委員会委員長(秋田県医師会長)から、今期の諮問「超高齢社会における男女共同参画の推進」に対する答申を受け取ったことに触れ、「答申では、今後需要が増える訪問診療のあり方、年齢・職種へのアンコンシャス・バイアスの解消、シニア医師が活躍できる環境の整備等、この先具体的に考えていかなければならない数々の貴重なご提言を頂いた」と説明。
 次に、当日のプログラムの概要を紹介し、「団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年が目前に迫る中、その先の2040年を展望しながら、誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現を、医療界からも強力に進めていきたい」と述べた。

基調講演

240605h3.jpg  基調講演では、まず、筧善行前香川大学長、同特命教授/香川大学イノベーションデザイン研究所長が、女性医師を取り巻く諸課題について、(1)医学部における女性差別問題、(2)女性医師の歴史、(3)ジェンダー平等と医師の働き方改革―の観点から、私見を交えて解説した。
 (1)では、2018年に明らかになった入試における女性差別の問題や出産・子育てによってキャリアが中断される等の課題に触れ、「医療の世界では女性の力を十分に活用できていないというのは、間違いない事実だ」と指摘した。
 (3)では、まずはその職場でロールモデルとなる女性医師が一人生まれることが重要として、働き方改革の施行を踏まえた職務分担の例などを説明し、「"ママさん医師"で例え小さな子どもがいてフルタイムで働けなくても、(業務の割り振りの)オプションがたくさんある」と強調。働き方改革をバネにジェンダー問題も同時に解決していくべきだとした。

240605h4.jpg  尾形優子メロディ・インターナショナル株式会社代表取締役は、フェムテックサービスを活用した、女性の働き方改革、妊娠期のQOL向上サポートの取り組み事例を説明。フェムテックとは「Female(女性)Technology(技術)」を組み合わせた造語で、テクノロジーを用いて、女性の健康やライフスタイルの課題を解決するために開発された商品やサービスであると説明した上で、国内外で展開している同社のフェムテックを利用した、妊娠期の女性をサポートするための事業を紹介するとともに、世界で行われている好事例を日本に持ち帰る一方で、周産期医療において日本の進んでいる部分を世界に広げるなど、充実した事業を展開できているとした。

報告

 報告では、小泉日本医師会男女共同参画委員会委員長が、同委員会の取り組みについて解説。今期諮問への答申内容や、委員会が行っている取り組みについて紹介した上で、「男女共同参画を推進し、医師誰もがいきいきと生きることができる医療界の実現は、安心・安全な医療を提供することにつながる」と述べ、引き続き同委員会として、社会状況への対応、勤務環境の整備、ワークライフバランスへの配慮、意識啓発等に取り組んでいく姿勢を示した。
 神村常任理事は、18年目を迎えた日本医師会女性医師バンクについて、(1)女性医師バンク事業、(2)再就業講習会事業、(3)女性医師支援・ドクターバンク連携ブロック会議への支援―が主な取り組みであることを説明。登録から成立まで利用料が無料であることや、本年5月からハローワークとの連携を開始したこと、年齢・性別を問わず全ての医師が利用可能であるなどの特徴を紹介した。また、女性医師支援センターで作成している『医師の多様な働き方を支えるハンドブック』等の活用を呼び掛けた。

シンポジウム

 続いて行われたシンポジウムでは、西信俊宏在宅診療敬二郎クリニック院長が、次世代の在宅診療クリニックとして、①(目指す方向性の)言語化②DX③教育―に取り組んでいることを説明した。
 ①では組織のミッションを、「必要な人が、必要な時に、望む場所で、望む医療を、安定的に受け続けられる環境を築く」と言語化していることを報告。②ではITを使うことでクリニックの外に出ても医療の質を保ちながら医療を提供し、かつ職種間の連携も取れるとした。また、③では一人の医師にできることは限られていることから、職種間の連携のための教育が重要になるとした。
 石川かおり香川大学医学部総合診療学講座講師は、大学病院で働く医師の現状として、学内外の人脈を構築しやすいなどのメリットがある一方、賃金が低く業務が多岐にわたり多忙である等の問題があるとした上で、大学病院を「学びたい・働きたい人」が集う魅力的な場所にしていくためには、AI・VR技術の活用等さまざまな取り組みが必要と指摘。「大学病院の働き方は多様性にマッチしなければならないし、することができる」と述べるとともに、「地域の医師は大学病院を地域医療の一つのpartとして活用して欲しい」と呼び掛けた。
 大内通江大内胃腸科眼科医院副院長は、眼科医生活63年を経て今思うこと、伝えたいこととして、働く女性の環境が整っていなかった自身の時代の経験を紹介した上で、超高齢社会を迎える中、医師として自身の健康に注意しながら、社会事情、病気の種類、患者の考え方などの変化に対応することの重要性を強調。「超高齢社会は大変な時間と可能性を与えてくれる。変化にじっくり向き合って常に学ぶことが大切だ」と述べた。

総合討論

 総合討論では、訪問診療クリニックと病院の関係構築や、大学病院勤務医の年齢層の偏り、医師を地域に留まらせるための方策などに関する質問が会場より挙がった。
 総括を行った角田副会長は、「重要なのはダイバーシティをどう実現するかだ」と述べ、そのためには相互理解や環境の整備、効率化が必要になってくると説明。本フォーラムで出された意見を、日本医師会としてしっかりと検討していく姿勢を示した。
 最後に、次期担当県である福島県医師会の佐藤武寿会長があいさつし、若林香川県医師会副会長が閉会の辞を述べた。
 なお、次回フォーラムは令和7年5月17日に福島県郡山市内で行われる予定である。

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