「ラグビーは紳士のスポーツって言うけど本当かい? 信じられねぇなぁ。あんなデカイ男達がぶつかり合って時には人を踏んづけてさ。うちのカミさんも本当に紳士のスポーツかいって言ってるよ」
べらめぇ口調のK委員がラグビー経験者のN委員長に問い掛けた。
4時間にも及ぶ「心に残る医療体験記コンクール」第二次審査が終了した時だった。
突然の問いに言葉に詰まったN委員長ではあったが、真面目なお人柄ゆえ事務局が審査の最終集計をしている短時間にレポートを書いた。
〈ラグビースピリッツ〉
(1)One for all、All for one精神(2)レフリーの判定には絶対服従(3)攻撃・タックルはボールを持っている者にだけ(4)ラフプレイの禁止(5)試合が終わればノーサイドの精神。等々箇条書き。
「う~ん、でもなぁ」レポートを読んでもまだまだ納得しないK委員。
その時横から口を挟んだKo副委員長。
「デカイ男達が野獣のような溢れんばかりのエネルギーを互いにぶつけ合って戦い、その後にようやく大人しくなるんです」
「その戦いのために心と体を鍛えている」とN委員長が付け加えた。
「へーっ、なるほどね。紳士というより中世ヨーロッパのknightだね。knightを日本人は騎士と訳しているけど本当は侍だぜ。そうか、knightになるためのスポーツ。それがラグビーかい」
さすが博識なK委員、納得して頂けたでしょうか。
心と体を鍛えて戦った嘗(かつ)ての白衣のラガーマン達。
きっとknight・侍になっていることでしょうね。
(なまはげ)