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平成28年(2016年)3月5日(土) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

新たな専門医の仕組みに懸念を表明

 横倉義武会長は2月17日、記者会見を行い、翌18日開催の第44回社会保障審議会医療部会で、「新たな専門医の仕組みの準備状況」について議論される予定であることを踏まえ、改めて日医の考え方と専門医研修のあるべき姿の方向性について説明した。

 冒頭、同会長は、日本専門医機構(以下、専門医機構)の役割は、学問的・学術的な見地から専門医の認定評価の標準化を行うことであり、日医の役割は、地域医療や医療政策を始めとする医療提供体制全般について責任を持つことであると強調。

 その上で、10日に中医協の答申が行われたことに触れ、平成30年度の、医療と介護の同時改定、同じく同時改定となる医療計画と介護保険事業(支援)計画の開始に向けてさまざまな改革を進めていかなければならず、地域包括ケアシステムの推進に向けては、高齢化による疾病構造の変化に対応し、急性期後の受け皿病床の整備と充実を促す取り組みが求められていると指摘。一方、現在検討されている専門医の仕組みでは、高度急性期機能、急性期機能を担う医師に重点を置いた研修が必要とされているため、今後需要が増大する回復期、慢性期への医師の配置が薄くなる恐れがあり、医療提供体制の中心となる地域包括ケアシステムの推進と新しい専門医の仕組みとの間に生じている齟齬(そご)に、各地域から不安の声が多く上がっているだけでなく、専門医の研修を行う医師、いわゆる「専攻医」が大都市の急性期医療機関に集中することによって、地域偏在が拡大する懸念も極めて強くなっているとした。

 更に同会長は、医師の確保が困難な地域が多い現状で、平成29年度から新たな専門医の仕組みが始まれば、地域包括ケアシステム推進のための人材確保は一層困難になるとの懸念を示し、「新しい専門医の仕組みが地域包括ケアシステムの構築の阻害要因となってはならない。急激な見直しによる医療現場の混乱で、最終的に不利益を受けるのは患者さんであり国民である」と指摘した。

 また、専門医機構と各基本領域学会の関係性についても言及し、専門医を認定する実質的な能力があるのはその学会だけであり、国民医療に資するためには、各基本領域学会の専門医の認定過程を専門医機構が透明性を担保することが最も重要だとし、関係者間での更なる議論を求めた。

 最後に横倉会長は、地域医療と専門医の仕組みを整合させるためには、日医と専門医機構、各学会の緊密な連携が必要であり、プログラム作成や地域医療に配慮した病院群の設定等を行うに当たっては、それぞれの地域において都道府県行政、大学、病院、医師会等の関係者が協議・連携することが不可欠であるとした上で、「1月に通知がなされたものの、現状ではまだ機能が十分ではない」と述べ、「日医としては、病院群の設定について地域の取り組みを先行して行うべきと考えており、新たな専門医の仕組みについては平成29年からとされている導入時期の延長も視野に入れ、まずは地域の連携状況を把握し、地域における研修体制の整備を優先し、地域医療への影響を極力少なくして専門医研修を始めることを望みたい」と強調した。

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