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平成30年(2018年)11月20日(火) / 日医ニュース

長きにわたり、 医学・医療の発展に貢献してきた功労者を顕彰

長きにわたり、 医学・医療の発展に貢献してきた功労者を顕彰

長きにわたり、 医学・医療の発展に貢献してきた功労者を顕彰

 日本医師会設立71周年記念式典並びに医学大会が11月1日、日医会館大講堂で盛大に開催された。
 当日は日本医師会最高優功賞・優功賞・医学賞・医学研究奨励賞の授与と、併せて長寿会員慶祝者の紹介があった他、ノーベル医学・生理学賞受賞者の本庶佑京都大学高等研究院副院長/特別教授ら受賞者による記念講演が行われた(別記事参照)

 記念式典には、堀憲郎日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長の他、レオニード・エイデルマン世界医師会長、ラビンドラン・ナイデュ アジア大洋州医師会連合会長ら、海外からも多くの来賓が出席し、小玉弘之常任理事の司会で開会した。
 冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、まず、10月にアイスランドで開催された世界医師会(WMA)レイキャビク総会において、世界医師会長の任期を終えたことを報告。「会員の皆様からの支援の下に、さまざまな活動をさせて頂いた。また、本日、後任として世界医師会長に就任されたエイデルマン イスラエル医師会前会長を始め海外の医師会等からも多くの皆様にご臨席頂き、感謝申し上げる」と謝辞を述べた。
181120a2.jpg  また、最高優功賞を受賞した本庶特別教授が2018年のノーベル医学・生理学賞を受賞することにも触れ、「日医としても大変誇らしいことである」とした。
 その上で横倉会長は、「全国の医師会組織は重要なインフラであり、医療は社会的共通資本であることを改めて強く認識し、医療界を挙げて自ら変革に取り組み、未来に対する責任を果たしていく」との覚悟を示すとともに、受賞者の功績に敬意を表した。
 来賓あいさつでは、まず根本匠厚生労働大臣(鈴木康裕厚労省医務技監代読)が、本医学大会の意義をたたえた上で、「本庶特別教授に日本医師会最高優功賞が授与される他、基礎医学、社会医学、臨床医学の3分野で日本医師会医学賞が授与され、大変優れた研究成果が全国の医師会員に共有されることは、今後の日本の医学研究や医療の発展にとって非常に貴重な機会と受け止めている」と述べた。
 続いて、エイデルマンWMA会長は、「日医が医学教育・医学・医術及び医の倫理における国際的水準を高めるとともに、全世界の人々を対象にしたヘルスケアの実現に努め、世界医師会の使命を果たして来られたことは称賛に値する」と述べ、横倉会長のWMA会長としての功績をたたえた。
 その後、小玉常任理事がその他の来賓者を紹介した上で、表彰式に移り、受賞者に対して、横倉会長から表彰状と記念品目録が授与された。
 最後に、受賞者を代表して、馬瀬大助富山県医師会長が、「日医こそが複雑に絡み合うさまざまな医療の問題に立ち向かい、問題解決の方策を提言できる、医師を代表する団体である。横倉執行部が一丸となって事に当たっていることに会員として感謝しており、今後も支援していきたい。本日の受賞を励みとし、一層の研鑽(けんさん)に努め、医学の進歩と国民医療の向上に努力する決意を新たにしている」と謝辞を述べた。

