日医ニュース
日医ニュース目次 第1269号(平成26年7月20日)

横倉会長を無投票で再任

 二十八日の定例代議員会では,代議員会議長及び副議長の選定が行われ,いずれも無投票で加藤寿彦氏(愛知県)が議長に,久野梧郎氏(愛媛県)が副議長に選定された.
 引き続き,昨年度中に物故された会員の霊に全員で黙祷を捧げた後,今村定臣常任理事が,「平成二十五年度日本医師会事業」について報告を行い,議事に入った.
 まず,第一号議案「平成二十五年度日本医師会決算の件」が上程され,道永麻里常任理事が提案理由を説明した.
 財務委員会(議長より指名された十五名で構成)が開催された別記事参照後,審議が再開され,新たに選出された橋本省財務委員長(宮城県)が,五月十日に開催された財務委員会における本議案に関する審議の経過及び結果について報告.表決が行われ,賛成多数で可決した.
 第二号議案「日本医師会役員(会長,副会長,常任理事,理事,監事)及び裁定委員選任の件」,第三号議案「日本医師会役員(会長,副会長,常任理事)選定の件」については一括上程され,横倉会長が提案理由を説明.会長(定数一人)候補者,副会長(定数三人)候補者,常任理事(定数十人)候補者,理事(定数十五人)候補者,監事(定数三人)候補者,裁定委員(定数十一人)候補者に対して,会長,常任理事,理事,監事及び裁定委員は定数内の立候補だったため,立候補者全員を選任することが決まり,副会長のみ投票となった(今回は,開票作業の迅速化を図るため,初めて機械による集計作業が行われた).
 その結果,投票総数千七十四票(代議員三百五十八人,無効票〇票,白票四十四票)のうち,中川俊男氏(北海道)が三百三十四票,今村聡氏(東京都)が三百二十四票,松原謙二氏(大阪府)が二百九十七票で選任された.
 選任後,挙手により賛成多数で各候補者が会長,副会長,常任理事に選定され,裁定委員を除く役員全員が登壇.横倉会長が代表してあいさつに立ち,謝辞とともに,「三十二名で力を合わせ,今の難しい医療環境の中で国民医療を守る立場から,しっかりと会務を遂行していきたい.“イバラの道”を踏みしめながら行く覚悟を決めている」と述べ,今後の支援を要請して,定例代議員会は終了した.

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 二十九日の臨時代議員会では,横倉義武会長の所信表明別記事参照久史麿日本医学会長のあいさつに続いて,議事に入った.
 まず,第一号議案「平成二十七年度日本医師会会費賦課徴収の件」が上程され,今村聡副会長の提案理由説明の後,表決が行われ可決した.
 その後,代表質問と個人質問に移った.

代表質問

 (一)日本医師会勤務医部会の設立について
 泉良平代議員(中部ブロック)からの「日本医師会勤務医部会の設立」に関する質問には,横倉会長が,初めに,全ての医師が立場の違いを超え,多様性を認めながら,「日本医師会綱領」の理念の下に大同団結し,医療のあるべき姿を実現していくことこそが,日医の進む道であるとの考えを示した.
 その上で,地域医師会活動に参画する勤務医の声を,日医の会務にしっかりと反映させていくという視点が最も重要と指摘.都道府県医師会に設置されている勤務医部会や勤務医委員会の一層の充実・活用等を通じ,各地域の特性に応じた具体的な対応の推進を要請した.そうした地域での実質ある取り組みを深化し,日医の情報を勤務医に伝え,勤務医の声を日医に届けるという,基本的な環境が整えば,「全国医師会勤務医部会連絡協議会」「都道府県医師会担当理事連絡協議会」「勤務医委員会」などの既存の枠組みの中でも,目的は十分に達成出来るとして,その充実と活用に対する更なる支援を要請した.
 (二)非営利ホールディングカンパニー型法人制度に関して
 清水信義代議員(中国四国ブロック)からの「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」に関する日医の見解を問う質問には,中川俊男副会長が回答.
