平成30年度家族計画・母体保護法指導者講習会が昨年12月1日、日医会館大講堂で開催された。
冒頭のあいさつで横倉義武会長(平川俊夫常任理事代読)は、社会全体で子育てしやすい環境を整え、次世代を担う子ども一人ひとりの健やかな成長を保障するため、妊娠期から子育て期まで、切れ目のない支援をワンストップで受けられる体制が整備されるよう、引き続き政策提言していく考えを表明。参加者に対しては、活発な議論を求めるとともに、本講習会が実り多いものとなることに期待を寄せた。
引き続き、根本匠厚生労働大臣(平子哲夫厚労省子ども家庭局母子保健課長代読)並びに木下勝之日本産婦人科医会長によるあいさつの後、「女性に寄り添う産婦人科医療のあり方について」をテーマにしたシンポジウムが行われた。
平原史樹国立病院機構横浜医療センター院長は、女性の心身の状態を妊娠前から妊娠初期にかけて健康管理・ケアするプレコンセプションケアの重要性を強調。また、日本では先天異常や中絶などの諸課題等が、学校で教えられていない状況を問題視し、これらについても産婦人科医が関わりをもつべきとした。
甲村弘子こうむら女性クリニック院長は、周産期の健康だけでなく、その子どもの将来にも影響を及ぼす因子として、①やせていること②子宮内膜症―を例に挙げて説明。①については、特に神経性やせ症について触れ、その予防のためには妊娠前の教育、心理面・栄養面のサポートが必要になるとした。
また、②に関しては、適切な治療が遅れると大きな問題を引き起こすとして、「若年でも子宮内膜症を発症する可能性があることを念頭に、診療に当たって欲しい」と述べた。
鈴木俊治葛飾赤十字産院副院長は、女性に必要なプレコンセプションケアについて、高血圧症、循環器疾患、血栓症、腎疾患、糖代謝異常症、甲状腺疾患、感染症の疾患ごとに解説。どの疾患においても、次の妊娠、ライフビジョンを考え、出産後にも引き続き関わりをもつことを求めた。
齋藤加代子東京女子医科大学遺伝子医療センターゲノム診療科特任教授は、同大学でのNIPT(新型出生前診断)の実施体制を紹介。出生前診断を受けるには正しい知識と情報を基に選択することが大事になると強調するとともに、「医療側においても正確な医療情報だけでなく、社会・福祉情報等を提供できるようにすることが求められている」と述べた。
指定発言では、平子母子保健課長が国の政策を考える際に"成育"という概念が重要になっているとした上で、子育て世代包括支援センターの全国展開など、直近の政策の概況を解説した。
その後の討議では、「産後ケアに関する国の予算措置の拡充」「より有効な少子化対策の実践」を求める意見が出された他、「低体重出生児への対応」「風しん患者をゼロにするための方策」などについて、活発な協議が行われ、講習会は終了となった。