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令和8年(2026年)10月20日(火) / 日医ニュース

かかりつけ医機能の更なる充実・向上を目指して開催

竹内学長竹内学長

竹内学長竹内学長

 日医かかりつけ医機能研修制度 令和8年度応用研修会(第1回)が9月13日、日本医師会館大講堂で開催された。当日は32都道府県医師会の受講会場への同時中継も合わせ、約2540名が受講した。
 冒頭あいさつした松本吉郎会長は、本研修制度が平成28年4月に開始されて以来、昨年度までの修了者が延べ1万7214名、応用研修会の受講者が延べ8万352名となったことに触れ、全国の医師による継続した取り組みに敬意を表した。その上で、実臨床に資する最新の知見を学ぶ機会を提供し、「地域を面として支えるかかりつけ医機能」が十分に発揮されるよう、関係機関との連携に引き続き尽力していく考えを示した。
 続いて、6題の講義が行われた。
 
 講義1「関節リウマチ・膠原病の臨床」では、竹内勤埼玉医科大学長が、関節リウマチ・膠原病とその類縁疾患の特徴と薬物治療について、診断や治療の要点を解説した。
 膠原病は非感染性・非腫瘍性の全身性炎症性疾患であり、診断に当たっては症状や臓器障害パターンと、自己抗体及び炎症反応との組み合わせにより総合的に判断すると説明。その際に、自己抗体検査の中心となる抗核抗体検査は健常者でも陽性となるため、抗体の力価と染色パターン、症状、検査を順番に進めて判断するよう求めた。
 また、リウマチ・膠原病において関節リウマチの患者数が最も多く、有病者全体に占める割合や発症年齢共に高齢化していると説明。発症年齢が高齢化すると自己抗体の陽性率が下がることから診断が難しく、リウマチ因子や抗CCP抗体が陰性であったとしても関節リウマチを疑うよう注意を促した。
 診察は、第2関節を縦と横から触診し、痛みのある指の付け根の関節を横と上から押して痛みのある関節の腫れを見極めると説明。「水枕のように柔らかな腫れであれば滑膜に炎症があるとして関節リウマチを疑い、特徴的な関節の骨びらんがあるかをレントゲンでチェックする」「骨が盛り上がったように硬い腫れであれば変形性関節症を疑う」ことがポイントと指摘。
 治療では、かかりつけ医による診断から早期にメトトレキサートの使用を開始することが望ましく、臓器障害を認める場合は速やかに、また、治療開始から6カ月で寛解または低疾患活動性に達しない場合は専門医に相談するよう求めた。
261020d2.jpg 講義2「慢性心不全の診断と治療~地域かかりつけ医の視点から~」では、弓野大医療法人社団ゆみの理事長が、高齢者の慢性心不全について非典型的な症状や併存疾患が多いため、食欲・意欲、血圧、体重の低下といった低心拍出の兆候にも注意する必要があると説明。BNPまたはNT-proBNPに関しては、年齢や腎機能の影響と患者ごとの推移を踏まえて評価し、心不全が疑われる場合には心エコー検査または専門医への紹介を求めた。
 薬物治療については、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)と左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)、それぞれに対する基本薬を紹介。利尿薬を使用する際には見た目の浮腫だけにとらわれてその量を増やすのではなく、生活上の支障も確認して調整するよう求めた。
 また、地域での連携として、病院が初期診断・治療、かかりつけ医が退院後の管理と増悪予防を担うことになるが、年1回程度、専門医療機関で心エコー等の専門的な検査を受けてもらうことや、治療の見直しについて話し合うことも必要になると強調した。
261020d3.jpg 講義3「在宅を支えるリハビリテーション~日常診療におけるマネジメントのポイント~」では、大串幹兵庫県立リハビリテーション中央病院長が、在宅リハビリテーションについて、機能回復だけでなく、社会参加を支える取り組みでもあると説明。訪問リハビリテーションは、通院困難な人の自宅で生活動作の改善、廃用症候群の予防、福祉用具・住宅改修への助言、家族指導等を行い、実生活に即した支援ができることが特徴であるとする一方、通所リハビリテーション(デイケア)は、医療機関や介護老人保健施設等でリハビリテーションを行い、社会的孤立の解消や介護者の負担軽減にもつながるとした。
 かかりつけ医の役割としては、体重・食欲・歩行速度・活動量等の変化から生活機能の低下に早く気付き、医学的リスクを評価して、リハビリ専門職や看護師、管理栄養士等につなげることがあると指摘。また、低栄養は筋力低下を招くため、筋力トレーニングと必須アミノ酸の摂取を組み合わせるなど、リハ・栄養管理・口腔管理を一体的に支援する必要性を強調した。
 さらに、フレイルや廃用症候群は早期の発見と介入で改善が期待できるとし、その予防には自ら体を動かす訓練を少量・頻回で行うことが重要だとするとともに、廃用状態の回復には不活動期間のおよそ3倍の時間が掛かるが、「決して諦めないことが大切」と訴えた。
261020d4.jpg 講義4「当事者から学ぶ『新しい認知症観』」では、山中しのぶ日本認知症本人ワーキンググループ代表理事が「よりよく生きる日々をともにつくる」と題して講演。自身が2019年に若年性アルツハイマー型認知症と診断された際、「なったらおしまい」という古い認知症観から落ち込み、2年近く引きこもってしまったものの、今を前向きに生きる先輩当事者のピアサポートによって絶望から立ち直れたことを述懐した。