 日医としては,非営利ホールディングカンパニー型法人制度について,医療資源を効率的に活用出来るという社会保障制度改革国民会議の方向性は同意出来るが,医療を営利産業として成長させたいという意図が明らかである産業競争力会議の提案は全く受け入れられないとした.
 その上で,日医のスタンスは,非営利原則の厳守,そして経営優先ではなく,地域医療を守るための地域に根差した医療機関の健全な育成を支援することであると強調.その理念の下,日医では,「統括医療法人制度」の提案を取りまとめ,厚生労働省の「医療法人の事業展開等に関する検討会」(六月二十七日開催)に提出したことを報告.統括医療法人には,地域医師会も参画する「協議の場」の協議結果の順守を求めることなど,そのポイントを説明し,具体的内容については,今後詰めていきたいとした.
 (三)診療報酬改定により生じた在宅医療の問題点について
 長柄均代議員(九州ブロック)の「診療報酬改定により生じた在宅医療の問題点」についての質問には,中川副会長が回答した.
 同副会長は,在宅医療の不適切事例の是正に至る経緯を説明した上で,これまでの日医の対応として,第一に通知によって,在宅時医学総合管理料,特定施設入居時等医学総合管理料の減額について一定の緩和を行ったこと,第二に「別紙様式十四」について,緊急的に半年間は提出しなくてよい取り扱いとさせたことを報告するとともに,日医でも,医療機関の事務負担の増加につながらない方法について検討を行っているとした.
 また,今後については在宅医療の重要性に鑑み,更なる現状把握を行うため,中医協で在宅不適切事例の適正化による影響調査を前倒しで実施することが決まったこと等を説明し,「日医でも独自の調査をする他,在宅医療に取り組んでいる医師を全力で支え,あるべき在宅医療の推進について,継続的に対応していく」とし,理解を求めた.
 (四)日本医師会綱領が作成されてから一年,国民のための医師会活動が出来ているか
 尾崎治夫代議員(東京ブロック)の「日本医師会綱領が作成されてから一年,国民のための医師会活動が出来ているか」との質問には,横倉会長が,まず,国民医療の向上に向けた医療政策等を国民や政府に強く訴えていくための旗印として,また,組織としての目的・理想を国民に広く示すことを意図して,「日本医師会綱領」を策定したことを改めて説明した.
 その上で,二期目においては,綱領に示した事項を実行していくため,「地域に即したまちづくりを行っていくこと」「国民皆保険を堅持し,次の世代に受け継いでいくこと」を基本的な考え方として,「グランドデザイン」の作成を目指す意向を表明.
 その明確な目標と戦略に沿って全国の医師と協働し,医療界の大同団結を図りながら,国民医療の向上にひたむきに尽くしていくとした.
 (五)消費税一〇%に向けた日医の対応について
 小熊豊代議員(北海道ブロック)からの,消費税一〇%に向けた日医の対応に関する質問に対して,今村副会長は,まず,日医が要となって医療界の意見を一つにまとめるべきとの意見に賛意を示した上で,四つの選択肢((1)課税・ゼロ税率(2)課税・軽減税率(3)非課税・全額還付(4)非課税・一部還付)への意見の絞り込み,各方面との意見交換・調整,医師会役員対象の意識調査,広報ポスター作成など,これまでの経緯や取り組みを説明.
 また,本年四月の消費増税と診療報酬改定により補填(ほてん)不足が拡大したとの指摘に関しては,十分な根拠がない場合も散見され,冷静に実態を見ていく必要があるとした.
 今後については,八月中旬から九月上旬を目途に具体的な要望内容を絞り込むとともに,国会議員や関係省庁と検討・調整を行っていく意向を示し,「最終的な解決法が選択され,要望実現に向けて活動する時」がくれば,速やかに周知するとして,理解と協力を求めた.
 (六)日医生涯教育制度の抜本的改正を求む
 橋本省代議員(東北ブロック)の,日医生涯教育制度の抜本的改正を求める要望には,松原謙二副会長が回答.
