日医定例記者会見 9月9・17日
中川会長は、(1)次のインフルエンザ流行に備えた体制整備、(2)行政検査の委託契約―について、日本医師会の取り組みを報告した。
中川会長はまず、今冬の季節性インフルエンザの流行に備えた体制整備について、季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症を臨床的に鑑別することが困難であるとの指摘等を踏まえ、厚生労働省から9月4日付で「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」に関する事務連絡が発出されたことを受けて、日本医師会としても都道府県医師会等に対して情報提供を行ったことを報告。
同事務連絡の中に示された発熱患者等の診療または検査可能な医療機関(「診療・検査医療機関(仮称)」)に関しては、「その要件等の詳細は、日本医師会と厚労省とで協議することになっているが、感染リスクに伴う補償のあり方についても各地域の医師会と都道府県との協議が必要であり、今後は日本医師会としても必要な補償が受けられるよう、協議の進捗(しんちょく)に資するような国の積極的な関与と助言を求めていく」とした。
次に、行政検査の委託契約については、3月4日付保険適用通知が出されて以来、現在に至るまで委託契約の要件が大幅に緩和され、これまで厚労省から数多くの事務連絡(13回)及びQ&A(3回)が発出されるなどの情報発信がされているが、行政(都道府県・市区)の担当者や検体検査機関、医療機関等では簡素化された内容に対する理解が追い付いていないケースが散見されていたことを紹介。こうした状況を踏まえ、日本医師会では厚労省に対し、改めて分かりやすく都道府県等に説明することを求めるとともに、協議を重ねた結果、9月9日付で厚労省から「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査の委託契約について(再周知)」の事務連絡が発出されたとし、これは、「日本医師会の要請に対し、スピード重視で現実的な着地に至った結果である」と述べ、評価する考えを示した。
本事務連絡では、委託契約を希望する医療機関が、委託契約の全てのチェック項目を満たしていることを都道府県に表明するのは、文書・口頭・電話等のいずれの方法でも構わないことを明確化するとともに、医療機関が検査を行った場合にはその検査の実施をもって委託契約を希望する表明とみなされるとしている。
中川会長は、今後について、「この事務連絡が発出されたことにより、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER―SYS)が修正・改善された後には、委託契約の締結なしで検査を実施することが可能になるだけでなく、患者の一部負担金を公費で賄うという日本医師会が示した緊急提言の内容に更に一歩近付くことになる」として、この仕組みの周知に対する協力を求めた。
釜萢敏常任理事は、8月28日に安倍晋三内閣総理大臣(当時)から示された今後の新型コロナウイルス感染症に対する七つの方針を踏まえ、厚労省から発出された事務連絡通知等について概説した。
釜萢常任理事はまず、事務連絡の趣旨として、これまでの「帰国者・接触者相談センター」及び「帰国者・接触者外来」を介した医療提供体制では、今冬のインフルエンザ流行期における対応が困難であることから、発熱者の利便性を考慮した上で、なるべく多くの医療機関の理解と協力を得て対応する必要性があるとの考えの下、地域の状況に応じて都道府県ごとにしっかりと医療提供体制を講じるために発出されたものであると説明。一方で、「その役割を担う医療機関においては規模や構造に違いがあることを踏まえ、地域ごとに感染防護体制を講じることが求められる」とし、日本医師会としても医療機関が安心して医療提供を行える体制の構築に関して強い使命感を持ち、医療機関の不安を払拭(ふっしょく)するよう国と協議していく考えを示した。
また、HER―SYSに関しては、日本医師会として簡便な入力で医療機関の負担とならないような仕組みを強く要請していることに言及。新型コロナウイルス感染症の取り扱いを検討するワーキンググループにおいても、登録を迅速に行い、その情報を関係者が速やかに把握しつつ、それぞれ登録した患者の現在の状況とその後の経緯を追跡できることが重要であることから、陰性者の情報を含め、最初に入力すべき必須項目と追加して入力すべき項目について、段階を分けた入力の仕方に関して分かりやすく提示すべきとの指摘がなされており、今後その方向で見直されることになると説明。「これにより、HER―SYSの問題点が改善され、目指すべき目的が理解されることになるだろう」として、その定着に期待感を示した。