埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を対象とした緊急事態宣言が1月7日に再発令され、更に7府県が対象に追加される見通しである情勢を踏まえ、中川俊男会長は1月13日の定例記者会見で、医療提供体制の現状について説明するとともに、今後の感染拡大の状況によっては緊急事態宣言の対象地域を全国へ拡大すべきとして先手の対応を求めた。
中川会長は、まず、医療提供体制の現状として、「必要な時に適切な医療を提供できないのが『医療崩壊』だが、必要な時に医療自体を提供できない『医療壊滅』の状態にならなければ医療崩壊ではないというのは誤解である」と強調。「地域の医療提供体制は、新型コロナウイルス感染症の医療とそれ以外の通常の医療が両立してこそ機能していると言える」とし、首都圏などにおいて、心筋梗塞や脳卒中患者の受け入れ先が見つからず、がんの手術が延期されるなどの現状は、既に医療崩壊の状態であることを指摘した。
更に感染者数の増加が続けば、「医療崩壊」から「医療壊滅」に至るとし、「誰もが必要な時に適切な医療を受けられる体制に戻すため、あらゆる取り組みを強化、徹底しなければならない」と主張。日本医師会としても既に、昨年4月7日の緊急事態宣言以降、各地の医師会が組織する新型コロナウイルス感染症版の日本医師会災害医療チーム「COVID19-JMAT」(1月12日現在、医師10,191名を始め延べ27,291名)を、宿泊療養施設や地域外来・検査センター等へ派遣している他、都道府県・郡市区医師会が行政から委託されて電話やオンラインを利用した、宿泊療養・自宅療養者の健康フォローアップへの協力なども行っており、これを改めて求めていくとした。
また、中川会長は、新型コロナ患者の受け入れ可能医療機関について、公立69%、公的等79%に対し、民間18%というデータを示し、「多くの民間病院が新型コロナの患者を受け入れるべきだという意見があるが、医療を必要とするのは新型コロナの患者だけではない。民間病院の多くは、コロナ以外の救急・入院が必要な患者への医療を、それぞれの地域で担っている」と地域医療を面で支えていることを強調。加えて、新型コロナ向けの病床を大幅に増やせない要因として、民間病院は、三次救急を担う公立・公的等に比べてICU等の設置数が少なく、専門の医療従事者がいない、動線の分離が難しいことなどを挙げた。
その上で、緊急事態宣言の対象地域について言及し、「今後の感染拡大の状況によっては、全国的な発令も検討すべき。欧米のような感染爆発の気配が現実化してきたが、感染が全国に蔓延して手遅れになることがないよう、勇気を持って早め早めの対策を講じていくことが大切である」と指摘。政府に対してはデータにとらわれ過ぎない対応を求める一方、国民に対しては新型コロナへの危機感、緊張感を取り戻し、心を一つにして一丸となって立ち向かうことを呼び掛けた。
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