中川俊男会長は8月26日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の最近の状況に対する見解を示した他、都道府県別診療報酬の規定を拡大解釈あるいは転用して、都道府県間における給付格差をもたらすことに明確に反対した。
中川会長はまず、同感染症の最近の状況について、減少傾向にあるものの、収束には向かっていないとの見方を示した上で、多くの感染者が報告されている地域を始めとして、全国の医療従事者が非常に疲弊している現状を説明。病床の確保は依然として課題であり、お盆休みの影響等、今後の動向を注視していく姿勢を示した。
また、新規感染者数が増加・高止まりすれば、重症者も増加していくと考えられるため、確保した病床の占有率を正しく把握する必要性があるとした。
一方で、占有率に対する捉え方については、病床利用率が80%を超えると医療現場では満床と同じ感覚になるなど、単純に数字で判断できない面があることを指摘するとともに、重症者には非常に多くの医療スタッフがつきっきりで対応に当たるため、人員不足から医療提供体制全体の崩壊につながっていくことを危惧した。
次に、子どもや慢性疾患の患者など、同感染症以外の患者の動向に触れ、これまでの記者会見等で繰り返し発信してきた受診控え等は、非常に深刻な状況が続いており、「このままでは、日本の医療の良さである病気の早期発見、早期予防にも支障を来し、国民の健康にも深刻な影響を与えかねない」と強調。併せて、8月7日から開始した『みんなで安心マーク』の発行数が7,500件(8月26日12時時点)を超えたこと及び24日から日医会員以外への発行も開始したことを報告した。
中川会長はこの点について国民に向け、「医療機関が徹底した感染防止対策を実践していることをご理解頂き、健康に不安がある際には無理な我慢をせず、かかりつけ医に相談して頂きたい」と呼び掛けた。更に、現在かかりつけ医をもっていない国民には、秋冬にインフルエンザが流行し始める前に、地域の医師会のホームページや「日医かかりつけ医機能研修制度」の修了状況等を参考に、是非かかりつけ医をもってもらいたいとした。
続いて、8月5日の定例記者会見で公表した『新型コロナウイルス感染症の今後の感染拡大を見据えたPCR等検査体制の更なる拡大・充実のための緊急提言』にも盛り込んだ、"都道府県が策定する医療計画の5疾病5事業に新興・再興感染症対策を速やかに追加すること"という項目について、その後の進捗を報告。
社会保障審議会医療部会の資料にも同提言を基にした内容が盛り込まれるなどの進展があったとした上で、「次の新興・再興感染症に備え、医療提供体制を構築するための取り組みを進めていかなければならない」と述べ、今後も国の関係検討会において強く主張し、同提言の早期実現に努めていく姿勢を示した。
その他、中川会長は、同感染症への対応においては、政府と緊密に連携して進めているとし、現在、医療機関の経営支援に向けた実効性のある対策の詳細を詰めていることを紹介。「矢継ぎ早に対策を打たなければならない中、厚生労働省を始めとした関係省庁と共に、大変前向きに良く対応して頂いている」と謝意を示し、同感染症の一日も早い収束に向けて政府と医療関係者が一体となって努力していかなくてはならないとし、政府にもこれまでにも増してスピード感のある対応を要望した。
また、中川会長は、診療報酬の特例、いわゆる都道府県別診療報酬に関連して、奈良県から加藤勝信厚労大臣に対し、奈良県における1点単価の引き上げを検討すべきとの意見を提出する動きがあることにも言及。日医として、「高齢者の医療の確保に関する法律」の第13条並びに第14条の規定の解釈は明確であるとの考えを説明し、明確に反対の立場であることを表明。
同法第13条は、都道府県が「全国一律」の診療報酬について意見を述べるものであり、「当該県」の診療報酬ではないことを指摘するとともに、同法第14条は、あくまで医療費適正化計画の目標達成のための運用であることから、今回の同感染症の影響への対策として運用することはできないとした。
更に、「医療機関の経営状況の悪化は極めて深刻だが、奈良県固有の問題でなく、全都道府県の最重要課題である。日医は医療現場の実態調査を丁寧に行い、国に対して継続して経営支援の要請を行っていく」と述べ、喫緊で必要なこととしては、「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」などの第二次補正予算に基づく交付金の全都道府県での速やかな交付を挙げた。
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