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令和7年(2025年)1月20日(月) / 日医ニュース

令和6年度全国医師会勤務医部会連絡協議会「勤務医の声を医師会へ、そして国へ~医師会の組織力が医療を守る~」をメインテーマに開催(2)

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令和6年度全国医師会勤務医部会連絡協議会「勤務医の声を医師会へ、そして国へ~医師会の組織力が医療を守る~」をメインテーマに開催(2)

令和6年度全国医師会勤務医部会連絡協議会「勤務医の声を医師会へ、そして国へ~医師会の組織力が医療を守る~」をメインテーマに開催(2)

シンポジウムⅠ「様々な立場からの声」

250120o2.jpg.jpg 野村政壽久留米大学病院長は、「大学病院改革と医師会」と題して、「医師の働き方改革や大学病院改革が進められる中で大学病院での診療・教育・研究を進めていくためには、地域のかかりつけ医による疾病管理や重症化予防が重要になる」と述べるとともに、医師会の果たす役割についても期待感を示した。
 野田英一郎九州医療センター広域災害・救命救急センター長は、「基幹病院の抱える問題とその対策」と題して、診療科や地域の医師偏在の課題に対する解決策の一つとして、医療機関の連携強化の重要性を強調。「医療機関が病床の稼働状況を共有することで、効率的な病床運用が可能になる」と述べた。
 長澤滋裕飯塚市立病院内科科長は、「へき地診療所の運営とへき地医療に携わる医師に求められる支援」と題して、自身のヘき地診療所での経験を基に、へき地医療に従事する医師の課題は「キャリア支援」と「出産・子育て」であり、へき地医療拠点病院の制度拡充や人材資源の集約・共有化等の支援を訴えた。
 岡本真希帝京大学医学部附属病院循環器内科医は、「日本とドイツの医療現場で感じたこと。全ての医師にとって働きやすい環境とは?」と題して、ドイツで臨床に携わった経験を基に、日本との働き方の違いを紹介。「医師の誠意に頼っている持続可能性の低い日本医療の脆弱(ぜいじゃく)性」を指摘するとともに、「全ての医師」がライフステージに応じて選択できる働きやすい労働環境の整備を提案した。
 その後、全シンポジストが登壇し、質疑応答やディスカッションが行われた。

シンポジウムⅡ「働きたい病院:組織改革と業務改善」

250120o3.jpg 宮地正彦中東遠総合医療センター企業長兼院長は、「統合による病院内の変化、地域医療の変化―乗り越えるべき問題は多いが、明るい未来も見えてくる―」と題して、日本で初めて二つの自治体病院が基幹総合病院として統合したことを紹介。「今後は臨床研修教育の強化、救急科の復活、がん診療の強化を並行して行い、働き方改革や病院経営に好結果を生みだすことで、地域医療の向上を目指していく」とした。
 中島直樹九州大学大学院医学研究院医療情報学講座教授は、「医療DXの考え方と対応」と題して、国が2030年を目標に進めている医療DX政策のインフラ整備について説明し、「世界のDX競争が激化する中で、日本は超少子高齢社会が到来しており、将来の医療の質の向上や業務負担軽減のためにも真の医療DXを進めなければならない」と訴えた。
 川上浩介小倉医療センター産婦人科部長は、「働き方改革で揺れる周産期母子医療センター」と題して、周産期母子医療センターにおける、「勤務2交代制の導入」「主治医制からチーム制への変更」「電子カルテやIT技術の活用」「時短勤務や医療クラークの導入」等の働き方改革の取り組みについて紹介。「周産期母子医療センターとしての責務を果たすため、これらの取り組みを継続的に評価・改善しながら、地域に質の高い母子ケアを提供していく」と強調した。
 田中眞紀福岡県医師会理事/JCHO久留米総合病院名誉院長は、「働きたい職場をめざして」と題して、自院における育児時短勤務やチーム医療、多職種の意識向上、タスクシフト等の働き方改革の取り組みを紹介し、「女性医師の増加が見込まれるわが国にとって、女性医師支援を行うことこそが職場環境を改善させ、ひいては全ての医師にとって働きやすい職場へとつなげることができる」と訴えた。
 その後は全シンポジストが登壇し、質疑応答やディスカッションが行われた。

「ふくおか宣言」採択

 最後に、一宮仁福岡県医師会副会長より「ふくおか宣言」(別掲)が読み上げられ、満場一致で採択された後、閉会した。

令和6年度勤務医交流会の開催

 連絡協議会の開催に合わせ、翌27日には「勤務医交流会」が開催された。
 交流会では、A~Fの6グループに分かれ、テーマⅠ「勤務医の医師会活動への参画~勤務医が望む医師会活動とは?~」、テーマⅡ「働き方改革は君たちにとってどうなの?~若手医師の本音~」に関するディスカッションやグループごとの発表が行われた。
 ディスカッションには医学生・研修医等の若手医師も参加し、オブザーバーを合わせると全国から108名の参加を得て、大変活発なグループワークとなった。
 特に、若手医師の持つ医師会のイメージや働き方改革に対する考えを再認識できたことで、これからも医師会が勤務医の声を聴き、実現していくことが組織強化につながり、日本の医療体制を守ることにつながると確信した。

ふくおか宣言
 我が国は、国民皆保険制度を礎として世界有数の長寿国を実現した。一方で長期にわたる出生数の減少により、急激な人口減少を伴う深刻な少子超高齢社会を迎えた。
 大きく変貌するこれからの社会において、「すべての人に健康と福祉を」を理念とする医療におけるSDGs、すなわち誰もがいつでも等しく質の高い医療を享受できる制度と医療提供体制を維持するために、医療制度が見直され、様々な医療政策が検討されている。すでに地域医療構想、医師の偏在対策、働き方改革が三位一体改革と称して進められており、医師臨床研修制度や専門医制度のみならず、自由開業制等にも改革の矛先が向いている。
 医師会の役割は、これらの医療政策に対し医師の使命感に基づいた適切な専門的提言をすることであり、医師会に、より多くの医師が結集し、医師の総意として国に届けることが重要である。そのためには、医師の約4分の3を占める勤務医、特にこれからの医療を担う若手医師が、生涯にわたり医師としての矜持とやりがいを保ち、充実した医療活動が送れる社会の実現に向けて、開業医と協働で医師会活動に参画することが不可欠である。
 医師会がこれまで以上に勤務医の声をしっかりと受け止め、現場に反映する姿勢こそが、若手医師の医師会事業への理解と帰属意識の醸成に繋がると期待する。
 医師が同じ目標に向かって団結し、質の高い日本の医療を将来的にも国民へ提供し続けることができる社会の実現を目指し、次のとおり宣言する。

 一.各地域において若手医師を含む勤務医の意見集約の場を設け、都道府県医師会ならびに日本医師会との双方向の意思疎通と情報共有をもとに、ボトムアップによる政策への提言の実現を目指す。
 一.医師会役員や医師会内外の会議・委員会委員に係る勤務医枠の拡大あるいは新設、勤務医を対象とする研修会、講演会等の各種イベントの企画等を通じて、勤務医や若手医師の医師会活動への参画を推進する。
 一.医学生や研修医等に対して初期教育の段階から、地域医療や公衆衛生の重要性、さらには医師会活動への正しい理解と信頼の醸成を図る。
 一.勤務医と国民に対し、時代に即したツールを活用した広報活動を展開し、医療情報・医師会活動の発信に努める。

令和6年10月26日
全国医師会勤務医部会連絡協議会・福岡

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