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令和3年(2021年)3月5日(金) / 日医ニュース

コロナ禍における産業医活動について情報共有を図る

コロナ禍における産業医活動について情報共有を図る

コロナ禍における産業医活動について情報共有を図る

 第42回産業保健活動推進全国会議が2月4日、日本医師会館小講堂で、WEB会議システムを用いて開催された。
 新型コロナウイルス感染症が依然、流行状況にあることを鑑み、田村憲久厚生労働大臣、中川俊男日本医師会長、有賀徹労働者健康安全機構理事長、清水英佑産業医学振興財団理事長のあいさつは、紙面で配布された。
 その中で、中川会長は、「日本医師会として、コロナ禍における事業活動の中で、労働者が体も心も健康的に就労継続できる産業保健体制を、行政と職場が共同して構築する必要があると考えている」と述べるとともに、日頃の各地域における産業保健活動推進への協力に対して謝意を示した。
 その上で、新型コロナウイルス感染症への対応の長期化に伴い、医療従事者の心身の疲弊はピークに達していること、また、介護従事者の心身にも過度なストレスが加わっていることを憂慮(ゆうりょ)するとし、「感染を抑制することが最大の支援策である」との考えを示した。
 その後、金子善博労働者健康安全機構本部産業保健ディレクターから「新型コロナウイルス感染症への産業保健分野の対応」、木村裕香子宮城産業保健総合支援センター産業保健専門職から「宮城産業保健総合支援センターの両立支援に係る取組」、仲佐菜生子島根産業保健総合支援センター産業保健専門職から「島根産業保健総合支援センターの両立支援に係る取組」、北野和子長野産業保健総合支援センター産業保健専門職から「長野県下における地域産業保健センターの活動~地産保事業の活性化に向けて~」、石岡卓二府中地域産業保健センターコーディネーターから「府中地域産業保健センターの活動」について、それぞれ活動事例が紹介された。

シンポジウム

 引き続き、「コロナ禍における産業医活動」をテーマとしたシンポジウムが行われた。
 和田耕治国際医療福祉大学大学院医学専攻・公衆衛生学専攻教授は、「職場における新型コロナウイルス対策」をテーマに講演し、接触感染や飛沫感染についての知識は世間にかなり浸透したものの、まだ「マイクロ飛沫感染」や、3密を伴う「避けるべき七つの場面」については認識が十分に広まっていないとして、その注意点を説明した。
 清水少一産業医科大学免疫学・寄生虫学講師は、「嘱託産業医が指導すべき新型コロナ対策」をテーマに講演し、コロナ対策の目的を産業医と事業主で共有することが大切であるとした上で、①個々の事業場の事情に応じた対策を立てる②完璧な対策を求めるのではなく、実施可能な対策を積み重ねる③感染対策情報提供後の実施状況を確認する―こと等が重要であるとした。
 濱田篤郎東京医科大学病院渡航者医療センター教授は、「海外渡航と新型コロナウイルス対策」をテーマに講演し、日本人の海外出張者や駐在員の現状、日本政府によるビジネス交流再開事業、新型コロナウイルス変異株の出現によるビジネス交流停止といった状況について説明。加えて、海外駐在が長期化することによる弊害として、駐在先での医療機関への受診やワクチン接種、日本で処方を受けていた薬の入手、メンタル面のサポートなどが難しくなるといった問題が起きていることなどが紹介された。
 佐々木那津東京大学大学院医学系研究科精神保健学教室員は、「コロナ禍における労働者のメンタルヘルス」をテーマに講演し、2020年にコロナ禍の労働者のメンタルヘルスの概況について、オンラインで計4回実施した調査の結果を発表。その中で、①医療従事者のメンタルヘルスは、その他の労働者と比較して継続的に悪化している②女性、若年者(40歳以下)、非正規雇用者、慢性疾患を有する者、大卒未満の学歴の者といった、社会的に不利な状況に置かれている集団のメンタルヘルスが悪化している―こと等が報告された。
 また、これらの問題への対応のため、2020年6月に国際労働機関(ILO)から『コロナ禍での労働者のストレス対処に関するガイドライン』が出され、その中では、職場環境整備と安全対策、ワークライフバランス支援、ハラスメント防止、セルフケア教育、産業保健スタッフによる相談対応・専門的治療の紹介など、10項目の重要ポイントが述べられていることが紹介された。
 神奈川芳行JR東日本健康推進センター担当部長は、「コロナ禍における企業のBCP~鉄道事業者における産業医の関与と課題~」をテーマに講演し、新型コロナウイルス感染症発生当初の対応として、①対策本部の設置②新型コロナウイルス感染症対応の手引き作成③社員向け相談窓口の開設―を実施し、その他、社員・列車利用客への感染予防、新入社員研修実施方法、各種イベント実施の留意点などの助言を行うとともに、感染状況が長期化する中で、状況に合わせた情報提供と感染予防策の発信を行ったことを紹介した。

協議

 その後の協議では、相澤好治日本医師会産業保健委員会委員長の司会の下、高倉俊二厚労省労働基準局安全衛生部労働衛生課長、大西洋英労働者健康安全機構理事、神村裕子常任理事、及川桂産業医学振興財団事務局長の4氏が、事前に寄せられていた、(1)診療報酬上の療養・就労両立支援指導料の取り扱い、(2)コロナ禍における職場巡視の書面・電話等での対応可否、(3)労働安全衛生法・規則等の改正により「感染症」に対する対策義務を、事業者、労働者に明示することの必要性、(4)長時間労働者等に対する面接指導について、情報通信機器を用いた実施を拡大していくことの是非、(5)地方における産業医確保と新規産業医の獲得、(6)オンラインにおける産業医活動の指針の有無、(7)日本医師会認定産業医研修会のオンライン開催予定の有無―等に関する質問・要望に対して、それぞれ回答を行った。

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