大学医学部・医学会女性医師支援担当者連絡会が9月29日、「よりよい男女共同参画を目指して」をテーマに日医会館大講堂で開催された。
同連絡会は、日医女性医師支援センター(以下、支援センター)が平成25年度から事業計画として掲げたもので、日医における女性医師支援・男女共同参画に関する取り組みの周知と各大学医学部及び各医学会の取り組みについての情報交換を目的に開催されているものである。
今村定臣常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、女性医師バンクが昨年10月の体制変更後、広報活動の強化や都道府県医師会の支援により、これまで以上の成果を上げていることを紹介。「今日の日本社会はかつてないほど『女性の力』の活用が重視され、その能力を余すことなく発揮することが期待されている。女性医師活躍の環境整備は医療を望ましい方向へ発展させるために必要不可欠であり、日医としてその実現に向けてこれまで以上に注力していく」との考えを示した。
続いてあいさつした門田守人日本医学会長/日本医学会連合会長は、「日本医学会の役員23名中女性は1名であるが、数の問題ではなく協力体制など実質的な内容から変えていくことが必要」と述べるとともに、本年6月、日本医学会長に就任したことについて触れ、「日医と日本医学会は車の両輪として、これまでと変わらずそれぞれの特徴を生かした活動を行っていく」とした。
その後、議事に入り、今村常任理事が、日医の女性医師支援に関する取り組みとして、女性医師バンクによる就業継続、復帰支援(再研修含む)など、現状を説明した上で、都道府県医師会との連携強化に向けて、女性医師バンクのホームページ内に都道府県医師会専用ページを開設することやそのメリットを紹介。「全国ネットワークを構築することで、より効果的な女性医師支援体制の強化を目指していく」として、その活用を求めた。
続いて、上家和子日医総研主席研究員が、全国の病院勤務女性医師の現況を詳細に把握することを目的に、日医男女共同参画委員会と支援センターが共同で実施した「女性医師の勤務環境の現況に関する調査」について、結果概要の報告を行った(別記事参照)。
取り組み事例発表
次に、2大学2学会より取り組み事例の発表が行われた。
片岡仁美岡山大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療人材育成講座教授は、県の委託事業「MUSCATプロジェクト」の取り組みの一環として、従来の定員外の増員枠を自分で働く時間・日数を決められる"女性支援枠"とするなど、柔軟な働き方を可能とした「岡山大学病院キャリア支援制度」を紹介。この10年間で120名弱の復職支援終了者の56%が地域の医療機関に勤務し、医師偏在等の解消に貢献しているとして、「今後は、学内だけでなく、さまざまな地域で活動を行い、より良い医療の提供に貢献していきたい」と述べた。
石川由紀子自治医科大学地域医療学センター総合診療部門講師は、医療人の働きやすい勤務環境整備を目的に行っている、(1)就労継続支援・復職支援、(2)育児支援、(3)次世代育成支援―の3つを柱とした、同大学の「医師・研究者キャリア支援センター」の活動を紹介。「就労継続には職場の理解とサポートが最も必要な支援であり、現場の問題の把握や医局・部門との情報交換を行う等、現場の声を大切にした顔の見える関係づくりの促進に努めていく」とした。
名越澄子日本内科学会評議員・男女共同参画ワーキンググループ代表は、2012年に学会内に発足した男女共同参画グループの活動として、①女性評議員の増員②各委員会への少なくとも1名の女性委員の参画③年次講演会の改善(座長・講演者への女性の積極的登用、男女共同参画シンポジウム開催)④新・内科専門医制度研修における育児・介護等に関する特別措置―等を要望していることを報告した上で、④については、男女問わず専門医取得を目指せるよう、引き続き育児・介護・病気などへの配慮を求めていく考えを示した。
中村清吾日本外科学会男女共同参画委員会委員長は、外科、特に手術においては代替が困難な場合もあることから、妊娠・出産・育児中の対策としては、まずは時短勤務の推進が重要だと指摘した。
また、「今後は、専門医取得、単位更新を可能にするなど、e-learningの積極的な活用やITのインフラ整備により、在宅(遠隔)診療への業務参画ができるようになれば、キャリアの継続も可能になるのではないか」と述べ、その実現に期待を寄せた。
その後の意見交換では、さまざまな質問や意見、要望等が寄せられ、連絡会は盛会裏に終了した。
当日は、大学、学会の関係者の他、都道府県医師会の担当役職員ら264名が出席した。