 同副会長は,各学会の専門医更新で重視,審査されるのは専門性であるが,国民の求める医師像は,「病気のみではなく,病める人全体を診て,その問題を解決する医師」「その疾患の随伴症状ばかりでなく,併存する疾患への対応にも必要な知識と技能をきちんと身につけている医師」であるとの認識を示した.
 その上で,「基本的医療課題」は必須,「他領域の症候論」は専門性によって幅を持たせる形で,専門医認定・更新の基礎点として日医生涯教育制度を活用するよう,「日本専門医機構」の議論の中で働き掛けを行っていくとした.
 また,専門医認定・更新の要件となれば,必然的に日医生涯教育制度の「評価」は高まるとして,「評価」に耐え得る,より良い制度にバージョンアップさせるために,今期の生涯教育推進委員会で具体的な制度設計を検討する意向を示し,引き続き普及・啓発に努めていくと結んだ.
 (七)理事枠について
 堂前洋一郎代議員(関東甲信越ブロック)からの理事枠に関する質問には,松原副会長が回答した.
 同副会長は,まず,第百三十一回臨時代議員会で決まった理事二名(勤務医と女性医師)の増員枠の候補者選出方法について,各地区代表者懇談会で,全国八ブロックを東地区・西地区に分け,交互に勤務医・女性医師を候補者として選出し,東西各地区内における候補者選出は原則としてブロックの輪番制とする申し合わせ事項が決定されたことに感謝を述べた.
 その上で,「全ての都道府県医師会に女性医師部会,勤務医部会を整備し,そこから理事候補者を推薦する」との提案に対しては,「申し合わせ事項では,各ブロックで自由に候補者を選出して頂くことが出来るので,勤務医部会等からの選出方法も可能であるが,部会の設置については,あくまで各都道府県医師会の政策や方針による」として,各県の判断であることを強調.
 勤務医枠を増やすなどの理事枠の変更については,今回の理事増員の結果を見ながら,必要があれば検討するとの姿勢を示した.
 (八)現政権の医療関連政策と日医の対応について
 安達秀樹代議員(近畿ブロック)からの現政権の医療関連政策と日医の対応に関する質問には,今村副会長が回答.
 今回の診療報酬改定については,「極めて特例的な措置であると認識しており,今後の改定において,薬価引き下げ財源を本体の改定財源にしないということが前例にならないよう,全力で取り組んでいく」と述べた.
 規制改革会議における保険外併用療養の拡大については,「規制改革に関する第二次答申」(六月十三日)の「患者申出療養(仮称)」に,前例がない診療については,実施時に安全性・有効性をきちんと確認するとともに,将来的に保険収載を目指すという点が盛り込まれたことから,最低限の担保がされたとの見方を示した.
 規制改革会議や産業競争力会議等の医療に市場原理を導入しようという動きについては,医療本体への規制緩和は行うべきではないことを強調し,このような動きに対して,ただ反対するのではなく,議論の場に参加し,日医の基本理念に基づいた主張を粘り強く行っていくとした.

個人質問

 (一)「医師会組織を強くするための提言」について
 河村康明代議員(山口県)からの「医師会組織を強くするための提言」についての質問には,今村常任理事が回答した.
 同常任理事は,昨年六月の第百二十九回日本医師会定例代議員会での「日本医師会綱領」の採択を契機に,戦略的な組織強化として,関係役員・事務局にて組織する「医師会組織強化に向けたワーキンググループ」を会内に設置し,時代に即応した組織のあり方や,新たな会員獲得に向けた取り組み等について鋭意検討を行ってきたと説明.都道府県医師会に対しては,日医に未加入の都道府県医師会員,郡市区等医師会員に日医への加入を呼び掛けるなど,地域の医師会単位でも組織強化に向けた取り組みを推進するよう,本年二月に文書で依頼を行っているとした.
 また,本年秋より『日医雑誌』の電子書籍化を実施する他,会員メリットの拡大として,「医師資格証」の発行に当たっては,初年度に限り年会費を無料とすることなどを実践しているとして,理解を求めた.
