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東日本大震災特集号 第1191号(平成23年4月20日) |
「日本医師会災害対策本部会議 拡大会議─現地と話す─」を開催
日医と被災県含む7県医師会がテレビ会議で意見交換
「日本医師会災害対策本部会議 拡大会議─現地と話す─」が3月22・29の両日,日医会館で開催された.
会議では,日医の災害対策本部と被災県を含む七県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城)の各県医師会等をテレビ会議の回線でつなぎ,日医の常勤役員が現地との情報交換を行った.
二十二日の会議が横倉義武副会長の司会で開会.
初めに,今回の東北地方太平洋沖地震により亡くなった会員を含む多くの方々に対し,全員で黙祷を捧げた.
冒頭,原中勝征会長は,「今後は,日医として,被災地各県医師会からの細かい要望等を聞きながら,長期化が予想される救援活動に対し,各地域の先生方と力を合わせ,住民のために努力していく」と述べ,協力を要請した.
被災県の惨状が明らかに
つづいて,「各県からの報告」として,齊藤勝青森県医師会長,石川育成岩手県医師会長,伊東潤造宮城県医師会長,谷雄三福島県医師会長,齋藤浩茨城県医師会長,坂本哲也秋田県医師会副会長,有海躬行山形県医師会長が,それぞれの被害状況の概要等を説明した.
「青森県」では人的被害はそれほど多くなかった.「岩手県」では会員八名が行方不明(本会議中に,一名の死亡を確認)で,三百七十九カ所の避難所に四万五千六百八十七名が避難している.十九日に届いた医薬品等については感謝しており,県と協力しつつ各地に配送したが,まだ足りない状況である.「宮城県」では会員九名の死亡が確認され,千百七十カ所の避難所に二十三万六千名が避難している.石巻・気仙沼などは惨憺(たん)たる状況で,停電・断水が続き困窮している.「福島県」では太平洋沿岸が津波により壊滅状態で,連絡のとれない会員が三〇%以上いる.「茨城県」では全県下の医療機関でインフラの破壊が起こったが,既にかなり復旧した.百一カ所の避難所に三千五百名が避難している.「秋田県」では,被災県ではあるが,隣県である岩手県を中心に,継続した支援を行うためのシステムを構築している.「山形県」では県の健康福祉部と協議し,災害拠点病院等の施設を中心に,人工透析・療養患者を含め,県外からの被災者三千七百三十二名を受け入れている.
また,岩手・宮城・福島・茨城の各県からは,「日本医師会災害医療チーム」(JMAT:Japan Medical Association Team)の活動に対して,多くの感謝の声が寄せられていることが報告されたほか,メンタルヘルスや慢性疾患の悪化予防など,避難住民の健康管理への継続した支援が求められた.
さらに,「日本医師会からの報告」として,(一)JMATの活動状況や,「避難所などにおけるトリアージカード」(石川広己常任理事),(二)検案担当医の派遣(高杉敬久常任理事),(三)医薬品搬送(藤川謙二常任理事)―について,それぞれ説明が行われた.
その後の「意見交換」では,「避難所への長期にわたる切れ目のないJMATの派遣をお願いしたい」「インフルエンザ流行に対する検査キットやタミフル等の供給も含めた対策を早急にお願いしたい」など,さまざまな意見や要望が出された.
日医からは,羽生田俊副会長が,十八日に横倉副会長名で「東北地方太平洋沖地震による被災患者の受入調査」を,岩手・宮城・福島・茨城を除く四十三都道府県医師会に依頼していることを説明し協力を要請した.
また,中川俊男副会長は,厚生労働省保険局医療課より示された「被災者に係る一部負担金等の取扱い」について,十五日付で通知しているとして,その周知等を依頼した.
さらに,今村聡常任理事は,物品・医薬品等の具体的なニーズや派遣医療チームの活動状況等の情報を県医師会でまとめて要望・連絡して欲しいとし,保坂シゲリ常任理事は,インフルエンザに関して,「行政備蓄分の抗インフルエンザ薬の使用が可能になった旨,厚労省より通達が出ているので,行政と相談して欲しい」と説明した.鈴木邦彦常任理事は,今後の再建支援に向けた基礎資料とするための「病院・有床診療所・診療所の損壊状況調査」への協力を要請した.
二十九日の会議では,横倉副会長の司会のもと,冒頭,原中会長があいさつを行い,被災者の将来展望が少しでも明るいものとなるよう,引き続き努力していく意向を示した.
その後,各県医師会からの報告が行われた.
石川岩手県医師会長は,県の沿岸部に医薬品のサプライセンターを四カ所設置したこと等を報告するとともに,今後,JMATが撤収した後が正念場と考え,内陸部の医師会を中心に,“JMAT岩手”の編成を進めていることを明らかにした.
伊東宮城県医師会長は,避難所にインフルエンザの流行が見られることから抗インフルエンザ薬や検査キットを配布したことを報告したほか,被災した医療機関の復興が今後の大きな課題になっていると指摘.また,カルテを失ってしまった医療機関に対する診療費の支払いへの対応を求めた.
谷福島県医師会長は,原発事故の問題が後を引いているとして,政府に対し,正確で一貫した情報提供を要望.今後は,被災した医師への対応,准看学校の生徒・教員への対応も課題になるとした.
齋藤茨城県医師会長は,県内外からの避難民に対応するため,行政と協力して“茨城県医師会災害復興医療連絡協議会”を開設したことなどを説明.さらに緊急被曝(ひばく)医療に対する会員への周知徹底を求めた.
齊藤青森県医師会長は,地震発生直後には多くみられた避難民も,現在は減ってきているとしたほか,四月以降もJMAT派遣が継続出来るよう,努力していく意向を示した.
小山田雍秋田県医師会長は,全会員参加の下で今回の事態に対応していることを説明するとともに,避難所では薬の管理が重要になるとして薬剤師と共に活動することの重要性を強調した.
有海山形県医師会長は,行政と協力して,被災者を出来るだけ受け入れるよう対応しているとしたほか,今後は息の長い支援をしていくことが大事になるとの考えを示した.
被災地の現状を踏まえた日医の対応
「日本医師会からの報告」としては,まず,石井正三常任理事から,三十〜三十一日の日程で被災地を訪問(別記事参照)し,得られた情報を基に今後のJMATの派遣体制を考えていきたいとの説明がなされた.
三上裕司常任理事は,避難所での心のケアが必要になってきたとし,行政の「心のケアチーム」と調整して,日医でも派遣を考えていく意向を示した.さらに,医療機関の復興に関しても福祉医療機構等に申し入れを行っていることを報告した.
今村(聡)常任理事は,二十八日に開催された民主党「東北関東大震災被災者健康対策チーム」での討議内容を説明.日医からはJMATの状況,被災患者受入可能病院調査(医師会病院・有床診療所)の結果を説明したことを報告した.
高杉常任理事は,被災県の遺体見分実施状況を説明し,「検視は行政,地元警察,医師会が連携して行わなければうまくいかない」と述べ,引き続きの協力を求めた.
石川常任理事は,三十,三十一の両日,日刊紙と地方紙に意見広告「全国から多くの医師が被災地に向かっています.」を掲載すること(別記事参照),JMAT派遣者用ビブスを作成したことを説明した.
鈴木常任理事は,医療費の支払に関して,通常の請求が困難な場合には,阪神・淡路大震災の例にならい,概算請求が可能なことを説明した.
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