2月13日 定例記者会見
平川俊夫常任理事は、千葉県野田市で起きた児童虐待死亡事件を受けて日医の見解を示した。
同常任理事はまず、今回の事件について、「児童相談所が虐待のリスクを認識していながら、昨年3月の目黒区での児童虐待死亡事件の教訓が生かせなかったことは大変遺憾である」と述べた。
その上で、(1)国連の子どもの権利委員会が日本政府に対し、子ども虐待対策の強化を勧告した、(2)政府はその翌日、児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議を開き、新たな対策として、現在把握している全ての虐待ケースの1カ月以内の緊急安全確認等の新たなルールや威圧的な保護者に対する複数機関での共同対処ルールを設定するとともに、児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づき、児童福祉司を来年度に約1000人増員するなどの体制の抜本的強化に取り組むよう、厚生労働省を始め、各府省庁に対して指示をした、(3)現行の児童福祉法において児童相談所には医師または保健師を配置するとされているが、現在、厚労省では、児童相談所の体制整備の推進として、全ての児童相談所に医師を配置することを明文化するなど、同法の改正について検討がなされている―ことなど、政府等の対応を説明。児童相談所への児童虐待の疑いの通告件数が年々増加している中で、その対応能力の強化が喫緊の課題であるとした。
また、同常任理事は、「今後は児童相談所が医学的な知見を踏まえて対応できるような体制の強化が求められていることから、意思決定において日常的に医師が関与し、対応できるような体制整備など、医師の役割の明確化も必要である」と強調。地域における児童虐待の予防や早期発見・早期対応のためには、医師、医師会の積極的な関与や周辺の医療機関の協力を求めることも重要であり、医師・保健師・社会福祉士等の専門家が、その対応能力の向上のために自治体や学会などが開催している研修へ参加するとともに、医師会との協力を推進していく必要があるとの考えも示した。
更に、日医の児童虐待防止に関する取り組みとして、2006年の「子ども支援日本医師会宣言」において、「虐待の予防と早期発見」を掲げ、2011年から国民への児童虐待防止の啓発活動の一環として、医師・弁護士の他、一般市民・児童養護施設関係者・児童福祉関係者・保健師・学校教職員等を対象とした「子育て支援フォーラム」を全国で開催していることを報告。
本フォーラムの主な内容は、「児童福祉の観点」「子ども家庭と社会的養護の現状と課題」「市町村における虐待予防の取り組み」「精神科医療からの虐待予防と対応」「周産期医療からの虐待予防」などであり、次回は3月23日に栃木県での開催を予定していることを紹介した。
また、昨年12月に成立した成育基本法において、母子保健や児童福祉分野の連携強化をうたい、"防げる死"を防ぐ体制の整備と支援強化を今後期待される政策の一つとしていることに触れ、日医として児童虐待防止に向けた政策提言を今後も引き続き積極的に行っていくとした。