横倉会長(左)、司会の傍示西日本新聞社東京編集長
横倉会長(左)、司会の傍示西日本新聞社東京編集長
横倉義武会長は昨年12月9日、日本記者クラブの昼食会に招かれ、「次期世界医師会長の就任に当たって」と題して講演を行った。
日本記者クラブは、1969年にわが国の主要な新聞、通信、放送各社が協力して設立したナショナル・プレスクラブであり、横倉会長が講演するのは、会長就任以来4回目となる。
横倉会長は、まず、世界医師会(WMA)の目的や主な活動について解説した上で、WMAとしての喫緊の課題として、「危機にさらされる医療」「気候変動」「健康の社会的決定要因の問題」などがあると指摘。
今後については、「その解決に努めるとともに、日本の優れた医療制度を世界に発信することにより、世界中の人々の幸福の実現に貢献していきたい」と述べた。
日医が取り組む施策については、国際経済の先行きが不透明な状況で、国民の不安が高まっている今こそ、セーフティーネットとしての社会保障、特に必要な時に安心して医療を受けることのできる国民皆保険をしっかりと堅持していくことが重要になると考えていると説明。
昨今の医療費を巡る問題に関しては、①「医療・福祉」が誘発する雇用はかなり高い水準にあり、医療に財源を投入すれば経済成長を促し、地方創生への多大な貢献にもつながる②医療機関の費用に占める人件費の割合は、医療用消耗品にかかる費用の上昇などにより低下してきている―ことなどを紹介。引き続き、これらのことを政府与党等に説明し、理解を求めていくとした。
その上で、国の財政状況が非常に厳しい中で国民皆保険を堅持していくためには、財政主導ではなく、我々医療側からも、過不足ない医療提供ができる適切な医療(例えば、生涯保健事業の体系化による健康寿命の延伸)を提言していくべきであると強調。昨今問題となっている高額薬剤の問題に関しては、公的医療保険制度を維持しつつ、必要としている患者に新しい医薬品を使用していくことのできる環境をつくっていくことが必要になるとの考えを示した。
また、健康寿命の延伸を図り、元気な高齢者が活躍できる社会を実現するためにも「かかりつけ医」の果たす役割が重要になるとし、日医としても、かかりつけ医機能の維持・向上のため、「日医かかりつけ医機能研修制度」を開始したことなどを紹介した。
「かかりつけ医」を持つ効果としては、①「かかりつけ医」がいる人は受けた医療に対する満足度が高く、健診の受診率も高い②自身の健康を意識できるだけでなく、健診を受けて健康状態を把握することで、適切な保健指導・医療介入につなげることができる―ことなどを挙げ、「国民には、健診・検診などで身近な医療機関を受診することなどをきっかけとして、ぜひ『かかりつけ医』を持って欲しい」と述べた。
なお、講演の模様は、日本記者クラブのホームページを参照されたい。