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令和3年(2021年)5月5日(水) / 南から北から / 日医ニュース

 四国に気の合う友人がいます。その友人は大学時代の同級生で、今は四国で開業しているのですが、いつも余裕のある物腰でゆっくりとした話し方をする人で、富山育ちの私から見るとまさに典型的な南国四国の人というイメージをもった大好きな友人です。
 もう大学を卒業して40年近くになろうとしていますが、住んでいるところは遠くても変わらず付き合いを続けています。実際に学会のついでに四国を訪問した時には、家内と共に歓待を受けたこともありましたし、京都や東京で落ち合って飲んだこともありますが、最近は主に手紙やメールのやりとりが多くなっています。また、春には四国から特産のびわを送ってくれるので、夏の終わりにはこちらから富山の呉羽(くれは)梨を送るのが恒例になっています。
 この夏の出来事です。今年は夏の終わりが非常に暑かったせいもあって、梨を送る時期を迷ったため、やや遅れ気味になってしまいました。そろそろ梨を送らなくては、と思って例年のごとく家内に発送を頼みました。すると、その翌日に早速その友人から、今年も富山の梨をありがとうというお礼のはがきが来たのです。これはまたすごく迅速に発送したものだ、そんなに早く届くものかな、と感心しつつ家内にお礼を言ったら、まだ送っていないとのこと。えっ、と驚いていろいろ考えました。
 まずここはどうしたものか。選択肢はいくつかありました。もちろん、正解はすぐに電話して真相を確かめることだったのですが、実はこれまでに彼と電話で話したことはほとんどありません。お互い電話で相手ととりとめもなく話すのが得意ではなく、そこが我々の気の合うところのひとつなのかも知れません。ということで、電話をしないとすればどう行動すべきものかと考えました。
 実際に向こうに梨が届いているのなら、ここでまた梨を送ると向こうで梨がだぶつく? それにしても、その既に届いている梨は誰が送ったものなのか? 他の誰かが別に梨を送ったとか配送業者の間違いなら、なぜ荷札を見て気が付かないのか? ひょっとして昨年送った梨が1年遅れで今頃届いたのか? などという突拍子もない考えも混じってきます。
 最終的に、もうびわはもらってしまっているので、何も送らないのもおかしいし、しかし代わりにこの季節に突然梨ではなくお菓子を送るのも変だろう、やはりここは梨を送るべきだと決断して、すぐに家内と2人で果物店に行って発送しました。私からの梨が届けば、あれおかしいぞと気が付いて最初の梨の送り主を確認して、別の人からだったと気が付いてくれるだろうと。
 しかし、数日後、ここでまた彼から今度はメールが届いたのです。「なぜ今年は2度も梨を送ってくるのか」と。
 というわけでちょっとしたミステリー状態になってしまったのでした。至急、しかしこれも電話でなくメールの返信で、友人に正直に現在の状況を話したところ、届いた返事は、恐らく富山の他の方から梨を送られたのだと思うが、向こうではてっきり私からのものと思い込んで、送り主も確認せずに箱を開けすぐにおいしく食べてしまったということでした。もう包装は捨ててしまって送り主の確認は不可能ということでした。
 最初に梨を送った方には非常に気の毒な状態になってしまいましたが、彼のほうに、そう言われてみれば1回目の梨を送ってくれた方に心当たりがあるということでしたので、今頃はその方に確認してお礼とおわびを言ってくれているはずです。恐らく富山におられるその方に私からも深くおわびを申し上げます。
 今回のことで得られた最大の教訓は、分からないことは放っておかずに、ちゃんと直接(電話で)確かめるべしということでした。
 コロナで単調な生活になっていた時期に、少しどきっとした出来事でした。

(一部省略)

富山県 富山市医師会報 第597号より

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