日医定例記者会見 4月21・28日
中川俊男会長は、3回目の緊急事態宣言を政府が発令したことを受けて、日本医師会の見解を説明。ゴールデンウィークを前に国民に対して、ワクチン接種が行きわたるまで励まし合うよう求めるとともに、「万全の感染防止対策こそが結果として最強の経済対策になる」として、感染対策の徹底を改めて強調した。
解除は成果型で判断を
中川会長は今回、感染が拡大した理由として、(1)感染力が強い変異株N501Yの全国への急速な広がり、(2)新規感染者数の増加の兆しが見られる中での首都圏1都3県の宣言解除、(3)政府の繰り返しの要請に切迫感が感じられにくくなっている―の3点があると分析。宣言解除に当たっては、全ての指標がステージ2の基準になるか、あるいはステージ3ではあるものの、この状況が続けばステージ2になるのが確実となった時点で解除を検討すべきであるとの考えを改めて説明するとともに、解除の基準を示さなければ国民が不安になるとして、陽性者の減少や病床逼迫(ひっぱく)度の改善が達成されれば解除するという成果型にすることを提案した。
医療提供体制の現状については、札幌市では、新型コロナ重症者を小樽市の病院まで搬送したことや、兵庫県では、発熱患者にPCR検査をすると、ほぼコロナ陽性であるといった事例が既に起きていることを紹介。また、変異株N501Yについては、大阪府のデータによれば、世代にかかわらず感染率が高く、重症化する速度も早く、重症者の年齢の若年化など、現場感覚では危機感と緊迫感が非常に高くなっており、コロナ医療の第一線にいる医師らから「従来株の第三波までとは全く病態が違う。違う病気、別の感染症と考えなければならない」という声が届いていることを明らかとした。
その上で、これらの状況を見れば、変異株N501Yの全国的な広がりにより、「必要な時に適切な医療を受けることができない」という医療崩壊が始まっていることは明らかだとして、危機感を示した。
更に、今後に関しては「新型コロナウイルス感染症の患者への対応には、多くのマンパワーが必要であり、病床だけで考えることは適切ではない」と述べ、重症者は特定機能病院と基幹病院、中等症患者は重点医療機関が中心的な役割を果たし、それらの病院の通常医療を他の医療機関が担うといった地域全体で新型コロナの医療提供体制を強化していく必要があると指摘。日本医師会としても継続的に全国の病床確保を支援していく姿勢を示した。
ワクチン接種については、4月28日付で、都道府県・郡市区医師会宛に、「国民に安心、安全、そして確実に接種を実施するために、今こそ我々医師や医師会がリーダーシップと底力を発揮する時である」という旨の依頼文を発出したことを報告。クラスターの発生や病床の逼迫(ひっぱく)を防ぐためにも、医療従事者や重症化リスクの高い高齢者、基礎疾患のある方の早期の接種を進めるだけでなく、高齢者のワクチン接種がピークを迎える5月までに感染を抑え込むためにも、今回の宣言期間中の一人ひとりの感染予防対策が重要になるとした。
歯科医師には地域の実情に応じて協力を求める
また、歯科医師によるワクチン接種が一定の条件の下で認められたことにも言及。「医師や看護師がどうしても確保できない場合にのみ、歯科医師に関わってもらうことになる」とした上で、その関わり方については、地域医師会と歯科医師会等が地域の実情に応じて決めていくということで日本歯科医師会と合意していることを明らかにした。
最後に中川会長は、「新規感染者を何が何でも抑え込まなければならない。これは確保されたコロナ病床の逼迫(ひっぱく)を避けるためだけに言っているのではなく、新規感染者が急増することで入院したとしても死亡者が急激に増え、たとえ回復しても後遺症が残る人が増えていることを看過できないからである」と強調。国民に理解を求めるとともに、感染対策の徹底を呼び掛けた。
問い合わせ先
日本医師会 健康医療第2課、地域医療課 TEL:03‐3946‐2121(代)