勤務医のひろば
私は1990年に弘前大学を卒業後、当時の弘前大学医学部外科学第二講座(現在の消化器外科学講座)に入局した。
当時は男社会で、働き方改革などとは程遠い労働環境だった。そんな我々外科医周辺の景色はというと、まさに体育会系のセピア色が広がっていたと記憶している。私にとっては懐かしい景色だが。
そして現在、30数年の時が流れ、この間に外科医を取り巻く社会的環境は大きく変化してきている。日本社会全体が多様性を受容しつつあり、医学部においても女性の割合が増えてきている。
昨年の7月に袴田健一弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座教授の下、第78回日本消化器外科学会総会が函館で開催され、男女共同参画を推進する「函館宣言」が発出された。その中には、『消化器外科における多様な視点が生み出す未来を信じ、真のダイバーシティの実現に向けて会員の意識変革に努めます。会員一人ひとりが、ライフイベントに合わせて希望するキャリアを達成できるよう支援します』という文言が入っており、何か、外科医を取り巻く景色がにわかに変化し始めたように感じる。
現に、弘前大学大学院の消化器外科学講座においても、この5年間に入局した若い外科医は19名で、うち7名は女性外科医である。
当院外科においても女性外科医の在籍が目立つようになり、随分と様変わりしてきている。働き方改革も始まり、現在の外科医周辺の景色はダイナミックに変容しつつある。
この変容していく景色の中、私達外科医の社会的責務である「患者さん(地域住民)を中心に考える」は変わることのない命題であることに誰も異論はあるまい。外科医周辺の景色は変われども、大切な命題だけは変わらずにいることだろう。