中川俊男会長は8月5日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の最近の状況に触れ、医師の専門家集団の立場から発言していくとした上で、「新型コロナウイルス感染症の今後の感染拡大を見据えたPCR等検査体制の更なる拡大・充実のための緊急提言」(以下、緊急提言)を公表。その実現に向けた活動を展開していく意向を示した。 |
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緊急提言は、(1)保険適用によるPCR等検査の取り扱いの明確化、(2)検体輸送体制の整備、(3)PCR等検査に係る検査機器の配備、(4)臨床検査技師の適切な配置、(5)公的検査機関等の増設、(6)PCR等検査受検者への対応体制の整備、(7)医療計画への新興・再興感染症対策の追加―の7項目(詳細は別掲)からなっている。
中川会長は今回緊急提言を公表した背景について、PCR等検査が進んでいない現状があることを挙げるとともに、「医師が必要であると認めた場合には、確実にPCR等検査を実施できるよう緊急提言を取りまとめ、公表させてもらった。国に対しては財源を確保した上で、その実現に努めるよう強く求めていく」とした。
会見に同席した釜萢敏常任理事は、「日医は医師が必要と認める方に対しての検査が、迅速かつ適切に行われるということを求めている」と述べる一方、「不安を感じて検査を受けたい方全てにPCR等の検査を実施することを、日医が求めているわけではない」と強調。緊急提言の目的が誤解された形で伝わらないよう、改めて報道関係者に同提言の趣旨に対する理解を求めた。
また、検査体制の現状については各都道府県で大きな違いがあることを指摘。その上で、円滑に進まない地域では、検査を行うための都道府県との委託契約がハードルとなっている面があるため、同提言で言及したこと等を解説した。
その他、当日の会見で中川会長は唾液を始めとした飛沫が飛び交うことによる感染を避けることが新型コロナウイルス感染症の感染予防には必須であるとし、感染拡大の一因となる可能性が高い「業種、集団、地域」に対して「要請」、「指示」だけではなく、一定の強制力のある「命令」ができるようにすべきであると指摘。その命令に当たっては、「国で一律に行うのではなく、地域の実情を把握している都道府県に一定の権限を持たせ、きめ細やかに対応すべきである」とするとともに、「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)を始め現行法を総動員してできることは全て行った上で、必要であれば特措法を改正するなどの法整備を、勇気を持って行うべき」との考えを示した。
加藤厚労大臣に緊急提言の実現を要求―中川会長
中川会長は8月7日には、釜萢常任理事と共に厚生労働省を訪問。加藤勝信厚労大臣に直接、緊急提言の実現に向けた協力を求めた。
中川会長は、緊急提言の内容を詳細に説明するとともに、行政検査に伴う委託契約は事後契約でも可能ということが都道府県に十分理解されていない現状を報告。「検査を行うため、都道府県と委託契約をしなければならないことがPCR検査の実施件数が増えない大きな要因になっている」として、その改善を求めた。
これに対して、加藤厚労大臣は一定の理解を示した他、医師が必要とする検査を幅広く実施できる体制を構築していくべきとの考えで両者の考えが一致。今後、両者でその仕組みを検討していくこととなった。
その他、加藤厚労大臣は当日、新型コロナウイルス感染者で宿泊療養が困難な場合の自宅療養に関する考え方を公表したことに言及。「自宅療養者への医療の提供について、ぜひ、地域の医師会の協力をお願いしたい」と要請した。
新型コロナウイルス感染症の今後の感染拡大を見据えたPCR等検査体制の更なる拡大・充実のための緊急提言
令和2年8月5日
公益社団法人 日本医師会 日本医師会は、新型コロナウイルス感染症対策の更なる推進に向けて、医師が、PCR等検査及び抗原検査(定量、定性)(以下、「PCR等検査」)が必要であると認めた場合に、確実にPCR等検査を実施できるよう、以下のとおり提言する。
国は財源を確保した上でその実現に努めるよう、強く要請する。 提言
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