ガリバー旅行記は、日本で言えば江戸時代に出版された風刺小説である。
ガリバーは、オランダ人と偽って日本を目指して旅をするのだが、その途上でラグナグ国へ立ち寄った。
ガリバーは、そこでラグナグ国の一流の人々と友人になり、身分の高い紳士からストラルドブラグという希(まれ)に生まれる不死人間の話を聞く。
ガリバーは、「死なないとは素晴らしい」とその紳士に嬉々(きき)としてストラルドブラグのことを尋ねた。しかし、紳士からは、彼らは30歳ぐらいまでは普通の人と同じであるが、その後徐々に老化し、認知症が進行することを聞く。
実際に彼らに会ってみると、全く長寿による恩恵はなく、ただ心身の老化による不調を抱えながらも死ねずにひっそりと生き続けていた。
国民は、このストラルドブラグの現状を知り、長寿であることを幸福とせず、切望もしないと言う。
300年程前に書かれた小説だが、超高齢社会にどっぷりと浸かっている私には、色々と考えさせられるものがある。
健康で長寿は望ましいが、さまざまな理由で長寿が必ずしも幸せでないこともある。
2017年に開催されたアジア大洋州医師会連合東京総会で、終末期医療をテーマにシンポジウムが開かれたが、終末期に関する意識は宗教的、社会的背景などで大きく異なることが分かった。
日本においては今後、尊厳ある終末期を迎えるためにACP(人生会議)の概念を、更に国民に普及していくことが大切で、私達医療者も積極的に関わっていく必要があると考える。
(フェランド)