健康交差点No.53 エッセー 診察室から 前号 目次 次号
食と健康
芝田山 康(第62代横綱・大乃国)

 ここ最近では、力士になる新弟子が減少している。現代社会において厳しいといわれる相撲界。義務教育を終えて入門してくる子どもたちの体は大きい。しかし、体力は、私たちが入門した(今から26年前)頃から見て、減少していると思う。そこには、さまざまな原因があるが、第一に食生活、食材のなかに油分を多く含むスナック菓子やできあいの惣菜。お手軽で使いやすいが、高カロリー高タンパク。

 最近では、成人病の低年齢化が進んでいるという。私自身も子どもの頃から腹いっぱい何でも食べていたが、そのエネルギーを野外での遊びのなかで燃焼し、また、体力も付けてきた。ここ数年前から子どもたちの遊びは、もっぱら室内での遊びに変わってきている。体のなかに溜まったカロリーを燃焼せず、体を動かさないために、体力の減少や病気の原因になっているのであろう。

 最近、私の食事は野菜や魚が中心で、年齢と共に肉料理は少なくなっている。

 一家の食卓を預かっているお母さんには、自ら手を掛けた料理を子どもたちに与えてあげてほしい。そして、子どもたちも室内でのテレビゲームなどの遊びではなく、野外で体を動かし、いい汗を流して、成人病の予防と体力の向上に努めてほしい。

診察室から 日本の医療制度について(4)

 医療・教育などの社会的共通資本については、その基盤整備に国が責任を持つべきだと考えます。国民が健康で、安心して住める社会を作ることは国の責務です。

 現在、一部の経済界の人たちによって、経済優先の政策が進められています。経済の分野においては、市場原理に基づく競争原理がきわめて有効に作用しますが、その市場経済の欠点を補うのが社会保障の考え方です。社会保障を否定することは、市場経済そのものの崩壊を招きかねません。

 国民の健康があってこそ国民の幸せがあり、それが国の経済を支えているのです。国民一人ひとりが、そのあり方を議論して、より良い日本を築き上げていく必要があります。

前号 目次 次号

Copyright © 2002 Japan Medical Association. All rights reserved.