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平成29年(2017年)6月5日(月) / 日医ニュース

「新たな専門医の仕組みづくり」「第7次医療計画」をテーマに集中討議

「新たな専門医の仕組みづくり」「第7次医療計画」をテーマに集中討議

「新たな専門医の仕組みづくり」「第7次医療計画」をテーマに集中討議

 平成29年度第1回都道府県医師会長協議会が5月16日、日医会館大講堂で開催された。
 当日は、「新たな専門医の仕組みづくり」「地域医療構想を含む第7次医療計画」の2点について集中討議を行った他、日医から6つの事項について説明し、協力を求めた。

会長あいさつ

 今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした横倉義武会長は、まず、今回テーマを絞った討議となった理由について、「今後、議論が一層深化していくことが見込まれ、日医として医療提供体制全般に責任を持つ立場から、現場感覚に即した主張を行っていきたいと考えたからである」と説明した。
 「専門医」については、かかりつけ医とは明確に分けて捉えるべきであり、全ての医師が専門医にならなければならない理由はないと指摘。また、総合診療専門医の養成に関しては、学術的にも高いレベルが担保されるよう、引き続き求めていくとした。
 「第7次医療計画」に関しては、都道府県医師会が郡市区等医師会と密に連携しながら、PDCAサイクルに主体的に関わり、管内の各地域の実情を十分に反映していくことが重要になると強調。厚生労働省は、「医師偏在対策のうち法改正を伴わないものについては、第7次医療計画に盛り込めるよう、検討を進めていく」としていることから、医師の偏在対策が地域医療の現状を踏まえた適切な形で行われるよう、引き続き関係会議等で強く主張していくとした。
 その上で、横倉会長は、「専門医や地域における医療提供体制の在り方については、医師自らが自主性と自律性を正しく発揮する中で、主体的に考えていくべき問題である。本日頂いた意見を収斂(しゅうれん)していくことで、今後の会務運営に反映していきたいと考えているので、忌憚(きたん)のない意見を聞かせて欲しい」と述べた。

新たな専門医の仕組み

 まず、羽鳥裕常任理事が、「専門医のしくみの現状と課題」という資料を基に、検討経緯などを概説した。
 続いて、松原謙二副会長が、専門医の議論の背景にある問題として、新医師臨床研修制度の実施により、研修医が大都市に集中するようになってしまったこと、診療領域における過度な専門分化によって、全人的な対応ができる医師が減ったことを挙げた上で、「国が専門医の定数を決めて強制的に配置することなどがあってはならず、日医は医師がプロフェッショナルオートノミーを発揮できるよう、日本専門医機構に加わって検討している」と説明。
 厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」より、専門医の取得が義務づけではないことの明示や、女性医師等に配慮したカリキュラム制の設置、研修は大学病院だけでなく、地域の中核病院等も一体となって行うことについての明確化などが求められていることから、今後、日本専門医機構の理事会で新整備指針・運用細則等の見直しを行っていくとした。
 また、懸念が多く示されている総合診療専門医に関しては、「あくまでも学術的な評価であって、制度的な評価ではない。日医が推進しているかかりつけ医とは全く別のものである」とし、かつての家庭医構想とも異なることを強調。総合診療専門医の育成については、内科研修を1年、小児科・救急医療をそれぞれ3カ月経た上で、規模の大きな病院で総合診療研修を6カ月行い、更に中小病院や診療所でも6カ月研修を積むことで在宅にも対応できるようにする方針であるとし、へき地、離島など、医療資源の乏しい地域では、多科にわたって対応することが求められることから、3年目の中小病院等での研修においては、へき地での研修を勧める制度とする予定であると解説した。
 その上で、同副会長は、「多科にわたるさまざまなことに対応でき、総合内科として全体を診られる医師を育てていく」「内科と総合診療科は対立するものではなく、オーバーラップしたものになる」と述べ、理解を求めた。
 都道府県医師会から事前に寄せられた質問には、羽鳥常任理事が回答した。
 専門医の処遇については、原則研修を行う施設が負担することになっており、当該施設が責任を持つことになるが、連携施設が自治体病院の場合には公務員としての短期間雇用となるなどの問題もあることから、学会等で柔軟に対応すべきとの考えを示した。
 プログラム制への移行が地域偏在を助長させるとして、全国一律のルールで、日医、厚労省、日本専門医機構が一体となり、専門医の配置を行ってはどうかとの提案については、その実施のためには、市町村単位での専門医・非専門医の分布や地域の人口の把握を行うことが不可欠であると指摘。その上で、新たな専門医の仕組みが地域医療に影響を与えないよう、引き続き注意を払っていくとした。
 総合診療専門医については、現在議論が行われているところであるが、都市部への集中を防ぐため、医療資源の乏しい所で研修を行うことが条件になる予定と説明。また、病院団体が独自で養成する専門医との違いについては、「病院団体は病院としての総合医を養成することを目的としていると聞いており、競合するものではないと理解している」とした上で、「総合診療専門医は医師の生涯にわたる自己研鑚(けんさん)の一手段であり、学問的な評価として位置づけられる」と述べ、理解を求めた。
 共通講習については、「医療安全」「感染対策」「医療倫理」を専門医においても必ず履修すべきと考えているとして、都道府県医師会に協力を求めるとともに、日医としてもe-Learningシステムを構築する意向を示した。
 また、専門医の資格の取得を希望しているのは、いわゆるサブスペシャリティではないかとの指摘には、これに同意した上で、これまでの経緯を説明。専門医制度整備指針・運用細則において、今後のサブスペシャリティ領域の専門医については、①基本領域学会とサブスペシャリティ領域学会とが共同で検討委員会を設置し検討する②基本領域学会の了解の下、専門医機構に申請する③専門医機構は関連委員会で妥当性を検証し、理事会に諮る―とされているとし、「このような過程を経ることで、専門性と質の担保を図っていきたい」と述べた。