 (二)日医の活動方針などの会員への説明方法,広報について
 佐藤光治代議員(長崎県)からの日医の活動方針などの会員への説明方法,広報に関する質問には,石川広己常任理事が「会員に対して,医療を取り巻く諸問題をより分かりやすく伝えていくため,日医ニュース紙面のブラッシュアップや,日医ホームページのメンバーズルームのリニューアルを行うなど,創意工夫を重ねてきた」と説明.
 また,今期の「広報委員会」においては,地域医師会からの,日医広報活動に対する意見をどのように受け,集約していくかについても積極的に検討していきたいとした.
 国民向けの対外広報については,医師会の主張に耳を傾けてもらうため,「医療はまちづくり」を主眼として,現在行っている新聞での突き出し広告,意見広告に加えて,テレビを活用した番組制作にも重点を置いていくとともに,マスコミとの意見交換の場も,これまで以上に増やしていく考えを示した.
 (三)サ高住等に対する在宅医療のあり方について
 豊田俊代議員(兵庫県)からのサービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)への在宅医療のあり方についての質問には,松本純一常任理事が回答した.
 同常任理事は,いわゆる患者紹介ビジネス等の不適切な事例に関する問題について,日医と厚生労働省担当課が協議を行い,日医から,地域医師会等に地域の実情に応じた対応を依頼する一方,厚労省からは地方厚生局に対して,集合住宅等に訪問診療を行う医療機関の確保が困難な事案等を把握した場合には,様式を決めた上で厚労省保険局医療課へ報告するよう通知が出されたことを報告.
 その上で,同常任理事は,サ高住のサービス提供の実態は,九〇%以上が老人福祉法上の有料老人ホームに該当するため,老人福祉法に規定される「入居者の処遇」の観点から指導・監督を行うことが適当との考えを示しつつ,地域包括ケアシステムの基盤としての「住まい」を重要視し,必要な医療・介護サービスの確保を,国土交通省始め関係当局に働き掛ける考えを示した.
 (四)研修医が地域医療に入っていきやすい医学教育の方法を,日医が率先して提唱すべきだ
 研修医が地域医療に入りやすい医学教育の方法を日医が提唱すべきとする小串輝男代議員(滋賀県)からの質問には,小森貴常任理事が回答した.
 同常任理事は,代議員の考えに賛同するとともに,文部科学省の医学教育に関する「モデル・コア・カリキュラム」においても,「医の倫理と生命倫理」「患者と医師の関係」等を学ぶことになっているが,内容の充実にはまだ課題が多いとの認識を示した.
 また,日医は,昨年一月に「医師養成についての日本医師会の提案(第三版)」を公表し,「日医は地域医師会と協力して地域医療実習等を支援する」としており,文科省に対しても働き掛けを強めていることを報告.今後については,活動支援を充実するとともに,全国医学部長病院長会議とも連携して学部教育の充実や,厚労省「医師国家試験改善検討部会」で,地域医療のあり方の理解を問う視点の強化を働き掛けていきたいとした.
 (五)全国一律の,いわゆる「夜勤七十二時間ルール」の緩和を
 佐藤和宏代議員(宮城県)からのいわゆる「夜勤七十二時間ルール」の緩和に関する質問には,釜萢敏常任理事が回答した.
 同常任理事は,中医協において,「月平均夜勤時間七十二時間要件を満たせなかった場合の緩和措置」の対象拡大について議論した結果,支払側や日本看護協会の専門委員からの大反対を受けながらも,実際に減算措置が適用された時に原因究明の調査を実施することを答申書の附帯意見に明記することで決着したと説明.調査は,本年度に実施される予定となっているが,引き続き病院団体とも連携してその緩和に努めるとした.
 更に,東日本大震災の被災地の月平均夜勤時間数を緩和する特例措置に関しては,「本年九月末まで延長が認められているが,東北地方などは,震災以前から看護師不足であることを認識しており,更に打つべき手はないか,中医協等で検討したい」と述べた.
 (六)新たな財政支援制度「基金」の活用に向けた課題について
 松山正春代議員(岡山県)からの新たな財政支援制度「基金」の活用に向けた課題に関する質問には,鈴木邦彦常任理事が回答した.
