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令和2年(2020年)10月20日(火) / 南から北から / 日医ニュース

私の趣味は生活そのもの

 「ちょっと下に下りてくるね」「は~い」
 それが私と妻との合言葉である。毎朝、5時半に起床。雨が降ろうと雪が降ろうと、そのスタイルは変わらない。階段を下りて自分だけのオアシスに向かう。
 28年前、有床診療所として開業して以来、24時間営業を続けてきたが、最初の頃は特に外出する機会もほとんど無く、ストレスを解消する場所として考えた揚げ句、庭に温室を建てた。獣医になろうかと思っていたほどに動物が好きであった私にとって、最高の場所である。誰にも邪魔をされず、好きな動物とただただひたすら向き合える。
 さぁ、最初はホシガメだ。家では台所に立った事も無いのに、まるで新妻のごとくまな板に包丁の音をトントンと響かせ、レタス、小松菜、チンゲン菜、ミニトマトのミックスサラダをつくり上げる。お次はカメレオン。1匹また1匹と増え続け、現在は10匹ほどになった。カメレオンの、あのゆっくりとした緩慢な動きと、時間に追われ忙しすぎる自分とを対比のように感じて魅了されたのかも知れない。繁殖もコツをつかみ、今は玄孫(やしゃご)の代を世話している。ヒョウモントカゲモドキ、スキニーギニアピッグ、熱帯魚と次々に朝の食事を終わらせる。温室は完了!
 お次は自宅である。「さぁ、行こう」。妻に声を掛け、2歳になったばかりのラブラドールレトリバーのマディソンを連れ、朝の散歩に出掛ける。もう1匹のフレンチブルドッグの五右衛門は高齢犬となり、最近は散歩もままならず残念ながら留守番である。わが家の周りには桜並木の横を何時間でも歩けるコースがあり、散歩には申し分のない環境だ。
 散歩が終わると、今度はヨウムの世話である。ヨウムとはオウムの仲間でアフリカの西海岸森林地帯辺りに生息する。特徴はとにかくよくしゃべる。鳥の中でも最高級の賢い頭脳を持っているらしい。
 玄関に犬を連れて戻ってくると「お帰り~」から会話が始まる。「行ってらっしゃい。頑張ってね!」と励ましてくれることもある。「おかあちゃん。可愛いね」。これは妻が無理やり呪いのようにつぶやき続け、脳にたたき込んだフレーズである。歌もとてもうまい。「今日のカープはカ~チカ~チカッチカチ」と実際勝っていようが負けていようが「ばんざ~いばんざ~い、ばんざ~い」と高らかに歌う。わが家の中ではカープの日本一は3年ぐらい続いている。
 床替えを済ませ、犬2匹のごはんを済ませ、やっと、我々人間の朝食へとたどり着く。毎朝これをコピーのように繰り返す。時折妻があきれ顔で「好きじゃないと続かないよね~」とつぶやく。確かにそうだ。好きなのだと改めて思う。この動物に囲まれた毎日が自分の活力を生んでいるのだと思う。
 旅行、アンティークドール、テディベア収集、映画鑑賞、テニスなどまだまだ他にもたくさんある趣味ではあるが、これからも仕事と趣味のオンオフをしっかり切り替えながら楽しんでいきたいと思う。
 では、午前5時半になったのでそろそろ下に下りてきます。

広島県 広島市医師会だより No.649より

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