第7次医療計画(地域医療構想を含む)

 初めに、釜萢敏常任理事が、本年3月末までに全ての都道府県において地域医療構想が策定されたとして、都道府県医師会の尽力に感謝の意を示すとともに、第7次医療計画に対するこれまでの日医の取り組みについて改めて説明。現在、会内の「地域医療対策委員会」並びに「病院委員会」で、医師会としていかに関わっていくかについて議論を行っていることを報告した他、日医の強い要請により、厚労省主催の都道府県庁行政職員を対象とした地域医療計画の講習会(5月19日開催)に、医師会の関係者も参加可能となったことが紹介された。
 その後は、日医の見解を問う質問に対して、釜萢・市川朝洋両常任理事から、(1)地域医療構想、(2)地域包括ケアシステム、(3)5疾病5事業・在宅医療―の3つの内容に分けて、それぞれ回答を行った。

(1)地域医療構想について

 「地域で最善の医療が受けられ、地域医療の最適化のための医療計画を策定し、長期的な視点を持って課題を解決する必要がある」との意見に対して、釜萢常任理事は賛意を示すとともに、厚労省の関係通知では、①医療連携体制を検討する作業部会には地域医師会がメンバーとして参加する②保健所が圏域ごとに関係者の具体的な連携等について協議する「圏域連携会議」を主催する時は、地域医師会等と連携する―こと等が明示されるなど、都道府県医師会が中心となって、地域の実情に応じた医療計画を策定できる制度設計であると説明した。
 一方、4月12日の経済財政諮問会議における塩崎恭久厚労大臣提出資料に、地域医療構想と診療報酬・介護報酬を関連づけるような記述が見られたことに関しては、日医として、厚労省医政局に対して厳しく問題点を指摘したとした上で、実際の発言は、「『病床の機能分化・連携を進めるため、診療報酬・介護報酬改定での後押しをする』という趣旨であり、地域医療構想と診療報酬を直結させるものではない」との見解を示すとともに、「こうした資料から誤った理解が広がる懸念は重大であり、今後も厳しく監視していく」とした。
 在宅医療等への対応については、「厚労省が新たな在宅医療等サービスの必要量を30万人と推計しているが、この数字は追加的に対応が必要な患者数であり、そもそも機械的に計算した結果に過ぎない」と指摘。病床を削減し、強制的に入院患者を在宅に移行させるものではないことを改めて強調した上で、追加的に必要となる量を全て在宅医療でカバーするということではなく、外来や介護保険サービス等との組み合わせで、地域ごとに対応する量を決めていくことになるとした。
 また、地域医療構想における経営的視点への配慮を求める意見に対しては、「四つの病床機能のいずれを選択しても、経営が成り立つようにすることが重要である」との考えを示した。
 地域での病床の必要量の調整、基準病床数、新類型への誘導については、「住民や医療機関に過度の負担を課さないことが大原則」との考えを示し、厚労省に対し、①必要病床数の全国集計は参考値であること②都道府県知事には稼動している病床を削減させる権限は存在しないこと―を重ねて確認する等、徹底的に対応した結果、厚労省医政局地域医療計画課長名で、その旨の文書が発出(平成27年6月)されていることを改めて報告。
 更に、公立病院に関しては、4月20日の社会保障審議会医療部会において、「新公立病院改革ガイドラインに従うべき」と主張し、公立病院以外の公的医療機関や国立病院機構、労災病院、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)などについても、同様のガイドラインを策定するよう要求しているとした他、新類型の「介護医療院」に関しては、療養病床を持つ医療機関にとって、魅力的な選択肢の一つとなるよう、今後も社会保障審議会介護給付費分科会等で積極的に働き掛けていくとした。
 医療従事者の確保・偏在是正に向けた具体的な方針に関する問いには、今後、追加の通知が出される予定であるとした上で、これまで日本の医療政策は、審議会や検討会を通した合意形成過程を経て決められてきたにもかかわらず、非公開の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が設置されたことで、各都道府県や現場レベルで大混乱が起きているとして、日医から抗議したことを報告。引き続き、強力な働き掛けを行っていくとした。
 「患者像に見合った看護師配置」の展望と、将来必要な人数、育成方針についての見解、県境を越えた人材育成制度の可能性については、平成30年以降の需給見通しは、地域医療構想、医療計画と整合性をもった形で策定していく方針になっていることを説明。「地域医療介護総合確保基金を地域の医療・介護関係者の養成・確保に十分活用できるよう、引き続き国に要請していく」と述べるとともに、何かあれば具体的に相談して欲しいとした。