 事業者負担に格差が生じることへの懸念に対しては,「都道府県の事情や方針によって事業主負担に大きな差が生じ,その結果,事業の達成度合いに格差が生じることは,新たな基金の創設の趣旨や消費税負担を受け入れた国民の意思にも反することだ」とし,都道府県に対して積極的に負担を求めていくよう要請.また,日医としても,民間医療機関や地域医師会に対する事業者負担の軽減を,厚労省を通じて都道府県に求めていく考えを示した.
 基金の財源については,平成二十九年度以降は大幅な積み増しは困難なことを説明.今後については,「他の都道府県の提案も参考としながら,数年後も見据えた事業の検討,行政との協議,各職能団体や病院団体等の提案の取りまとめ,更には効果の検証とそれに基づく事業の練り直しなどの継続的な対応をお願いしたい」と述べた.
 (七)母体保護法指定医師研修会受講における会員の認証について
 母体保護法指定医師研修会の受講を都道府県間で相互に出来るよう「医師資格証」の全会員への普及を求める石渡勇代議員(茨城県)の要望には,石川常任理事が回答した.
 同常任理事は,医師資格証のメリットについて,(1)カードを保有している医師であれば,その本人確認及び認証が可能(2)カードに搭載しているICチップを活用することで,将来的には,券面を利用したアナログの受付方法に加え,ITを用いた受付の仕組みも実現出来る─等を説明.日医としても,多くの会員に医師資格証を保有してもらうことが肝要だと考えているとした.
 その上で,都道府県・郡市区等医師会に対しては,医師資格証の更なる普及のため,受付と審査体制構築への協力と,「日医会員に限り,発行時にかかる年会費が無料であること」等の会員への周知を改めて求めた.
 (八)子ども達の生命・健康を守る学校保健活動へのバックアップを
 河合直樹代議員(岐阜県)からの,子ども達の生命・健康を守る学校保健活動へのバックアップを要望する質問には,道永麻里常任理事が回答した.
 同常任理事は,AEDやエピペンについては,これまで,文科省との政策の企画や環境整備を進めてきたとした上で,今後,各都道府県,各学校現場での研修会等について,教育委員会との連携も含め,日医も積極的に支援していく意向を示した.
 また,学校保健,学校安全の推進に多大な貢献をしてこられた若年者心疾患・生活習慣病対策協議会に対しては,日医としても心から感謝しているところであり,このような組織に対しては,さまざまなバックアップの可能性について,真摯(しんし)に検討していくとした.
 (九)全ての予防接種を国が実施主体として行うための活動を
 田徹代議員(東京都)からの,全ての予防接種を国が実施主体として行うための活動を,との質問に,小森常任理事は,「全国どこでも同じ条件で受けられる環境,システムの整備が不可欠であると考えている.そのためには,予防接種事業はあくまで国の責務として行われるべき」とする日医の見解を示した.その一方で,予防接種事業の今後の方向性について,約六割の郡市区等医師会が「現在の市町村事業で良い」と回答した調査結果に言及し,これら地域の意見をどのように斟酌(しんしゃく),調整していくかが,今後の大きな課題であるとした他,接種情報の厳格な収集,管理も重要な課題だと指摘.合わせて,副反応のリスクと公衆衛生上の意義や接種の必要性を正しく国民に伝えていくことが必要だとした.
 更に,会内の感染症危機管理対策委員会を改組し,これら諸種の課題に的確に対応する組織にする考えを示した.
 (十)産業保健三事業一元化実施後における地域産業保健センター事業の諸問題について
 松本吉郎代議員(埼玉県)からの,産業保健三事業一元化実施後における地域産業保健センター事業の諸問題についての質問には,道永常任理事が回答した.
 地域窓口の平成二十六年度予算については,活動予算が不足する場合は,年次計画,第2四半期までの実績等を踏まえて,予算の再調整を行うよう労働者健康福祉機構に伝えていきたいとした.
