A6: | 炭疽菌(Bacillus anthracis)は、以下の抗菌薬に感受性がある。
ペニシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、ニューキノロン。
なお、日本医師会ホームページ上のCDC 10月17日付け肺炭疽症の暫定的予防投与ガイドライン、米国疾病管理センター:CDCの10月26日付け肺炭疽症、咽頭、消化器炭疽症および皮膚炭疽症の治療のためのガイドライン日本語要旨を参照のこと
この部分の記載は、
1. | www.bt.cdc.gov |
2. | www.uptodate.com ( LaForce FM, Clinical features and treatment of anthrax) |
3. | Lew DP. Bacillus anthracis (Anthrax). In Mandell, Douglas and Bennett (eds). Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 5th edition. New York, USA: Churchill Livingston; 2000. p. 2215-2220 (ISBN: 0-443-07524-7) |
4. | Dixon TC, Meselson M, Guillemin J, and Hanna P. Anthrax. N Engl J Med. 1999;341:815-826 |
5. | The Sanford Guide to Antimicrobial Therapy 2000 13th edition. Hyde Park, VT, USA: Antimicrobial Therapy. Inc.; 2000. p.30 (ISBN: 0-933775-43-1) |
6. | USAMRIID's Medical Management of Biological Casualities Handbook. 4th edition. Fredrick, Maryland, USA: US Army Medical Research Institute of Infectious Diseases. 2001 |
7. | Inglesby TV, Henderson DA, Bartlett JG, Ascher MS, Eitzen E, Friedlander AM, and et al. Anthrax as a biological weapon. Medical and Public Health Management. JAMA. 1999;281:1735-45. |
8. | U.S. Department of Health and Human Services. Update: Investigation of anthrax association with intentional exposure and interim public health guidelines, October 2001. Morbidity and Mortality Weekly Report 2001;50:889-897 |
を参考にした。
そのため、我が国の保険適応範囲でないことがあることに注意が必要である。
炭疽症(Anthrax)の治療は、大きく、炭疽症(Anthrax)が疑われる段階の初期治療(empirical therapy)、確定診断がつき感受性も判明している場合の治療(specific therapy)、さらに、暴露後の発症を予防するための予防的投薬(とくに肺炭疽症)の3つに分けられる。
1.初期治療は、上記文献では、次のように推奨されている。
炭疽症が確定し、感受性検査結果が判明するまでは、
大人:シプロフロキサシン 400mg 静注で12時間ごと
子供:シプロフロキサシン 1日20-30mg/kg静注で、2回にわけて
2.確定診断後の治療
皮膚、肺、咽頭、消化器で以下のようになっている。
大多数の炭疽菌は、ペニシリンに感受性があるため、第一選択薬はペニシリンである。
しかしながら、1992年、1997年には、Lancet.1992;340:306-7, Lancet. 1997;349:1522などにペニシリン耐性の炭疽菌が報告されている。
なお、ペニシリンGの用量は、
200万単位を3時間ごと、400万単位を4−6時間ごと、などと文献により違いがあるが、1日の総投与量は、1600万単位から2400万単位で大量投与である必要がある。また、投与頻度の違いは、薬物動態の関係で、ペニシリンの半減期が短いため、常に高い血中濃度を保持することと、実際の看護上のマンパワーの問題などによるためで、このようにいくらかの投与方法があるのである。
1)皮膚炭疽症
* | ペニシリンG 200万単位を3時間ごとに静注(一日1600万単位投与、分8)を5−7日間。(期間については、現在確立しておらず、7−10日を推奨する文献も上記にある) |
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付記:上記参考文献6,7では、期間については、バイオテロリズムという状況下では、皮膚病変のみでも、炭疽菌を吸引した可能性を否定できないため、治療期間60日を推奨している。その場合、症状が回復すれば、静脈注射から経口薬へ変え、合計60日間を終了するよう推奨されている。 |
