平成30年度臨床検査精度管理調査報告会が3月8日、日医会館大講堂で開催された。
担当の江澤和彦常任理事の司会で開会。冒頭のあいさつで横倉義武会長(江澤常任理事代読)は、まず、今年度は昨年9月3日から4日にかけて近畿地方を中心に甚大な被害をもたらした台風21号や同月6日に発生した北海道胆振地方中東部地震等の自然災害により、調査の実施にさまざまな影響が出たことに触れ、「今後、本調査の参加施設にご迷惑が掛からないようできる限りのサービスを提供するとともに、リスク管理を徹底していく」との方針を示した。
また、平成30年12月に施行された「医療法等の一部を改正する法律」で、臨床検査における「検体検査の品質・精度管理」並びに「検体検査の分類」の部分が大きく改正されたことを説明。「これにより、わが国の精度管理の質が更に向上し、その結果、全ての患者により良い医療を提供できるようになることを我々医師も期待している」と述べた。
引き続き、3232施設が参加して行われた第52回臨床検査精度管理調査報告に移り、(1)臨床化学一般検査①(三宅一徳日医臨床検査精度管理検討委員会委員)、(2)臨床化学一般検査②(細萱茂実同委員会委員)、(3)臨床化学一般検査③・糖代謝・尿検査(菊池春人同委員会委員)、(4)腫瘍マーカー(山田俊幸同委員会委員)、(5)酵素検査(前川真人同委員会副委員長)、(6)脂質検査(高木康同委員会委員長)、(7)甲状腺マーカー・感染症マーカー・リウマトイド因子(〆谷直人同委員会委員)、(8)血液学的検査(小池由佳子同委員会委員、天野景裕同委員会委員)、(9)測定装置利用の動向(金村茂同委員会委員)―についての講評が行われた。
高木委員長は総括の中で、分類や数値の桁の誤記入や「製造販売元」と「販売元」を混同した回答等が見られたことに対し、「各検査室は、自施設の測定試薬のメーカー名、測定原理、基質、緩衝液、標準物質を知っておくべきである」と指摘。一方で、トレーサビリティ確認の実施率の高さや臨床化学一般項目、酵素項目のバラツキが小さかったこと等については、これを評価する考えを示した。
同委員長は最後に、「日医臨床検査制度管理調査は大・中・基幹病院ばかりでなく、小規模病院の検査室、衛生検査所、メーカーなどが参加している日本最大規模の臨床検査精度管理調査であり、日本の臨床検査の現状を反映したものと言える」とした他、今後の課題としては、同一施設内の複数機器・試薬(緊急検査用や装置)に対する調査の在り方を改善することを挙げた。
また、今年度の精度管理のトピックスとして、①「医療法等の一部を改正する法律」が施行され、精度管理は検体検査室の必須事項となった②共用(共通)基準範囲が提唱されているが、適応は適切な精度管理を行っている施設のデータだけである―ことなどを説明した。
その後の総合討論では、検査値の評価の仕方や自然災害による検査結果への影響、試薬の品質等、参加者からの個別具体的な質問に対し、各委員が回答を行った。
最後に江澤常任理事が閉会の言葉を述べ、報告会は盛会裏に終了となった。参加者は661名。