医師偏在対策を議論している厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」の構成員でもある権丈善一慶應義塾大学商学部教授の著書『ちょっと気になる医療と介護』に、分科会での次の発言が載っている。
「医師の地域偏在を緩和する手段が無いわけではないんですね。WHOが2010年に報告書を出して、医師偏在が問題になっている国において医学教育への介入が不可欠と言っています。それは医学部に地方出身者を優遇すべしということです。日本では地域枠の学生が1644人で、うち地元枠は810人の約49%です。これを100%にすれば医師偏在問題は緩和します。......今後も地域枠に限って臨時増員を許している入学者定員を地元枠に限るという方法は合目的です」
また、地方出身であることは、卒業生が地方に戻ってきて診療を行う可能性を増大させるというエビデンスも示している。ノルウェー北部(都会ではない)トロムソ大学医学部の卒業生の北部ノルウェーへの定着率を見ると北部出身者の定着率は82%台、これに対し南部出身者の定着率は30%台に過ぎない。
医師の強制配置による偏在対策などを医療界の人間が支持するのは管理医療を自らが推進することになる。それよりは地元枠にもっと目を向けてもらいたいものだ。鮭は生まれた川、母川に回帰する。
(撥)