【産婦人科】小元 敬大先生
(南相馬市立総合病院 産婦人科)-(前編)
――小元先生はなぜ産婦人科を選ばれたのですか?
小元(以下、小):もともと外科系に興味があったのですが、一番のきっかけは臨床実習で産婦人科を回ったことですね。お産や帝王切開の手術に立ち会い、命が生まれる瞬間に関われることに非常に感動を覚えたんです。最終的には、臨床実習で内科・外科を含め様々な科を回ったうえで、「やはり産婦人科だな」と心を決めました。
――卒業後、臨床研修はどちらの病院に行かれましたか?
小:臨床研修のうちは、忙しい市中病院で色々と経験を積みたいと思い、太田西ノ内病院という郡山市の病院を選びました。
――臨床研修では、どの科をどのように回ったのですか?
小:1年目はまずメジャーな科を押さえようと思い、総合内科、糖尿病内科、外科、麻酔科・救急科をそれぞれ3か月ずつ回りました。産婦人科は2年目の4~5月に回り、その後はその経験を踏まえて、関連する科を計画的に回ることができました。
僕は南相馬市の出身で、今勤務している南相馬市立総合病院の奨学金を受けて医学部に進学したんです。ですので、将来的にこの病院で働くことも想定に入れながら回っていきました。例えば、この病院には放射線科の常勤医がいないので、放射線科を1か月回って基本的な読影の技術を身につけたり。また、産婦人科では自家麻酔をかけることも多いので、麻酔科は重点的に回りました。合併症のある妊婦さんを診るときのために、呼吸器内科や糖尿病内科も回りました。
ただ、NICUを回れなかったのは少し心残りです。ここのような、地方の中規模病院では、生まれた赤ちゃんが重症だった場合、その場でなんとか命をつないで大学病院に搬送しなければなりませんから。
【産婦人科】小元 敬大先生
(南相馬市立総合病院 産婦人科)-(後編)
――専門研修では、どのような経験を積んできましたか?
小:母校の医局に入局し、すぐまた太田西ノ内病院に派遣されました。そこでは基本的に分娩は僕たち若手に任されていました。日中の病棟業務と入院患者さんの対応を午前中に行い、午後は手術があるときは手術をします。緊急帝王切開も、よほどリスクが高い患者さんの場合以外、入院の手続きから執刀まで全部自分たちで行いました。ハイリスクの症例も多く集まる大病院だったので、日中はかなり忙しかったです。卒後4年目には大学病院に戻って半年間勤務し、そこから現在の南相馬市立総合病院に移りました。
――専門医資格取得に必要な症例は集まりそうですか?
小:福島県内にいれば症例は自然と集まってくるので、今はあまり症例数のことは気にせず、ひたすら目の前の患者さんに向き合っています。
執刀経験は臨床研修の時の緊急帝王切開から始まりました。卒後3年目の1年間だけで、帝王切開は100件以上経験しましたね。3年目の終わり頃からは、子宮頸部円錐切除術や、腹腔鏡を使った付属器切除術、腹式単純子宮全摘などの婦人科の手術もするようになりました。
――これまでで一番印象に残っている症例はありますか?
小:忘れられないのは、巨大な子宮頸部筋腫を合併した、30代後半の自然妊娠の妊婦さんを診た時のことです。その方は筋腫の影響で、妊娠12週の入院中、一時は1分間に500mlを超える大出血を起こしたんです。母体を救うため、赤ちゃんごと子宮を切除することも考えましたが、その方は「初めての妊娠で、絶対に諦めたくない」とおっしゃるんです。それで必死にガーゼで圧迫して止血し、そこからほぼずっと入院管理を続けました。結局29週の頃破水して緊急帝王切開になり、癒着胎盤もあって子宮全摘になりましたが、母子共に無事に退院できました。お母さんは「先生方のおかげでなんとか赤ちゃんを授かれました」と深く感謝してくださり、最後の外来の時には看護師さんに「小元先生にもどうぞよろしくお伝えください」と言付けてくださったそうです。本当に産科医冥利に尽きる経験でした。
――今後はどのような医師を目指していきたいですか?
小:まずは専門医資格を取得したいですが、それ以降のことは決めていません。当院の奨学金の義務年限が計6年間あるので、当面は当院と他院を行き来しながら、少しずつ経験を積めればと思います。まだまだ半人前なので、色々な先輩や患者さんから学び、技術と知識をしっかり身につけていきたいですね。
医学部卒業 | 2014年 福島県立医科大学医学部 卒業 | 卒後1年目 | 太田西ノ内病院 臨床研修 |
卒後3年目 | 福島県立医科大学 産科・婦人科学講座 入局 太田西ノ内病院 産婦人科 | 太田西ノ内病院では、リスクがあまり高くない患者さんに自家麻酔をかけることも多かったです。 |
卒後4年目 | 福島県立医科大学 産科・婦人科学講座 南相馬市立総合病院 産婦人科 | 大学病院では婦人科をメインに学びました。南相馬市立総合病院では、上級医の先生1名と、2名体制で診療にあたっています。お産の件数は年間200件強です。 |
2014年
福島県立医科大学 卒業
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