日医定例記者会見 1月13・20日
中川俊男会長は、新型コロナウイルス感染症の最近の動向を踏まえた日本医師会の考えを説明した。
中川会長は現状について、緊急事態宣言が発令された地域では通常の入院患者の受け入れ先がないケースが生じており、新型コロナの医療と通常医療が両立できない、まさに「医療崩壊」の状態にあるとして、危機感を表明。
「日本は諸外国に比べて病床数が多いにもかかわらず、『医療崩壊』が進んでいるのは医療関係者の努力が足りないのではないか」という指摘や「諸外国は日本より患者数が多く、かつ病床数が少ないのに、まだ対応できているではないか」という声があることについては、(1)欧米では既に昨年の第一波の時点で、日本で言う医療崩壊が起こり、医療のトリアージも進んでいる、(2)これまでの死者数は、G7のうちのアメリカ、イギリス、フランス、イタリアで人口100万人当たり1000人以上になっているのに対して、日本は約30人である―ことを挙げ、これらの指摘は誤りであることを改めて説明し、「病床数の比較に当たっては、国によって病床の定義が異なるため、慢性期関連も確認し、全体的に考える必要がある」と述べた。
国民に対しては、改めて基本的な感染対策の徹底を要請。マスクに関しては、不織布マスクに比べて、手づくりマスクやデザイン重視マスク、マウスシールドなどは感染防止効果が低いことを説明し、場面に応じた着用を呼び掛けるとともに、障害や持病などのやむを得ない事情でマスクをつけられない方への配慮も求めた。
病床確保の問題に関しては、「一般の患者の受け皿、通常の医療の受け皿がその地域にしっかりあってこそ、重点医療機関は新型コロナウイルス感染症患者に集中できる」と強調。医療界を挙げて、新型コロナウイルス感染症患者受け入れのため、病床確保に向けた具体的方策をスピード感をもって議論していくことを目的として、同日、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、全国自治体病院協議会と共に「新型コロナウイルス感染症患者受入病床確保対策会議」を立ち上げることを報告した(別記事参照)。
また、会議では「コロナ対応病床を更にできるだけ増やすためにはどのような方法があるか」「中小病院において、コロナから回復した患者の受け入れ機能を拡充できないか」「収束まで時限的にコロナ対応病院の病床を拡大し、同時にその通常医療機能を中小病院に代替できないか」などを、公立、公的、民間を問わずに議論していく意向を示した。
都道府県医師会向けの相談窓口を設置
ワクチン接種の問題については、会内に設置した「ワクチン接種体制検討委員会」で、スムーズに接種が進むよう、いくつかの地域を事例にシミュレーションを行っていることを報告するとともに、都道府県医師会からの相談を受け付けるため、会内に新たに「都道府県医師会向けワクチン接種体制相談窓口」を設置することを明らかとした。
その他、中川会長は新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症法等の改正についても言及。「確実な取り組みを推進するために評価する」とする一方で、「今回罰則の規定が設けられることで、私権制約を伴う措置も含み得ることから、丁寧な説明の上で、従わない悪質な場合にのみ適用するなど、謙抑的な運用をお願いしたい」と述べた。
感染症法改正の趣旨を厚労大臣に確認
また、先日、「感染症法に基づく医療関係者への協力要請について、要請に替えて勧告できるよう見直した上で、正当な理由がなく、勧告に従わない場合には、大臣又は知事がその旨を公表できるようにする」との報道がなされたことにも触れ、「懸命に地域医療を守っている医療機関、医療従事者に対し、いきなり勧告がなされ、それに従わない場合はその旨を公表する仕組みの導入は容認できない」と強調。
加えて、田村憲久厚生労働大臣にその真意を尋ね、現行どおり協力要請し、正当な理由なく応じない場合には勧告を行い、勧告に正当な理由なく応じない場合にのみ公表するという丁寧な仕組みになることを確認したことを明らかにした他、協力要請に当たっては、(1)時間が許す限り、都道府県の協議の場で議論を行う、(2)緊急事態でそれが難しい場合には、協力要請や勧告の妥当性について、事後検証できる制度とする―ことを求めるとともに、その際には感染や事故時の補償も含めたスキームをつくるべきであると主張した。
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