台湾在宅医療学会の一行が2月5日、日医会館を訪問し、研修の一環として小講堂で行われた日本側の在宅医療関係者と意見交換をするための交流集会に参加した。
冒頭、日本側からは横倉義武会長、新田國夫日本在宅ケアアライアンス議長、鈴木邦彦常任理事、小川泰彦大阪梅田ロータリークラブ会長が、台湾側からは余尚儒同学会理事長、彭民雄台北天母ロータリークラブ会長がそれぞれあいさつを行った。
横倉会長は、来訪に歓迎の意を表した上で、日本の国民皆保険はUniversal Health Coverageのあるべきモデルとして高く評価されており、昨年10月の世界医師会長就任演説の中で、わが国の優れた医療システムを世界に発信し、グローバルな健康長寿社会の実現に日本の経験を生かしたいと表明したことに触れた。
また、日医会長に就任以来、「かかりつけ医」の重要性を訴えてきたとし、今後の「多死社会」においても、住み慣れた地域において、「かかりつけ医」を中心に、医療・介護の専門職、行政等の関係者が協力しながら、地域住民を支えていく仕組みとして「地域包括ケアシステム」を構築していくことが重要だと指摘。更に、医師が自ら研鑽(けんさん)し質の向上も図りつつ、現在の地域社会に求められる姿へと変革していくことを目的に「日医かかりつけ医機能研修制度」等の取り組みを行っているとした。
最後に同会長は、今回の研修が、日台両国の親善と在宅医療の推進に寄与することに期待を寄せた。
その後、横倉会長に台湾嘉義市の陶製の記念品及びロータリークラブ旗が授与された。
続いて、「日本の在宅医療~現状・課題・未来~」と題して太田秀樹日本在宅ケアアライアンス共同事務局長が、日本では、人口構造・疾病構造・疾病概念・医療需要等の変化により、医療の役割が"長寿を目指す医療"から"天寿を支える医療"へ、"病院完結型"から"地域完結型"へとパラダイムシフトしたと説明。在宅医療における医療機器等の技術発展や多職種協働についても紹介した。
在宅看護専門看護師である田中道子日本訪問看護財団あすか山訪問看護ステーション所長は、「日本における訪問看護の現状と課題」と題して、訪問看護の現状と「訪問看護アクションプラン2025」について概説した。
余理事長は、「台湾在宅医療の現状」について、1995年から全民健康保険(医療保険)を導入したが、介護保険は未導入であること、台湾総人口2350万人の介護の主役は23万人の外国人ヘルパー(100人に1人)であること、昨年4月に設立した同学会が市民啓発活動「在宅サロン」(在宅医療を考える会)を開始したこと等を説明した。
また、「台湾包括ケアサービス」については、涂心寧居家照顧聯盟理事長が、「台湾介護10年計画2・0」と台北市政府「地域包括ケアサービス(石のスープ)」を中心に解説した。
引き続き行われた討論では、会場から寄せられた質問に各演者が回答。予定時間を大幅に超えて会は終了した。
参加者は、台湾側29名、日本側21名の合計50名で、台湾側の参加者は医師、薬剤師、看護師、MSW(医療ソーシャルワーカー)、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)、栄養士等で、多職種の訪問団は初とのことであった。
その後、一行は6~9日の日程で、静岡県及び神奈川県横須賀市の医師会と行政、都内近郊の医療機関及び訪問看護ステーション等で在宅医療やかかりつけ医活動の視察を行った。