優れた医学的治療と共に、患者の不安を和らげる医療を
―本庶特別教授

 表彰式終了後には、本庶特別教授による「驚異の免疫力」と題した特別講演が行われた。
 同特別教授は、希望的な観測とした上で、「将来的には免疫療法ががんの治療法の主流になる。がん腫を完全に消すことができなくても、大きくならない状態が続くこともあるため、ある意味でがんは慢性疾患となり、コントロールすることができるようになるのではないか」との考えを示した。
181120a3.jpg  また、自身の研究によって生み出されたPD―1阻害薬を用いた治療が、これからはがんの治療法の第一選択になると強調。その理由としては、「がんの初期の段階で用いた方が効果的である」「手術、化学療法、放射線療法によって免疫力が落ちる前に行う必要がある」「副作用を少なくすることができる」「短期間の投与でも長期間、効果が期待できるだけでなく、完治することも期待できる」ことなどを挙げた。
 また、臨床現場において、がんの専門医であっても免疫に関して詳しい人が少なく、重大な副作用を見逃しているケースがあると指摘。副作用への対応プロトコルの充実を求めた他、今後の研究課題として、有効率の向上と共に、効果の有無を投与前に見極める方法の確立などがあるとした。
 その上で、同特別教授は幸福感と不安感の関連について、自身の考えを説明。今後の医療について、「患者は常に死の恐怖から逃れたいと思っている。人間を幸福にするためにも、優れた医学的治療を行うだけでなく、その不安を和らげることも考えながら医療を続けていくことが重要になる」とし、その実践を求めた。
 続いて、道永麻里常任理事から同特別教授に花束が贈呈された。
 特別講演を聴講していた小泉進次郎自由民主党厚生労働部会長は、受賞者とその家族への祝意を述べるとともに、「21世紀は、がんを不安に思わずに済む新しい医療の時代に突入するという希望ある話を聴くことができ、厚生労働部会長として、人生100年時代のあるべき社会保障を確立するためのかじ取りをしていく決意を新たにした」と述べ、支援と理解を求めた。
 引き続き、日本医師会医学賞受賞者による「脳機能を支えるシナプスの機能発達、可塑性および伝達修飾の研究」(狩野方伸東京大学大学院医学系研究科教授)、「大規模コホート研究の推進と日本人のエビデンスに基づいたがん予防法の提言」(津金昌一郎国立がん研究センター社会と健康研究センター長)、「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDMの成因、診断、および発症・進展阻止治療に関する研究」(小林哲郎冲中記念成人病研究所長)の3講演が行われた。
 また、門田守人日本医学会長からは、日本医師会医学研究奨励賞を受賞した15名の研究概要の紹介があり、大会は終了となった。
 なお、白寿会員62名、米寿会員885名の慶祝者には、更なる長寿を祈念して、後日、銀盃が贈呈された。

日本医師会設立71周年記念式典並びに医学大会受賞者一覧

日本医師会最高優功賞

◇在任6年日本医師会役員
 今村 定臣(長 崎)(12年)
 鈴木 邦彦(茨 城)(8年)
◇通算6年日本医師会役員及び都道府県医師会長
 尾﨑 治夫(東 京)
◇在任6年都道府県医師会長
 馬瀬 大助(富 山)
◇医学、医術の研究又は地域における医療活動により、医学、医療の発展又は社会福祉の向上に貢献し、特に功績顕著なる功労者(都道府県医師会長推薦)
●郷土医史学の研究に貢献した功労者
 島田 保久(北海道)
●がん検診の推進及び医師会組織強化に貢献した功労者
 坂本 哲也(秋 田)
●医師会事業及び学校保健活動に貢献した功労者
 故・原  晋二(福 島)
●医療分野の情報化の推進に貢献した功労者
 小松  満(茨 城)
●医師会活動を通じて地域医療の発展に貢献した功労者
 篠田 仲正(埼 玉)
●学校保健活動に著しく貢献した功労者
 大山 宜秀(神奈川)
●脊椎・脊髄疾患及び認知症の研究に貢献した功労者
 柳   務(愛 知)
●地域医療・介護支援体制の充実に貢献した功労者
 伊藤  勉(三 重)
●医師会事業及び地域医療体制の構築に貢献した功労者
 齋藤 信雄(京 都)
●医師会事業及びがん検診の推進に貢献した功労者
 大田 研治(兵 庫)
●医師会事業及び救急医療体制の整備に貢献した功労者
 青山 信房(奈 良)
●へき地医療活動に著しく貢献した功労者
 井上  晃(島 根)
●医の倫理の実践及び救急・災害医療に貢献した功労者
 真田 幸三(広 島)
●医学の発展及び地域医療体制の充実に貢献した功労者
 江里 健輔(山 口)
●医師会事業及び学校保健活動に貢献した功労者
 有住 基彦(徳 島)
●介護・高齢者福祉の推進に貢献した功労者
 吉野 俊昭(愛 媛)
●医学の発展及び地域医療の向上に貢献した功労者
 猿田 隆夫(高 知)
●地域医療・介護支援体制の充実に貢献した功労者
 宮﨑 良春(福 岡)
●医師会事業及び救急医療体制の整備に貢献した功労者
 江畑 浩之(鹿児島)
●医師会事業及び学校保健活動に貢献した功労者
 岸本 幸治(沖 縄)
◇日本医師会会長特別表彰者
●新しいがん免疫療法原理を確立するとともにその医療への展開により人類の福祉に著しく貢献した功労者
 本庶  佑(京 都)

