日医定例記者会見 9月18日
松本吉郎常任理事は、厚生労働省の「副業・兼業の場合の労働時間の在り方に関する検討会」報告書の取りまとめを受けて(報告書は全業種共通の内容)、その概要と日医としての見解を示した。
本検討会は、2017年3月の働き方改革実行計画の中で、今まで企業があまり認めてこなかった副業・兼業を、普及促進する方針が示されたことから昨年7月に設置され、報告書は健康確保の充実と実効性のある労働時間管理のあり方について検討し、結果を取りまとめたものとなっている。その中では、労働基準法第38条で「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされている時間の通算を整理した結果、考えられる選択肢として(1)健康管理、(2)上限規制、(3)割増賃金―について論点や今後の方向性が両論併記で示されており、具体的な制度のあり方については今後、労働政策審議会で議論されることになる。
同常任理事は、まず医師の副業・兼業について、「一般的な働き方と異なり、自由意志ではなく地域医療を守るために行っており、日本の医療提供体制を考える上で外すことのできない事項」であると強調。
更に、本年3月にまとまった厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書の内容にも触れ、副業・兼業の検討会の方向性は示されず、「兼業を行う医師に対する労働時間のあり方、追加的健康確保措置のあり方については今後、検討するという内容にとどまっている。そうした中で、副業・兼業の問題はその取り扱いによっては、特に救急を担う医療機関で宿日直が労働時間の適用除外とならない医師の場合に副業・兼業ができなくなるばかりでなく、大学病院等では地域の医療機関に宿日直のための医師を派遣することが困難になる等、地域医療にひずみが生じ、患者が困ることが懸念される」とした。
また、副業・兼業先での研鑽(けんさん)の区別やその管理方法にも問題が生じる恐れがあると指摘した。
その上で同常任理事は、「医師の働き方における副業・兼業については、医師の健康確保への取り組みと地域医療の継続性の両方を見据えた着地点を模索していく必要がある」とするとともに、「日医としては、労働時間管理、健康管理、割増賃金管理の側面からそれぞれについて論点が多い中で、全医療機関での勤務を安易に通算することは当面、慎重にならざるを得ない」とし、今後の実態調査なども踏まえて、あるべき方向性を丁寧に議論することを求めた。
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