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令和元年(2019年)10月31日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」の報告書取りまとめを受けて

 松本吉郎常任理事は10月30日の記者会見で、自身も構成員として参画した厚生労働省の「眼の水晶体の被ばく限度の見直し等に関する検討会」の報告書が取りまとめられたことを受け、日医の見解を述べた。

 まず、本検討会は2018年12月に電離放射線障害防止規則(以下、電離則)における水晶体の被ばく限度の見直し等に伴う所要の改正に資することを目的に設置されたと説明した。現在、眼の水晶体の等価線量は年間150mSvを超えないこととされているが、今回の報告書は放射線審議会の意見具申を電離則等関係法令へ取り入れるに当たっての労働衛生管理上の留意点、問題点等について、科学的調査の結果等を踏まえ検討を行い取りまとめられたもので、電離則等関係法令の見直しの方向性等が示されているとした。報告書の主な概要は、以下のとおり。

(1)新たな水晶体の等価線量限度の取り入れについて
1.眼の水晶体の等価線量限度を5年間の平均で20mSv/年かついずれの1年において50mSvを超えないこととすることが適当である。

2.十分な放射線防護措置を講じても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある者については、一定の期間、眼の水晶体の等価線量限度を50mSv/年を超えないこととすることが適当である。

3.眼の水晶体に受ける等価線量が、継続的に1年間に20mSvを超えるおそれのある者に対しては、健康診断の項目の白内障に関する眼の検査の省略は認めないことが適当である。

4.眼の水晶体の等価線量限度の1年間及び5年間の始期は、実効線量の1年間及び5年間の始期と同じ日を始期とすることが適当である。

5.施行時期は、電離則以外の法令の施行時期と整合を図ることが適当である。

(2)水晶体の等価線量を算定するための実用量について
1.外部被ばくによる線量の測定を、実効線量及び人体の組織別の等価線量を算定するため、放射線の種類及びエネルギーに応じて、1センチメートル線量当量、3ミリメートル線量当量又は70マイクロメートル線量当量のうち適切なものについて行うことが適当である。

2.眼の水晶体の等価線量を正確に評価するためには、眼の近傍や全面マスクの内側に放射線測定器を装着して測定することが適当である。

3.眼の水晶体の等価線量の算定は、放射線の種類及びエネルギーに応じて、1センチメートル線量当量、3ミリメートル線量当量又は70マイクロメートル線量当量のうちいずれか適切なものによって行うこととすることが適当である。

4.眼の水晶体の等価線量の算定及び記録の期間は、3月ごと、1年ごと及び5年ごとに行うこととすることが適当である。

 同常任理事は、循環器内科、消化器内科、消化器外科、放射線診断科、整形外科では1年間に20mSvを超える医師の割合が高いこと、循環器内科、消化器内科、整形外科、脳神経外科では1年間に50mSvを超える医師がいることを説明した。今回の見直しに当たっては、医療従事者と患者の健康確保が図られるべきである一方、新たな限度が適用される場合、必要な診療ができなくなる懸念も示した。

 また、防護クロス、遮蔽板、防護眼鏡等により1年間に受ける水晶体の等価線量の推計値を20mSv以下に保つことが可能との実態調査はあるが、それでもなお医療従事者の健康リスクに懸念があるとした。

 同常任理事は、報告書をまとめるに当たり、日医として「十分な放射線防護措置を講じても、なお高い被ばく線量を眼の水晶体に受ける可能性のある労働者については、ガイドライン等の周知や専門家の指導等により改善するまでに要する期間や新たな放射線防護用品が開発されるまでの期間として、約3年間(公布後3年・施行後2年)は、眼の水晶体の等価線量限度を50mSv/年を超えないこととすることが適当である」を主張、その旨が取り入れられたことを高く評価した。

 その上で、この問題に関しては、地域医療に及ぼす影響と医療従事者の健康確保の両方に目を向けながら慎重に取り組む必要があるとした上で、「一定の期間とされる約3年間で、医療施設の管理者及び現場第一線で活躍する医療従事者には、ガイドライン等の周知や専門家の指導等による改善に向けた取り組みをお願いしたい。併せて国には、放射線防護眼鏡等の放射線防護の強化のための開発の推進、更に、水晶体への被ばく線量が高い業務を行う業者が放射線防護設備の設置や改善による被ばく低減措置を講ずるための手厚い支援を要望する」と述べた。

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