(2)地域包括ケアシステムについて

 地域包括ケアシステムの対象者については、「高齢者が主体になることは当然ながらも、障害を持った子どもや若年者も、広く対象に含むべき」との日医の考えを説明。その上で、医療的ケアが必要な障害児に関しては、「保健、医療、福祉に加えて、保育や教育関係者との連携が不可欠であり、高齢者のための地域包括ケアシステムを参考に、障害を持った子どもや若年者が、できるだけ住み慣れた地域で希望を持って暮らしていけるよう、柔軟に多職種連携や施設体系の構築を推進する施策を検討していくべき」とし、検討の際には格差が生じないよう留意しつつ、地域の実情に応じることが必要とした。
 また、本年1月、会内に「小児在宅ケア検討委員会(プロジェクト)」を設置したことを報告し、「全国各地でさまざまな世代の地域包括ケアシステムを構築し、充実させていくことが日医の役割である」と述べた。
 更に、フレイルドミノ防止対策等の強化については、今回の医療計画の見直しにおいて、①ロコモティブシンドローム、フレイル、大腿骨頸部骨折対策の重要性や、予防・医療・介護の総合的な取り組みが作成指針に追加された②医療計画と介護保険事業計画との整合性の強化に向け、双方の関係者による協議の場が設けられる―こと等を紹介した。

(3)5疾病5事業・在宅医療について

 市川常任理事は、各医療機能を担う医療機関等の名称を原則記載することについて、病院名を記載することで病床機能が限定されてしまうのではないかとの危惧に対しては、病院や診療所、訪問看護ステーションなど、施設単位で疾病・事業ごとに医療提供体制をつくっていくという趣旨であり、それに縛られるものではないとの見解を表明。また、医療計画にCOPDと喫煙について記載すべきとの意見に関しては、各都道府県で医療計画に記載することは可能との考えを示した。

その他

 その他、当日は日医より、①受動喫煙の防止対策を強化・実現するための署名②日医医賠責保険制度改定に伴う日医会費の改定③支援団体等連絡協議会運営事業④第6回「日本医師会 赤ひげ大賞」候補者推薦⑤日本医師会かかりつけ医糖尿病データベース研究事業(J-DOME)⑥『日医雑誌』・『日医ニュース』の提供方法に関するアンケート―の6点について、説明を行った。
 ①については羽鳥常任理事が、「国民の健康を守るためにも、日医の力でより多くの署名を集めたい」として協力を要請別記事参照。②については、市川常任理事が、組織強化の観点から、A(2)会員(B)及びA(2)会員(C)の保険料を引き下げることとしたと説明。正式には6月25日に開催する第140回日医定例代議員会での承認後、来年4月から実施することになるとした。
 ③に関しては、今村常任理事が、医療事故調査に必要な支援を行う医療事故調査等支援団体間の情報共有等を図るために設置される支援団体等連絡協議会の運営等に必要な経費として、厚労省が9226万9千円を確保し、その委託先が日医になったことを報告。各協議会からの申請に基づき、経費の支払いをすることになるが、詳細が決まり次第、文書で通知するとした。
 ④については、道永麻里常任理事が、5月16日付で推薦要綱を都道府県医師会長宛てに送付したことを説明。「本賞は都道府県医師会の推薦があって初めて成り立つものであり、ぜひ候補者の推薦をお願いしたい」と述べた別記事参照
 ⑤に関しては、石川広己常任理事が、本事業は、糖尿病診療の向上を目指して、患者が最初に診療を受ける診療所で全国的な糖尿病症例収集を行うものであるとして、その内容を概説し、協力を求めた別記事参照
 ⑥については、温泉川梅代常任理事が、会員の電子化の要望等に応えるとともに、日医の財政の健全化の観点からアンケート調査をしているとし、「回収率を上げるためにも、ぜひ協力して欲しい」と述べた。

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