日本医師会優功賞

◇在任10年日本医師会代議員
 松家 治道(北海道)
◇在任10年日本医師会委員会委員
 鹿毛 雄二(東 京)
 田村 正雄(東 京)
 温泉川 梅代(広 島)(11年)
◇都道府県医師会長退任者
 德永 正靱(山 形)
 田畑 陽一郎(千 葉)

日本医師会医学賞

●脳機能を支えるシナプスの機能発達、可塑性および伝達修飾の研究
 狩野 方伸(東大・神経生理学)
●大規模コホート研究の推進と日本人のエビデンスに基づいたがん予防法の提言
 津金 昌一郎(国立がん研究センター社会と健康研究センター)
●緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の成因、診断、および発症・進展阻止治療に関する研究
 小林 哲郎(冲中記念成人病研究所)

日本医師会医学研究奨励賞

●慢性炎症における肺線維化機構の解明と病態制御基盤の構築
 平原  潔(千葉大・免疫発生学)
●臓器間連携を介した新規心臓恒常性維持機構の解明による新規診断・治療法の開発
 藤生 克仁(東大・先進循環器病学)
●健康長寿を目指したアンドロゲン受容体を介する遺伝子発現制御機構の統合的同定解析
 髙山 賢一(東京都健康長寿医療センター研究所)
●ヒト新生児が有する脳傷害後のニューロン移動メカニズムの解明と再生促進の実現化
 神農 英雄(名市大・新生児・小児医学)
●大腸癌転移における炎症性サイトカインの機能解析
 谷口 浩二(慶大・微生物学・免疫学)
●シングルセルRNAseqを用いた角膜移植における制御性T細胞の可塑性の解析
 猪俣 武範(順天堂大・眼科学)
●行動科学理論に基づく情報通信技術を活用した健康格差是正手法の開発と効果検証
 近藤 尚己(東大・健康教育・社会学)
●災害医療情報の国内・国際標準化
 久保 達彦(産業医大産業生態科学研究所・環境疫学)
●光曝露の健康影響:大規模前向きコホート研究による検証
 大林 賢史(奈良県立医大・疫学・予防医学)
●細胞死からみたアレルギー性気道炎症の新しい評価法の確立
 植木 重治(秋田大・総合診療・検査診断学)
●治療難治性癌に対する脂質メディエーター標的治療の可能性の探索
 永橋 昌幸(新潟大・消化器外科学)
●「希少がん」骨軟部腫瘍のがんプレシジョンメディシンデータベースに基づいた新規治療法開発
 末原 義之(順天堂大・整形外科学)
●嗅上皮障害後の修復過程におけるインスリンの役割の解明
 菊田  周(東大・耳鼻咽喉科学)
●初期胚発生の遺伝子発現機構を介した胚性の不妊症の病態解明と再生医療の開発
 山田 満稔(慶大・産婦人科学)
●皮膚線維化疾患におけるyRNAの関与の研究
 神人 正寿(和歌山医大・皮膚科学)

白寿会員

 橋本 行夫(北海道)
他61名
米寿会員

 大浦 武彦(北海道)
他884名

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