去る2月12日の衆議院予算委員会で、厚生労働大臣が「病院船」配備の加速的な検討に前向きな考えを示し、防衛大臣も14日の記者会見で、海上自衛隊に「病院船」の保有に関する検討を指示したと述べた。
新型コロナウイルス関連による肺炎の問題を受け、診察・治療・入院機能を持つ「病院船」の配備について、必要性に対する議論が改めて浮上した形だ。
平成23年に、「病院船」の建造に関する調査費が計上されたことがあるが、建造費用や維持費が高価であるため、計画が断念された経緯がある。
「病院船」とは、広義には戦争や災害の現場で傷病者に対して病院の役割を果たす船舶であるが、狭義にはジュネーブ条約の適用・保護の下、傷病者や難船者の援助など、治療と輸送を唯一の目的とし、国が建造あるいは設備をした船舶をいう。軍用病院船や救済団体病院船などがあるが、軍艦に医療機能を付加したものは条約の対象外である。
戦後日本は、「病院船」を国家としては保有していないが、有事や災害を想定し、医療機能を有する迎賓艦や潜水艦救難艦を海上自衛隊が保有している。しかし、何百人規模の傷病者が発生した際に対応するには、更に大きな艦船が必要となる。
このたびのクルーズ船において、感染者の陸上搬送について、さまざまな声が国内外から上がっている中で、入院治療ができ、移動のできる「病院船」の利点は大きい。
平成も災害とともに新しい感染症発生の印象が強い時代だったが、令和となった今後は、地域医療構想と並行して非常時医療構想を進める必要性が示されたのではないだろうか。
(パパゲーノ)