「2018年度情報通信訓練/衛星利用実証実験南海大震災想定訓練」が昨年11月29日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)並びに国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、株式会社NTTドコモ等の協力の下、日医会館で開催された。
日医では、JAXAとの間で平成25年1月に締結した「超高速インターネット衛星『きずな』を用いた災害医療支援活動における利用実証実験に関する協定」に基づき、NICTと共に「衛星利用実証実験(防災訓練)」を毎年実施している。
今回の訓練は、高知県、和歌山県を中心とする太平洋沿岸部を主要地域と想定した「南海トラフ巨大地震(南海地震、東南海地震)」による津波災害を中心とした被害を「南海大震災」と呼ぶこととし、中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」による被害想定と対策に基づき、「きずな」の送受信アンテナやNTTドコモの衛星携帯電話「ワイドスターⅡ」端末を設置した、高知県医師会、和歌山県医師会、幡多医師会を始め全国の都道府県医師会等が、テレビ会議システムを使って参加した。
当日は、石川広己常任理事による防災訓練開始宣言の後、中川俊男副会長があいさつを行った。
続いて、寺下浩彰和歌山県医師会長、北村龍彦高知県医師会常任理事、奥谷陽一幡多医師会長からそれぞれあいさつが行われた。
その後、「災害発生時から30日目まで」及び「3カ月後の対応」等について、具体的な被害想定を踏まえたシナリオに沿って、参加者らがやり取りしながら模擬訓練を開始した。
訓練は、マグニチュード9・0、最大震度7の地震が和歌山・高知両県で発生した直後から、JMAT活動の終了までの流れとなっており、訓練の中では、(1)都道府県医師会と日医との事務局災害時情報共有システムによる情報収集及び日医役職員の安否確認、(2)災害対策本部の設置・開催、(3)先遣JMAT、統括JMATを含めたJMATの派遣・撤収―等に関して確認が行われた。
(1)では、役職員安否確認システムを使用して、役職員の所在や身体状況を確認するとともに、連絡が取れない者の具体的な人数を把握。
また、各医師会への質問が可能なメッセージ機能や掲示板機能を活用して、各都道府県医師会との情報共有も行われた。
(2)では、発災時に横倉義武会長が海外出張中である可能性も考慮し、横倉会長の指示の下、中川副会長が職務を代行することを想定。災害対策本部では、被災地の状況把握や関係省庁及び日本歯科医師会や日本薬剤師会等の被災者健康支援連絡協議会構成団体との連携確認を行い、必要に応じたJMAT派遣についても検討が行われた。
(3)では、まず、発災直後に「先遣JMAT」(原則医療を行わず、現地の情報収集と医療ニーズの把握・評価に専念する)の派遣を要請。次に、複数の都道府県医師会に対して、通常のJMATの派遣に加えて、統括JMATの派遣準備を要請した。
JMAT活動については、専用のサイトを作成しており、そこで派遣状況や資料を一括して管理するとともに、活動報告などの情報共有をすることとした。
また、実際に「きずな」や「ワイドスターⅡ」を利用した通信実験や診療日報ツール「J―SPEED」による避難所における診療状況の報告実験も行われ、大きな問題は発生せず、スムーズな通信が実証された。
公務により途中から出席した横倉会長は、あいさつで、「日本は、地理的特性から、津波災害が発生した時、被災地への医療支援は大変困難である」と述べ、その中で情報共有を行い、全国から支援に駆け付けるためには、ICT(情報通信技術)の活用が不可欠との認識を示した。
また、昨年9月に日医が防災業務計画及びJMAT要綱を改正し、「先遣JMAT」や「統括JMAT」などを新たに位置づけ、JMAT研修も開始したことを紹介した。
当日の参加者は、テレビ会議システムの利用者も含め総計で154名であった。