閉じる

令和6年(2024年)8月20日(火) / 日医ニュース

「医師会組織強化と勤務医」

勤務医のページ

 勤務医委員会(委員長:渡辺憲前鳥取県医師会長)は、諮問「医師会組織強化と勤務医」に対する答申を取りまとめ、4月12日、松本吉郎会長へ提出した。
 その概要を2回に分けて紹介する。

若手医師の医師会入会促進に向けて

1.勤務医が医師会活動に参画するための支援

 医師会組織強化という課題解決に向けた対策の一つに、勤務医の日本医師会への入会率向上がある。一般的に勤務医は、個々や組織の業績アップや医療技術獲得には関心が高いものの、医師会活動は医療分野の業績に直接つながることが想像しにくいため、関心が持たれにくいと考えられる。
 こうした現状の中で、勤務医の入会促進、特に若手勤務医に医師会活動に参画してもらう体制を構築することが、本委員会に与えられた課題である。経済的な負担を軽くする会費免除や、医師会役員が積極的に研修機関(臨床研修指定病院)や医育機関(大学医学部・医科大学)を訪問し、研修医や若手医師に医師会の情報提供や入会勧誘を行うなどの活動も重要であるが、一方で、若手人材の発掘や登用をいかに促進するかも重要な課題である。本委員会で検討した対策を以下に示す。

(1)若手医師の積極的登用を目的とした医師会のシステム構築

 都道府県医師会や郡市区等医師会の中に若手医師中心の委員会を組織する、あるいは、さまざまな委員会の委員として若手医師を積極的に登用するなど、若手医師の医師会活動への参画を得るための体制を意識的に構築することが必要である。若手医師に何らかの責任ある役割を与えること、そして、若手医師が全国規模の集会等を自らで企画するようなことができれば、全国組織に参画している意義と責任を、より強く自覚してもらえるであろう。

(2)医師会活動に参画する勤務医のリクルート

 医師会が組織として若手を登用するシステムを構築したとしても、実際に参画する医師をいかに発掘するかという課題も存在している。
 広く公募したとしても、その情報自体が若手医師の間に広まりにくいことも予測されるため、会員の人脈や各地域の情報を活用して特定の人物の参画を促し、推薦する努力が必要である。

(3)管理職・中堅医師に対するアプローチ

 積極的な参画が望まれる若手医師にとって、医師会はすぐにアプローチしづらいことが推察される。そこで重要なのが、日頃から若手医師と密に接している中堅医師に対する働き掛けである。
 ただし、中堅医師自身が医師会活動の意義や重要性を正しく理解しているとは言い難いことも現実であり、まずはその点を十分に考慮しながら、若手・中堅ともに、さまざまな立場で医師会活動に参画し、意見を述べることができるような場を設けるなどの工夫が必要である。
 また、医師会活動に参画している管理職医師に積極的に勧誘活動に加わってもらうことの他、未入会の中堅医師に対して医師会活動への理解を促し、協力を得ることも重要である。

