病院船「マーシー」
病院船「マーシー」
米国海軍病院船「マーシー(Mercy)」が6月16、17の両日、日本政府の招きで東京港に寄港し、レセプション及びセミナーが行われた。
同船は、ICU80床など計1000床、手術室12室、CTを有し、サンディエゴを母港とする世界最大級の病院船で、これまで1990年の湾岸戦争等の有事の際の出動の他、2004~2005年のインドネシア、スマトラ島沖地震などの自然災害発生時の救護に派遣されている。
その他、2006年からは、パシフィック・パートナーシップに参加し、インド、アジア、太平洋地域を訪問し、各国政府、国際機関等と災害救援活動時の即応体制強化や地域間協力等を図っている。
16日の米国主催の歓迎レセプションには、招待を受けた横倉義武会長、石川広己常任理事が出席。冒頭、ウィリアム・F・ハガディ駐日米国大使による歓迎のあいさつがなされ、会は盛況のうちに終了した。
17日のセミナーには、石川常任理事が、新井悟東京都医師会理事、杉町正光兵庫県医師会理事等、役職員と共にJMATとして参加した。
また、猪口正孝都医副会長も災害医療コーディネーターとして参画した。
セミナーは、船内や各種患者に対するオペレーションを見学、質疑応答を通して、その機能、対応能力、手法を学習し、日本における病院船活用の課題について議論をすることを目的として行われた。
参加者は三つのテーマ(Ⅰ.災害時の病院としての能力、Ⅱ.災害時の運用方法、Ⅲ.平時の運用)ごとに分かれ、石川常任理事は、両医師会の役職員と共に第Ⅰ班に参画した。
当日の午前中は、船内見学が行われ、手術室、CT室、ICU等の設備や運用について説明を受けた。
船室の床、壁には揺れ防止用の固定金具が等間隔に設置され、手術室の一室には手術支援ロボットのダ・ヴィンチが導入されており、その有効性については検証中であることなどの説明がなされた。
その後、海上自衛隊との協働によるヘリコプターでの患者搬送訓練が実施され、患者の手術室までの搬送、緊急手術等についてデモンストレーションが行われた。
午後からはヘリポートで、化学災害患者の搬送から除染までの流れについて、担当官より、ヘリによる着艦後に患者に行うトリアージ、除染、除染状態の確認やレポート作成等について実演を含む説明が行われた。
最後に、ジョン・ロトラック米国海軍病院船病院長(大佐)を筆頭とする医療担当者の出席の下、日本側参加者との間で、災害時に有効であった機能、船内設備、勤務体系、派遣先国との指揮命令系統、災害派遣時に搭載する医療機器・薬品等やヘリ・パイロットの除染などについて、活発かつ有意義な質疑応答が行われた。