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令和2年(2020年)9月20日(日) / 日医ニュース

厚労省と強いタッグを組んで日本の医療を守る考えを示す

厚労省と強いタッグを組んで日本の医療を守る考えを示す

厚労省と強いタッグを組んで日本の医療を守る考えを示す

 中川俊男会長は8月26日及び9月2日に行われた定例記者会見において、新型コロナウイルス感染症対策本部が決定した「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」に対する見解を述べるとともに、新型コロナウイルス感染症の影響への対策として、一部地域で都道府県別の診療報酬の導入の動きがあることに反対の立場を示した。

 中川会長は新型コロナウイルス感染症の今後の取り組みに関して、8月28日に開催された政府の新型コロナウイルス感染症対策本部において決定された「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」について、「感染防止と社会経済活動との両立にしっかりと道筋をつけるものであり、評価している」とした上で、取組7項目(別掲)のうち、(1)感染症法における入院勧告等の権限の運用の見直し、(2)検査体制の抜本的な拡充、(3)医療提供体制の確保―の3項目に対する日医の見解を明らかにした。

財務省に予備費の活用を求める

 (1)に関しては、「新興感染症は、発生直後には分からないことが多く、一類~三類感染症分類の措置のうち、必要な措置を選んで指定感染症として対策をとることになっている。新型コロナウイルス感染症は、二類感染症の措置と近いことから、二類相当と便宜的に言われているが、実際は新型コロナウイルス感染症のためにカスタマイズされた措置が取られている」と指摘。
 同対策本部会議の、「入院では重症者を重点的に診て、無症状者や軽症者については宿泊施設・適切な者は自宅での療養での健康観察を徹底する」との方針に同意するとともに、「指定感染症から外すということではなく、対応を現状に合わせたものに柔軟に見直すべきである」との考えを示した。
 (2)に関しては、日医が8月5日に発表した「新型コロナウイルス感染症の今後の感染拡大を見据えたPCR等検査体制の更なる拡大・充実のための緊急提言」(詳細は令和2年9月5日号1面参照)と全く同じ方向性であると評価。厚生労働省の健康局長と協議を行い、医療現場の手を煩わせない簡素な手続きでPCR検査をできるよう合意に至ったとし、具体的な方法について通知を発出する方向で準備をしていることを明らかにした。
 (3)に関しては、「患者を受け入れる医療機関の安定経営を確保するための更なる支援」及び「地域の医療提供体制を維持・確保するための取組み・支援を進め、季節性インフルエンザ流行期に備え、かかりつけ医等に相談・受診できる体制の整備」が挙げられていることを説明。「ようやく先週から第二次補正予算による各種支援金が医療機関に支給され始めており、一息はつけるが、医療現場の戦いは続いている」として、追加的支援が不可欠であることを強調した。
 また、9月1日には加藤勝信厚労大臣と電話会談を行ったことを明らかにした上で、その際には新型コロナウイルス感染症に対応している医療機関のみならず、地域を面で支えている医療機関への支援を強く求めたことに触れ、「日医は厚労省と強いタッグを組んで、日本の医療を守る。財務省には躊躇(ちゅうちょ)なく予備費を有効に活用して頂きたい」と予備費の活用を強く求めた。
 更に、季節性インフルエンザの流行に備えた体制整備について、厚労省と最終的な協議を行っていることを報告。「発熱患者等はかかりつけ医等の地域で身近な医療機関に電話相談するよう周知すること」「外来診療・検査可能な医療機関名とその対応時間等について、地域の医療機関や受診相談センター間で随時情報を共有し、地域の医師会等と話し合った上で、公表を希望する場合は、自治体のホームページ等で公表すること」などの方向で、近日、同省から通知が発出される予定であるとした。
 「みんなで安心マーク」については、9月2日時点で約1万件の発行があることを紹介した他、各都道府県におけるPCR等検査の検査対応能力に係るアンケート調査を、8月21日から31日の期間に実施したことを取り上げ、「検査機器の増設が必要」「人材が不足している」という回答が多いなどの傾向を概説した。
 この他、インフルエンザワクチンについては、「例年の希望者数から見ると、インフルエンザワクチンの供給数は十分に確保されているが、今年は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、接種希望者数が増えることが予想される」として、インフルエンザに罹患すると重症化しやすい65歳以上の高齢者への定期接種を確実に行うためにも、高齢者への接種を優先的に行うことは適切であるとの考えを示した。
 また、インフルエンザの予防接種を求める人達が増え、現場が混乱するとの懸念があることに関しては、国民に対して、「高齢者以外の方もインフルエンザの予防接種を早く接種したいという気持ちも理解できる」とした上で、「インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、新しい生活様式の徹底を始めとする公衆衛生対策を講じ、少しの間だけ予防接種を待ってもらいたい」とした。

都道府県別診療報酬に明確に反対

 8月26日の会見では、診療報酬の特例、いわゆる都道府県別診療報酬に関連して、奈良県から加藤厚労大臣に対し、奈良県における1点単価の引き上げを検討すべきとの意見を提出する動きがあること(意見書は8月28日に提出された)に言及した。
 中川会長は日医として、「高齢者の医療の確保に関する法律」の第13条並びに第14条の規定の解釈は明確であるとの考えを説明。改めて明確に反対の立場であることを表明した。同法第13条は、都道府県が「全国一律」の診療報酬について意見を述べるものであり、「当該県」の診療報酬ではないことを指摘するとともに、同法第14条は、あくまで医療費適正化計画の目標達成のための運用であることから、今回の同感染症の影響への対策として運用することはできないとした。
 更に、「医療機関の経営状況の悪化は極めて深刻だが、奈良県固有の問題でなく、全都道府県の最重要課題である。日医は医療現場の実態調査を丁寧に行い、国に対して継続して経営支援の要請を行っていく」と述べ、喫緊で必要なこととしては、「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」などの第二次補正予算に基づく交付金の全都道府県での速やかな交付を挙げた。

政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が決定した新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組
  1. 感染症法における入院勧告等の権限の運用の見直し
  2. 検査体制の抜本的な拡充
  3. 医療提供体制の確保
  4. 治療薬、ワクチン
  5. 保健所体制の整備
  6. 感染症危機管理体制の整備
  7. 国際的な人の往来に係る検査能力・体制の拡充

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