2.医師会未入会の若手・中堅勤務医との関係づくり、大学医師会との連携

 医師会の確固たるプレゼンスを未入会医師及び医学生に示し、医師会に所属し、活動に参画することの意義と、個人や医療機関等へのベネフィットを感じてもらうことが必要である。そのためには医師会を知る、興味をもつ、そして参加する、これらを促す努力が必要である。
 まずは、知ってもらうこと。臨床研修病院への研修医訪問の対象を、医学生や中堅医師にまで広げることや、医師会活動や日本医師会の動向を説明すること、また、医学生、研修医、中堅医師それぞれの立場での関心事を聴取することなども検討すべきである。
 次に、興味をもってもらうこと。医学部での講義において医師会の社会的活動や医師支援活動の理解を促し、生涯にわたり頼れる組織として医師会を記憶に刻むことが極めて重要である。
 また、大学の講義で扱いにくい今日的な医学・医療のトピックスを講義テーマとして取り上げることや、臨床研修施設選択に資するような会を医師会主導で行うこと、若手・中堅医師への論文投稿支援等も、医師会への興味や認識を深めることにつながる。
 そして、何よりも医師会活動に参加してもらうことが重要である。医師会主催の協議会や研修会、講演会などを、できる限り若手・中堅医師に広く関心をもってもらえるテーマで企画し、非会員にも参加を促すべきである。特に、ディスカッションが行われるようなシンポジウム形式の会では、会員ではない医師の意見を聞く良い機会となり得る。
 更に、日本医師会の構造的な変革として、①各委員会の女性比率と40代以下の若手医師の比率をそれぞれ20%以上にする②各委員会の若手医師を「初期研修医から専攻医(JMA-Junior Doctors Networkとの連携)」「U40(40歳以下)」「中堅医師(41~50歳)」の3グループに分けて委員に就任してもらう③IFMSA-Japan(国際医学生連盟日本)と連携して、医学生の段階から医師会活動に触れることができるような体制をつくる④留学奨学金支援制度を新設(2年間以上の会員なら応募資格有り)する―等の検討も必要と考える。
 最後に、大学医師会との連携は、入会促進を始めとする組織強化の推進に不可欠であると考える。特に、全国大学医師会連絡協議会の活性化は今後の一つの大きな課題であると認識している。

3.リーダー的若手勤務医の積極的な理事登用や委員会委員として医師会会務への参画を求める

 将来を担うべき若手医師の積極的な理事登用や、医師会の委員会委員としての参画を奨励することは、医師会の会務向上や組織の発展に資するばかりでなく、組織に新しい視点と革新的なアプローチをもたらす他、迅速かつ柔軟な組織運営を可能とする。他にも、若手層の育成やリーダーシップの醸成にもつながり、他の若手医師や研修医にとっての模範となる。
 また、委員会委員としての参画は、多様な視点からの議論と知恵の結集を促進し、専門性や経験の異なるメンバーとの協力によって組織全体でバランスのとれた意思決定が可能となる。
 リーダー的若手医師の登用には一部の反発も予想されるが、その解決のため若手医師への適切な研修や教育プログラムの提供を始め、経験豊富な上級医師・指導医からのアドバイスやサポートにより、理事や委員会委員としての役割についての理解とスキルを向上させることが重要である。
 そして、透明性を重視した選出プロセスを確立し、理事や委員に選ばれた理由を理解が得られるまでしっかりと説明した上で、組織内での若手医師の能力や貢献度を公正かつ客観的に評価する仕組みを整備することが極めて重要である。
 若手医師のリーダーシップを引き出すためには、理事登用と委員会参画の機会を提供し、医師会全体がより活気付いていく組織文化を築くことが極めて重要である。これにより、若手医師たちが成長し、将来の医師会の指導層を担うことが期待される。

4.若手勤務医の医師会活動を病院が支援する体制づくり

 若手勤務医の医師会活動を推進するためには、勤務医に対する働き掛けとともに、病院管理者や上司への働き掛けが必要である。勤務医が医師会業務に労力と時間を割くことは容易ではなく、管理者や上司・同僚など所属機関の理解がなければ、役員、委員等として医師会活動に参画することは極めて困難である。
 しかし、医師会活動に参画することで、医療は政策や制度の下に成り立ち、医療政策へ適切な提言ができるのは医師会だけであることを実感できる他、医師会内のさまざまな分野の協議会等に参画することで、医師会が主体的に地域を支えていることが理解できる。また、メンバー同士の診療連携が推進され、行政とのつながりもできることは、個人にとどまらず医療機関や地域にとってもメリットとなる。
 まずは管理者自らが医師会活動に参画し、活動の意義や勤務医個人と医療機関にとってのメリットを理解し、勤務医の医師会活動を評価する環境を整えることが必要である。その上で、自施設の勤務医に対して、負担が軽く、やりがいを見出せる分野の委員会やワーキンググループのメンバーとして積極的に参画を促すことが望まれる。

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる