日本医師会で今年4月から「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」を開始して半年が経過したことを受けて、今号では担当の今村英仁常任理事に改めて研修を開始した背景や研修内容について、説明してもらった。 なお、本研修の詳細については、近日中に日本医師会ホームページに掲載予定のコーナーも併せてご覧願いたい。 |
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Q これまでの経緯や研修を始めた背景等について教えて下さい。
A かかりつけ医機能に関して日本医師会では、2022年11月に提言「地域における面としてのかかりつけ医機能~かかりつけ医機能が発揮される制度整備に向けて~(第1報告)」を、そして、2023年2月には「かかりつけ医機能の制度整備にあたっての日本医師会の主な考え方」を、それぞれ公表しました。
その結果、日本医師会の意見を踏まえた形で国会に法案が提出され、2023年5月に「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が成立しました。
その後、政省令等の内容について議論するため、厚生労働省に「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」が設けられ、日本医師会の役員も委員として参画しました。
分科会では精力的に議論が行われ、2024年7月末には「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理」が取りまとめられ、2025年4月から、特定機能病院及び歯科医療機関等を除く医療機関を対象とした「かかりつけ医機能報告制度」が施行されることになりました。
この「かかりつけ医機能報告制度」において、医療機関は、かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無、総合診療専門医の有無を報告することになっており、この研修の対象となるべく、本年4月から日本医師会が始めたのが、今号でご説明する「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」になります。
Q 「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」の対象者はどんな方になるのですか?
A 主に、臨床に従事している医師であり、特に、(1)地域の診療所や中小病院等で診療を行っている医師、(2)地域で新たに開業を検討している勤務医―が対象となります。
また、日本医師会の会員の先生方であることが望ましいですが、都道府県医師会、郡市区等医師会までの会員の先生方や非会員の先生方も対象としています。
Q 研修の内容について教えて下さい。
A 研修は大きく分けて、「座学研修(知識)」と「実地研修(経験)」の二つとなっており、それぞれの研修を必須とした上で、合計10単位以上を取得された先生方に対して、日本医師会より修了証を発行しています(図)。
「座学研修(知識)」は、これまでに取得した日本医師会生涯教育制度の単位となります。先生方には今までどおり研修会・講習会への参加、日医e-ラーニングの受講、『日医雑誌』を利用した問題解答等、さまざまな学習機会を通じて単位を取得して頂ければ、「座学研修(知識)」の要件を満たすことになります。
次に「実地研修(経験)」ですが、こちらについては地域に根差した医師の活動1項目につき5単位を取得することができます。具体的な項目は「地域の時間外・救急対応」「行政・医師会等の公益活動」「地域保健・公衆衛生活動」「多職種連携」「その他」となっています。
これらは先生方が日頃から実際に行っておられる平日夜間・休日輪番業務、学校医や産業医としての活動など、地域医療活動のほとんどが対象となります。
また、各項目の内容は開業医の先生方だけではなく、勤務医の先生方が取り組まれている活動も対象としており、さまざまな活動を掲げています。
Q 日本医師会の他の制度との違いは何ですか?
A 「日本医師会生涯教育制度」は臨床医のみならず、医師全体を対象としており、主に「座学(知識)」が中心となっています。
一方、「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」は、主に地域を面として支える臨床医を対象としているため、「座学(知識)」に加えて「実地(経験)」を必須としていることなどが「日本医師会生涯教育制度」との違いとなります。
また、「日医かかりつけ医機能研修制度」は、「基本研修(日医生涯教育認定証の取得)」「応用研修(規定の座学研修)」「実地研修」からなっており、より充実した内容になっている点が違いとして挙げられます。こうした意味においては「日医かかりつけ医機能研修制度」の修了者は、「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」の修了要件である「座学と実地で10単位以上」を既に満たしていることになります。
Q 修了証を取得するためにはどうしたら良いのですか?
A 「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」の修了要件を満たした先生方は、医師会会員情報システム(MAMIS)を使って医師会に申請して頂くことになります。
その後、申請先の医師会が承認した先生方には日本医師会長名の修了証を発行しています。
なお、MAMISを使用されない先生は紙媒体の「修了申請書」をご活用頂ければと思います。
Q 最後に会員の先生方に一言お願いします。
A 「かかりつけ医機能報告制度」の目的は、地域のかかりつけ医機能を見える化し、地域の協議の場で議論して頂くことによって、地域を面として支えるかかりつけ医機能の更なる充実につなげることにあります。
本制度は決して新たな資格等を付与するものではなく、これまで地域医療に尽力されてきた先生方に手を挙げて報告して頂くことで、地域全体としての医療提供体制をより良くするためのものです。
地域医療の実情を可視化し、地域において必要なかかりつけ医機能を確保することが重要です。また、かかりつけ医の登録や認定が制度化されるようなことがないようにするためにも、多くの医療機関に参加してもらうことが必要だと考えています。そのためにも会員を始め多くの先生方に、ぜひ本研修を修了して頂きたいと考えておりますので、何卒よろしくお願いいたします。