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平成28年(2016年)2月20日(土) / 日医ニュース

日本人のバランス感覚

 「バランス感覚」という定義は人によりその捉え方が異なるため、なかなか共通認識とすることが難しい。
 ある意見に対して人はさまざまな考え方を持ち、それぞれに発言するが、その意見や発言を集約する際、どの視点でまとめ上げるかを決定しなければならない局面に、しばしば遭遇する。
 明らかな対立軸が存在していても、どこかに落とし所を見出さなければならない時、このバランス感覚いかんによって結論は大きく様変わりしてしまうということも大いに起こり得る。
 日本人は「まあまあ」とか「程々」という感覚を強く持ち合わせている民族であるが故に、「まあこの辺りで」ということをバランス感覚と勘違いしている節があるように思える。
 均衡を取ることが目的ではなく、ある目的をもって一定の判断基準に基づいて絶妙の調和を図るという意味において、"中庸の徳"という『礼記』由来の言葉があるが、これもややもすると、単にバランスを取ることと解釈されやすい。
 恐らく日本人は他民族のような唯一絶対神的な宗教や価値観を持ち合わせていないことがその大きな理由ではないかと愚推する。
 そのため、世論に流されやすく、議論がいとも簡単に180度変化することも度々経験してきているが、それでも諸外国を見ていると日本人の立ち振る舞いはバランスがいいと感じるのは身内びいきであろうか?
 絶対的な価値観を持たず、八百万の神を信仰するわが国が今後どのような国になるのか? 楽しみである。バランス感覚......言葉は難しい......。

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