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第1002号(平成15年6月5日) |
第1回都道府県医師会長協議会
SARSをはじめ重要案件を協議
平成十五年度第一回都道府県医師会長協議会が,五月二十日に日医会館小講堂で開催された.ちょうど,台湾人医師による新型肺炎(SARS)の感染が懸念された時期でもあり,多くの時間がSARS対策に割かれ,活発な議論が展開された.
羽生田俊常任理事の司会で開会,坪井栄孝会長のあいさつのあと,日医執行部からの報告,各県医師会からの提出議題をもとに協議を行った.
報 告
「重症急性呼吸器症候群(SARS)対策」については,櫻井秀也常任理事から,五月十四日に全国から担当理事を集めて対策協議会を開催したこと(別記事参照),これまでに出されたSARS関連通知などの説明がなされた.
そのなかで櫻井常任理事は,SARSの蔓延を防ぐために,初期診療については,原則,外来における感染予防体制の整った医療機関で行うことが望ましく,その体制作りをしてほしいとの通知が出されていることを紹介.各県医師会でも,行政に対し,地域の実情に合わせて,その体制整備を行うように働きかけを要望した.また,万一,電話で相談された場合を考え,事前に医療機関の紹介システムを整えておいてほしいとした.
青柳俊副会長から,(1)明日(五月二十一日)開催の中医協総会において諮問答申が行われ,懸案事項であった再診料等の逓減制が廃止される模様になること(別記事参照)(2)中医協が六月に実施する医療経済実態調査について,収支状況が悪い医療機関であっても,医療機関の実情を示すために,ぜひ調査への協力をお願いしたいこと(3)保険者と医療機関との個別契約については,現在,厚生労働省と契約条件について話し合いを行っているところであるが,この問題は現在でも断固反対である─との説明が行われた.
その他,西島英利常任理事がJPNの現況について,さらに羽生田常任理事から,大規模災害時に,北海道医師会または埼玉県医師会が日医の臨時窓口業務を代行することになったことについての報告がなされた.
協 議
(一)「『医療のグランドデザイン』のなかでいう,『ポリシーダイナミックス』や『医療の経済波及効果』に対する,第三者的評価をどう得るか」について,石川県医師会から質問があった.
青柳副会長は,以下のように回答した.
「日医が意見交換している行政側の方は,ほとんど『医療のグランドデザイン』を読んでいる.内容についても毎年見直しを行って,最新のデータを盛り込むようにしている.政府側が導入しようとしている七十五歳以上を対象とした独立型の保険制度については,日医の案を参考にしたものだと考えている」
(二)新しい医師臨床研修制度に対する県医師会の対応について伺いたいとして,岡山県医師会長が質問した.
星北斗常任理事が答弁.
「日医は,地方医務局単位の対応は認められないと主張しているが,厚生労働省とは議論が平行線をたどっている状況にある.この課題については,原則として,都道府県単位での対応をお願いしたいと考えている.各都道府県でどのような対応をとっているか知りたいということで,今,まとめている段階である.近いうちに先生方に情報を提供できると思っている」
(三)茨城県医師会から,「医療の効率化について,日医の明確な方針を出すべきではないか」との質問があり,糸氏英吉副会長が回答.
「WHOの発表などに認められるように,先生方の献身的な努力によって,日本の医療費のGDP比率は低く抑えられている.健康達成度も高く,マクロ的に見ればきわめて効率的だといえる.国民の医療に対するニーズも高まっているが,いい医療にはコストがかかるものだという事実は,データを示して主張していきたい.平成十六年度の診療報酬改定に向けても,重要な議論の材料になると考えている」
(四)沖縄県医師会より,勤務医の生涯教育申告率のさらなる増加対策に関して,「生涯教育の意義の浸透や申告の一括方式の定着により,申告率は年々増加しているが,病院勤務医の申告率が低い現状に対して,実際に勉強をしている事実と申告しない実態へどのように対応するか」について質問があった.
櫻井常任理事が回答.「生涯教育推進委員会で生涯教育をどう評価するかを現在検討中であるが,病院勤務医の多くは,学会に所属しており,専門医がほとんどであるので,そのための勉強を一括申告と同じようにカウントすれば申告率は増加する.しかし,それが日医の生涯教育といえるのかは疑問が残る.専門医や,学会のルールでの講習のなかに,日医の基本的医療課題を入れることにより,日医の生涯教育をしているとみなす考え方もあるので,一年以内に委員会等で議論し,回答を出していきたい」と述べた.
(五)熊本県医師会から,第百八回日本医師会定例代議員会においてイラク戦争の即時終結を求める決議がなされたが,イラク戦争終結後の対応について質問があった.
石川高明副会長が回答.「NGOに実情を聞いたところ,難治性疾患を持った子どもが放置されているので,適切な医療提供と日本での受け入れが必要であることや,専門医,看護師,医療機器技術者の研修および医療機器供与が必要であるという意見であった.日医としての対応を早い時期に検討していきたい」と述べた.
また,坪井会長も,(1)NGOを使う(2)与党内のNGO支援機構を使う―ことによって支援していく方法が現実的であると回答した.
(六)富山県医師会から,柔道整復師の保険請求に関する不祥事について質問があり,整形外科における柔道整復師の諸問題について日医の見解が問われた.
「保険者と柔道整復師会との間の契約制度が通達だけでは簡単にいかない.各都道府県で審査委員会を設置し,柔道整復師に詳しい医師を委員として入れるよう,厚生労働省から通達を出しているところである」と,羽生田常任理事が回答した.
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