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ペニシリンの代替薬としては、 |
* | ドキシサイクリン 100mgを12時間ごとに静注(8歳以上かつ体重45 kg以上は成人量を使用、8歳以上かつ体重45 kg未満では、一回量2.2 mg/kgを一日2回、8歳以下では、一回量2.2 mg/kg を一日2回を使用)注:日本国内では、静脈注射薬は製造されていない。 |
* | エリスロマイシン 500mg を6時間ごとに静注(一日2000mg投与、分4) |
* | シプロフロキサシン 400mgを12時間ごとに静注 |
* | 子供の場合、12歳未満では、ペニシリンG 5万単位/kgを6時間ごと |
* | 12歳以上の子供は、ペニシリンG 200万単位を3時間ごと |
* | また、子供の場合も、シプロフロキサシンの使用(1日20-30mg/kg静注で、2回にわけて)がやむを得ない場合がある |
2)肺炭疽症
死亡率がほぼ100%。
* | ペニシリンG 200万単位を3時間ごとに静注。(一日1600万単位投与、分8)を5−7日間。 |
期間については、高死亡率のため確立してはいない。
上記のNew England Journal of Medicineでは、非常に高い死亡率であるが、回復した場合には、症状がなくなってから少なくとも14日間は投与を継続することと記載されている。また、上記参考文献6、7では、期間については、バイオテロリズムという状況下では、治療期間60日を推奨している。その場合、症状が回復すれば、静脈注射から経口薬へ変え、合計60日間を終了するよう推奨されている。 |
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ペニシリンの代替薬としては、 |
* | ドキシサイクリン 100mgを12時間ごとに静注 (8歳以上かつ体重45 kg以上は成人量を使用、8歳以上かつ体重45 kg未満では、一回量2.2 mg/kgを一日2回、8歳以下では、一回量2.2 mg/kg を一日2回を使用)注:日本国内では、静脈注射薬は製造されていない。 |
* | エリスロマイシン 500mg を6時間ごとに静注(一日2000mg投与、分4) |
* | シプロフロキサシン 400mgを12時間ごとに静注 |
* | 子供の場合、12歳未満では、ペニシリンG 5万単位/kgを6時間ごと |
* | 12歳以上の子供は、ペニシリンG 200万単位を3時間ごと |
* | また、子供の場合も、シプロフロキサシンの使用(1日20-30mg/kg静注で、2回にわけて)がやむを得ない場合がある |
暴露後の予防:実際に暴露した後(炭疽菌を吸い込んだ可能性の後)は、どうするか?
米国食医薬品庁(Food and Drug Administration)は、
シプロフロキサシン 500mgを1日2回(1000mg、分2)経口、
または、400mgを12時間ごとに静注。(800mg、分2)を推奨している。
子供の場合も、シプロフロキサシン 1日20-30 mg/kg を2回に分けて使用する。
代替薬としては、ドキシサイクリン100mg経口で1日2回 (200mg 分2)が推奨されている。子供の用量は、経口で、8歳以上かつ体重45 kg以上は成人量を使用、8歳以上かつ体重45 kg未満では、一回量2.2 mg/kgを一日2回、8歳以下では、一回量2.2 mg/kg を一日2回を使用 注:日本国内では、静脈注射薬は製造されていない。
*予防投与期間は、60日間である。
3)咽頭、消化器炭疽症
現在、十分な臨床データが存在していない。そのため、皮膚病変と同様に、ペニシリンG 200万単位を3時間ごとに静注(一日1600万単位投与、分8)が推奨されている。
期間については、高死亡率のため確立してはいない。
上記のNew England Journal of Medicineでは、非常に高い死亡率であるが、回復した場合には、症状がなくなってから少なくとも14日間は投与を継続することと記載されている。上記参考文献6、7では、期間については、バイオテロリズムという状況下では、治療期間60日を推奨している。その場合、症状が回復すれば、静脈注射から経口薬へ変え、合計60日間を終了するよう推奨されている。
ペニシリンの代替薬としては、 |
* | ドキシサイクリン 100mgを12時間ごとに静注 (8歳以上かつ体重45 kg以上は成人量を使用、8歳以上かつ体重45 kg未満では、一回量2.2 mg/kgを一日2回、8歳以下では、一回量2.2 mg/kg を一日2回を使用)注:日本国内では、静脈注射薬は製造されていない。 |
* | エリスロマイシン 500mg を6時間ごとに静注。(一日2000mg投与、分4) |
* | シプロフロキサシン 400mgを12時間ごとに静注。 |
* | 子供の場合、12歳未満では、ペニシリンG 5万単位/kgを6時間ごと |
* | 12歳以上の子供は、ペニシリンG 200万単位を3時間ごと |
* | また、子供の場合も、シプロフロキサシンの使用(1日20-30mg/kg静注で、2回にわけて)がやむを得ない場合がある |
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