この10年あまりの間に、私は4回の入院を余儀なくさせられた。最もつらかったのはうつ病だった。3ヵ月の入院中、親友から病院あてに手紙をもらった。「自分も重いうつ病になったが、これは辛かった。しかし、あと一息で、辛がプラス一で幸になる」とあった。これを見た瞬間、“処方せん”にない薬と思った。
健康を害し続けたためか、女房は、自らのそれにまで目が届かず、8年前、末期の子宮がんが発見。執刀医は手術前、私に、「不良がヤクザにならぬよう更生させます」とおっしゃった。「大手術になります」といわれたら、家族は落ち着きを失ってしまう。名言である。
どんな名医でも、この手術は排尿をつかさどる神経に触れがちなので、自力で尿ができなくなることがあるという。そんな時、看護師さんが代わる代わる現れて、導尿の処置をしてくれた。
病気ばかり看て病人を見ない医者もいることを考えると、患者への医療関係者の言動は、とても大切だと痛感させられた。
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