 その後は地域でピアサポート活動を展開しつつ、2022年に法人を設立してデイサービスを立ち上げ、2026年10月からは訪問看護も開始予定である他、専門職・行政・地域住民とも協力して、認知症の診断を受けた後に絶望せずに、自分なりによりよい日々を暮らしていくためのヒントをまとめた『本人にとってのよりよい暮らしガイド(本人ガイド)』を作成したことを報告。
 2024年にはレビー小体型認知症の診断も受けたことにも言及し、医療職には、「認知症になってからでもできること、やりたいことがあり、地域の中で自分らしく暮らし続けることができる」という「新しい認知症観」へのバージョンアップを求めるとともに、「認知症本人の可能性を信じて、患者に希望をもたらす存在であってほしい」と期待を寄せた。
261020d5.jpg 続いて、山崎英樹医療法人社団清山会いずみの杜診療所理事長が「その人《に》/《と》、なにができるか」と題して講演。「その人になにができるか」では、当事者不在のまま治療やケアの在り方が語られるが、「その人となにができるか」に発想を転換することで、当事者との対話や交流により合理的配慮が生まれるとした。
 その上で、認知症観は言葉に現れるとして、医療スティグマや幼児扱いしたような話し方、本人ではなく家族に様子を聞くなど何気なく行われる偏見や差別に注意を促し、本人に向かって話し、本人と相談することが大切であると強調。それは認知症を専門としないかかりつけ医であってもできることであり、本人が精査や治療を望む時は早めに専門医へつなぐよう呼び掛けた。
 さらに、本人に認知症の仲間に会えるピアサポートの場を伝えるだけでなく、医師自身もそこに足を運ぶことが大切であるとし、「医師の認知症観が変わる場所は診察室ではなく、当事者と出会う場である」と述べた。
261020d6.jpg 講義5「医療現場におけるDXの活用の実際~遠隔医療をどう組み合わせるのか~」では、原田昌範山口県立総合医療センターへき地医療支援センター長が、県土の約6割が「医療的へき地」とされ、21の有人離島がある山口県での取り組みを報告。へき地医療を継続的に確保するため、2018年にオンライン診療が制度化された当初から導入し、コロナ禍も乗り越えることができたと説明した。
 オンライン診療の在り方については、看護師と連携した「D to P with N」が有効であるとし、オンライン診療を組み合わせたことで看取りも可能となり、最期まで自宅で生活したいという患者の思いに寄り添うことができたケースを紹介。さらに、オンライン診療によって、へき地診療所で孤独を感じていた看護師が前向きになる効果も見られたことに加え、専門医や指導医が若手医師を遠隔支援することも可能になったとした。
 この他、無医地区へのオンライン巡回診療や、対面とオンラインを組み合わせた医師派遣などの取り組みによって医師の働き方改革につながるばかりでなく、薬剤師がいない島における、郵便局を活用したオンライン服薬指導ではタスクシフトが実現したとした。
 その上で、原田センター長は、遠隔医療はあくまでも手段であり、目指すゴールは持続可能な地域包括ケアであることを強調。「普段から多職種で顔の見える関係を構築し、リアルタイムに情報共有を行うことが肝要であり、それが有事に備えることにもなる」と力説した。
261020d7.jpg 講義6「症例検討~がん/非がんの緩和ケア~」では、髙添明日香あすか在宅クリニック理事長・院長が、まず「がんの緩和ケア」について講演。
 かかりつけ医ががんの緩和ケアを行うためには、(1)予後を予測しケアプランを立てる、(2)患者・家族と一緒に在宅緩和ケアの目標を考える、(3)がんの痛みやその他の苦痛症状を十分緩和する、(4)患者の生活や生きがいに配慮する、(5)多職種でケアに関わる、(6)グリーフケアを心掛ける―ことが大切であるとし、具体的なケースに当てはめながら説明した。
 その上で、「患者さんががんと診断された時、かかりつけ医は病前からの意向や暮らし方を知る重要な存在となる。専門医任せにせず、患者さんの今後の治療に向けた意思決定支援を行ってほしい」と述べ、患者の揺れる気持ちや不安に寄り添い続けることを求めた。
261020d8.jpg 続いて迫村泰成牛込台さこむら内科院長が、「非がんの緩和ケア」について「慢性心不全高齢者を連携して支える」と題して講演。緩和ケアを必要とする患者の3分の2は非がん疾患(心不全、COPD、認知症など)であるとして、慢性心不全の高齢者を連携して支えた事例を紹介した。
 心不全は具合が悪くなっても積極的治療によって回復する可能性があることから、「予後予測はがんよりも難しく、どこから終末期とするかは経験のある循環器内科医でも迷う」とする一方、重症でなくとも心室性不整脈などで突然死するリスクがあるため、心疾患による入退院を繰り返す時期がACP(Advance Care Planning)のタイミングになると指摘。
 心不全患者における在宅でのオピオイド使用については、「心臓疾患の適応症として保険適用が認められているのは、コデインリン酸塩とモルヒネのみ。非がん疾患・心不全における標準的な使用法はまだ確立されておらず、がん患者の投与量の半分から4分の1程度での使用が考えられるが、高齢者は個々の状態にもよる」と説明。
 その上で、迫村院長は「在宅医療において看取りは敗北ではなく、充実した看取りができた際には深い満足感、納得感がご家族と医療・介護チームに訪れる」と述べ、本人の意向を尊重したACPを共有し、病院と地域が一体となったチームで関わる重要性を訴えた。

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