平成29年度都道府県医師会有床診療所担当理事連絡協議会が3月9日、日医会館小講堂で4年ぶりに開催された。
鈴木邦彦常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長は、今後、地域包括ケアシステムを確立していく中で有床診療所(以下、有床診)の活躍が期待されており、国の政策にも反映されてきていると強調。その上で、今回の同時改定は医療と介護の垣根をできるだけ低くしようというものであったとし、2025年に向けて、「かかりつけ医」を中心にそれぞれの地域で必要な医療・介護が受けられるような体制をつくっていくためにも地域医師会に尽力頂きたいとして、更なる協力を求めた。
地域包括ケアシステム構築のために必要な有床診のあり方について
佐々木健厚生労働省医政局地域医療計画課長は、(1)地域医療構想、(2)地域包括ケアシステム構築のために必要な有床診のあり方、(3)医療法施行規則の一部改正(有床診の病床設置にかかる改正)、(4)有床診等スプリンクラー等施設整備事業―について説明。
(1)では、医療機関が「地域医療構想調整会議」で協議を行い、都道府県も「地域医療介護総合確保基金」を活用して機能分化・連携を推進して欲しいとした他、議論の状況を概説した。
(2)では、高齢化の進展や病床の機能分化・連携により在宅医療の需要は大きく増加する見込みであり、有床診が果たす役割は大きいとして、四つの参考事例を紹介した。
(3)では、地域包括ケアシステムを推進する上で、有床診の役割がより一層期待されることから、平成30年4月1日から、病床設置が届出により可能になる診療所の範囲等を見直すとともに、"届出による病床設置の際の医療計画への記載を不要とする"ことになった改正の内容等を説明した。
(4)では、平成30年度予算で200億円を要求しているとして、活用を呼び掛けた。
日医有床診療所委員会答申について
齋藤義郎日医有床診療所委員会委員長(徳島県医師会長)は、会長諮問「次期医療計画及び介護保険事業(支援)計画に向けた有床診のあり方~医療及び介護の一体的推進に向けて~」に対する同委員会の答申について報告した。
答申は、(1)はじめに、(2)地域包括ケアシステムにおける有床診の役割、(3)有床診の専門医療、(4)経営と事業承継、(5)おわりに―からなっており、参考資料として、「平成29年度有床診の現状調査(抜粋)(日医総研)」が添付されている。
齋藤委員長は、医療法施行規則の改正(届出による診療所病床設置の要件緩和)について、有床診の新規開設がスムーズに行われるためには、特例の趣旨、改正の趣旨をきちんと理解することが重要と指摘。地域包括ケアシステムにおける有床診の役割と今後の対応や要望・提言、有床診支援のための都道府県医師会の役割、委員会としての診療報酬改定要望等について解説した。
平成30年度診療報酬改定・介護報酬改定について(有床診療所関係)
鈴木常任理事は、「平成30年度診療報酬改定・介護報酬改定」について、診療報酬改定では、(1)外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の一層の推進、(2)情報通信機能を活用した診療、(3)在宅医療、(4)医療と介護の同時改定、(5)医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価―の五つの柱、介護報酬改定では、(1)介護医療院、(2)訪問リハビリテーション、(3)居宅療養管理指導、(4)通所リハビリテーション―の四つの柱に沿って、主に有床診に関係する改定内容を詳細に説明した。
特に、有床診の地域包括ケアモデル(医療・介護併用モデル)での運用の支援として、介護サービスを提供している有床診について、「入院基本料1から3までの要件緩和」「高齢患者等に対する入院受入れに係る評価を新設」等の改定が行われていることや、「介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準省令」等を挙げ、「今回、有床診は非常に優遇されている」と強調した。
その後は、事前及び当日会場で寄せられた質問に対して、鈴木常任理事、佐々木課長よりそれぞれ回答が行われ、中川俊男副会長の総括により協議会は終了となった。出席者は、TV会議システムでの視聴を含め106名。