 また,身分保障に関する傷害保険の加入については,事業費から支出可能な条件があるか,引き続き要望していく意向を示すとともに,登録産業医向けの賠償責任保険の導入に関しては,労働者健康福祉機構で現在検討中であるとした.
 コーディネーターについても,待遇改善を要望していくとした他,運営主幹については,各センターの運営協議会の委員として,センターの活性化の議論に加わるよう要請.相談対応については,産業保健三事業の一元化の目的の一つがワンストップサービスであり,これにより切れ目のない事業を展開することが出来るとした上で,都道府県医師会及び郡市区等医師会に対し,改めて積極的な協力を要請した.
 (十一)日医役員補欠選挙の際,現職役員が立候補する場合の辞任の要否等について
 日医役員補欠選挙に関して,(1)現職役員が別の役職の役員に立候補する場合,現在の役職を辞任する必要性とその根拠(2)辞任する必要性があればその時期─等を問う立元祐保代議員(宮崎県)の質問に対し,今村常任理事は,理事の選任方法について,会長・副会長・常任理事・理事はそれぞれの候補者の中から代議員会で選任することが定款で定められており,例えば副会長に選定されるためには,副会長候補たる理事として選任される必要があること等を説明.
 その上で,「既に理事の地位にある者を,改めて別の役職の理事として二重に選任することはあり得ず,日医の現行の定款・諸規程からもそのことは十分に読み取れる」とし,そのことは,参与の弁護士にも確認済みであるとした.
 また,(2)については,辞した職についても補欠の選任・選定が必要となるため,代議員会の議題として理事会の決議を経る必要があること,定款施行細則第十七条では,選任の二十日前までに公示することが定められていることから,「辞任時期についてはその都度,明らかになる」との考えを示し,理解を求めた.
 (十二)医療事故調査制度について
 平成二十七年十月に施行される医療事故調査制度について,(1)刑事捜査・訴追の可能性(2)医療事故調査等支援団体と都道府県医師会の関わり─を問う鈴木伸和代議員(北海道)の質問には,笠井夫常任理事が回答した.
 (1)については,厚労省「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」の報告書に「第三者機関から警察への通報は行わない」旨,明記されていること等を説明し,理解を求めるとともに,警察が遺族等からの通報を受けた場合については,いわゆる第三次試案・大綱案においては,警察・法務当局との間で「謙抑的」な対応をする旨が合意されていたことから,今後のガイドライン策定の過程などにおいて,警察・法務省と申し合わせを行う可能性について,引き続き模索していきたいとの考えを示した.
 また,(2)については,「今後,ガイドライン案を策定する過程において,日医も関与して,具体化していく」と述べるとともに,医療行為が刑法によって罰せられることが決してないよう,全力で取り組んでいくとして,協力を求めた.
 (十三)生活保護法の一部改正について
 本年七月より一部を除き施行される生活保護法の一部改正に伴う(1)医療機関の混乱への対策(2)国(地方厚生局)による医療機関への直接指導に至る条件及び介護機関に対する「被保険者の利益を保護する緊急の必要性」の具体的内容(3)医療機関指導時の医師会の立会─について,日医の見解等を問う藤原秀俊代議員(北海道)の質問には,羽鳥裕常任理事が回答した.
 同常任理事は,まず,今回の改正に伴う福祉事務所の調査権限の拡大について,福祉事務所が官公署等に情報開示を求めることの出来る項目が拡大されるという意味であり,医療機関に直接関係するものではないと説明.
 (1)については,厚労省に対し,混乱が生じることのないよう適切な対応を要請するとともに,各自治体で周知を図ること,生活保護担当部局と介護担当部局が連携し,対応することを確認しているとした.
 (2)の直接指導については,指定医療機関,指定介護機関共に同様の取り扱いであるとした他,「緊急の必要性」については,国に対して早急に具体的基準を示すよう求めていく意向を示した.
 また,(3)については,禁止されてはいないが,実態として立ち会っていないことが多い現状を説明した上で,「他団体との関係も考慮しつつ,保険者同意の下,前向きにその対応を考えていきたい」と述べた.

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